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銃撃戦の血




人人人人人人人人人

インコが飼育籠から顔を出した

子供がかじっていたパンを落とす

長兄が拳銃を上げた

ガラス玉を呑み込んだ子供の腹を切り裂け

壁に人々のだ液が飛び付いていた

長兄がギャング目掛けて撃った

家内で物色していたギャングの一人に当たる

屠られたばかりの豚肉が「今日はもう終わりだ」と店の親父に言われた

撃たれたギャングが痙攣しながら「やつを殺せ!」と叫んだ

月光に向かって一羽の蝶がひらひらと翔んでいたのだ




人人人人人人人人人人人人人

人混みに紛れる長兄の顔に女の屁がかかる

ぬっくと伸ばした拳銃をギャングに向けて

硬直した男のふくらはぎが石のようだ

蛾が上昇しながら緩やかなカーブを描いた

路上の人形売りの人形が首を折られた

長兄が飛び出して行く

恐怖など見向きもせず言葉が弾丸だ

家内目掛けて5発撃った

ハゲワシの咆哮が死体を10年後にでも攫ってゆく

人人人人人人人

弾が切れると人混みに紛れる

日和見な化粧した男がカーニバルを愉しんだ

揚げ菓子の露店はもう終わっている

腹の減った者が人家を物色する

酒を積んだ押し車の輪を修理するはずだ

「失せろこの野郎!」とギャングが叫ぶ

日和見化粧男の眉間を弾丸が抉った

今日は前髪が千々れる蒸し暑い夜だ

ゴミの山に埋もれた洗濯機が空回りしている

轍に毛虫が溺れて

松葉杖少女と包帯が物干し竿に干されている




押せ押せ押せ押せ押せ押せ押せ

足を蹴飛ばすと痣が削れて落つ

激情したギャング達が銃を乱射した

指の折れた死体には買い手はつかない

檻から飛び出した犬が殺される

平穏が許されない

隠れれば土足で上がり込み殺す

人の数だけベルを鳴らせばいいだけだ

屋根に幽霊がひっかかっている

飛び方を知らない死にたての幽霊だ

撃たれた男が血と脂を撒き散らした

ギャングが懐から写真を取り出す

女の背中が柵の尖端に突き刺さっている




死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体

死体

白い罪人が死体の下に手を突っ込んだ

視線を落とした顔が泥まみれだ

少年のスネに針金が刺さっている

懐中電灯で照らされた眼球が輝く

ギャング達がココの家族の死体を探していた

糞が血溜まりの中に浮いていた

女の股を弄っている犬に見覚えがある

路肩に置かれた灯篭の模様が死体に映って

ギャング達が汗をかきながら「これで全員です」と白い罪人に言った

並べられた死体の前に白い罪人がフラフラと寄って行ったのだ

指が泥だらけの顔を摘まむ

バス停はひしゃげて月へと伸びていた

後部座席に並べられた小銃が熱っぽい

結露した水道管の滴がギャングの額に垂れた

浮浪者の足首がナイフで切られて

白い罪人が叫んだ

「これで全員か?女の子がいないぞ。そいつはどこにいる?」




足足足足足足足足足足足

使命がギャング達を一斉に散らす

死臭に誘われてモグラが顔を出す

扉に這う蔦が掻き切られて汁を流した

空気の抜けたボールに気付く者はいない

寝床を探していたカラスが庇に降りた

ココの隠れる小屋が見つかる

陽気に笑う者がナイフを振り回した

家族の死体が車油をかけられ焼かれるはずだ

「出て来いお嬢ちゃん!」ギャングが笑った

鍵をギャングが拳銃で壊した

吃驚したゴキブリが灯り目掛けて飛び出す

標的を追い詰める時ほどギャングにとってつまらない時間はない




口を塞いでココが止まる

家族の死体が首からズリズリと引き摺られる

止め止め止め止め止め止め止め止め止め止め

痩けた頬がホコリで真っ黒だった

死を目前にして震える体を抑えることで精一杯だ

この町には子供を誑かす悪魔がいるんだ

日陰から飛び出した彼らは生者を嘲笑うよ

その前では死が無色透明になる

透明な死の前では生など霞だ

呼び出すのは簡単だ

指を差し出せばいいだけだ

カラスが横一列で寝息をたてている

まだ問われることない静かな物置小屋だ

火薬と血の臭いをさせているのがギャングの男だ

腐った木箱を銃のグリップで叩き壊す

ココの服には木の棘が無数に付いていたのだった





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