ココがリトルギャングと踊る
「そうだ、歌を歌わない? 文字の勉強はつまらないでしょう? 歌はとっても楽しいわよ」ココが言った
濁った川の魚がいつも空を見ている
力を抜かれたギャングが両膝を着いた
誰も正確な時を刻む時計を持っていない
ここではなく時間などびた一文にもならない
なぜカラスは金の魚を逃したか
いつも川辺を走るバイク男が呪いの騎士だと気づかれた
父の牛乳の屋台を引く少年が立ち止まった
「おい、お前何を言ってるんだ? お前が今どうゆう身分だかわかっているのか」下唇の割れたリトルギャングが言った
「僕は歌好きだよ。一緒に歌おうよ」指の太いリトルギャングが言った
「いいな。楽しそうじゃないか。歌ってくれよ」目の上にたんこぶのできたリトルギャングが言った
ココが歌い出す
ココが毛布の上で体を左右に揺らす
三人のリトルギャングが聴き惚れた
巣立ったばかりの鳥が母の亡骸の下に来る
大きな眼をした人形が便所に飾れて魔除けになる
サッカーをしていた子供達が一斉に北を向いて走り出す
魚が灌木の周りを回り続ける
悪魔は? 悪魔よ!
リボルバーの手入れをしていたオヤジが急に立ち上がって青春の思い出を語る
今の速さだったらトタン屋根が空を切ることもできる
役所で働く女が幼い頃の貧しい生活に哀愁を覚えることもある
丘から望む町がいつだって不純だが美しい
美しい鳥だけが本当に美しいものを知っている
障碍を持つ子供が子供の指でできた城の再開を今か今かと待ち遠している
自転車で麻薬を運ぶ男が永久に走っていきそう
目の上にたんこぶのできたリトルギャングと指の太いリトルギャングがココと一緒に歌いだした
魂が七色に光って大地に溶けていく
どこかで祝砲のように銃が撃たれる
いついかなる場所にも死体がある
悪魔よ! 悪魔よ! 悪魔よ! 悪魔よ!
もう女神様との再会はできたかい?
ココと三人のリトルギャングが夜更けるまで歌い続けた
夜になってココが寝ていたら下唇の割れたリトルギャングが抱きついてきて味見といってレイプされた
朝になってココが荷車に乗せられ人売り場に行くことになって指の太いリトルギャングに荷車押された
残りの二人のリトルギャングが歌いながらココの前歩いた
助け舟なんてもうでないよ
生首よ! 生首よ! 生首よ! 生首よ!
いついかなる場所にもカラスがいる
どこかで楽しげにリンゴが切られる
ココが溶けるように家々の扉を見る
家の前でじゃれあっていた子供二人が歌いだした
血塗れで人を載せたトラックが立ち往生している
子供が教会の援助でできた学校の完成を今か今かと待っている
魂だけが本当に美しい死体を知っている
教会の入り口に三百年ある小石が毎日人に語らうが返事されない
たまに悪魔が小石連れて散歩にいくこともあるよう
一回転した蝶が万華鏡のように見えることもある
下唇の割れたリトルギャング懐の拳銃を握りながら強盗の武勇を語る
意志は? 意志は!
肉が洗濯干しにぶら下がって回っている
現地雇い労働者が休憩を終え一斉に動き出す
魂の骸が広場の木の実に憑依して栄養価を上げる
家を持たないココが子供の声を聞いて空仰ぐ
三人のリトルギャングが笑っていた
ココが荷車の上で体を左右に揺らす
ココの口をつぐむ
よく耳をすますと土が歌っている
ココが思ったなんだこの町は歌で溢れてるじゃないか
行方不明の人達は実はみんな音色があって微かに聞こえる
路肩に穴を掘って小便する少年がこちらを見た
いつもカメラを回すフォトジャーナリストが偽者だとバレていた
なぜ川には魂の道路がないのか
ここで生きるなどびた一文にもならない
誰も正確な死の形を知らない
虫を探す老婆が両膝を着いた
傾いたポストの根元にアリ塚が出来ている
「おい、そろそろ売り場に着くぞ。楽しい楽しい値段交渉の始まりだぁ!」下唇の割れたリトルギャングが言った




