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子供の指の城の意義



「私はいったい何者なの?」ココが言った

この赤い地に名などあってはならない

何もないことを怖れることなく向き合うのだ

子供の指の城がゆっくりと左右に揺れ動く

ココが赤い地に突っ伏した

数え切れない鳥が飛んでいた

ココを動物や虫が乗り越えて進んでいく

意味あることだけが世界のすべてじゃない

ココの肌に踏まれて傷ができた

だがきっとこれは何でもない

「ココ、お前はわかっていると思うが、ここにいたらいつか早くに死ぬぞ。ここは人のいられる世界じゃない。俺と一緒に来るんだ。生きるか死ぬかの二択だ」ハンターが言った



未来などとうに見れない

ココがハンターを見た

魂が赤い地を震わすだけの力あるか

鳥が生と死の境を軽々と飛んでいく

虫が六本の足で生をわしづかみにし

動物がその口で死を丸呑みにするのだ

流転してゆく内臓が星のよう空にあった

ココの腹の中が赤いものでいっぱいだった

だからこの赤い地に過去が綿密に刻まれている

ココが後ろの気配を感じる

青白い人魂が浮いていた

赤い地を見て固まるように青白い人魂が揺れる

そして子供の指の城の扉がゆっくりと開く

この世は無から赤と青が分裂してできただけだ

すべて有り様のままに流転してゆくのである

「ココ、お前にとっては難しい決断かもしれないが命がかかっている。早めに決めた方が良い」ハンターが言った

「ココちゃん!お願い!生きて頂戴!私の分まで精一杯生きて頂戴!」母ポメラが言った

青白い人魂が子供の指の城の中に入っていった

鳥は? 虫は? 動物は? 今まさに死者の学校で勉強しているのだ

ココが赤い地を摘んで口に入れた

どこかで両刃剣で首を切られる音がした

鍬で死体をグチャグチャにして肥料にする

「私にはどうすればいいかなんてわからない。でも、この世界がなくなることだけは駄目だと思う」ココが言った



「お前はそう言うのか」ハンターが言った

この赤い地に意味など求めてはならない

鳥が文字持たず目指す地へ飛んでゆくのだ

ココがゆっくりと顔を上げた

ハンターが苦笑いをした

死者の学校から鳥と虫と動物が出てきた

ココが鳥と虫と動物に押されて赤い地から出ていく



ココ気づくと教会の鐘がやかましく鳴っていた

「ココ! 大丈夫ですか! ココ!」白い仮面の少女が言った

「大丈夫、何でもないわ」ココが言った

そして未来など何もない

ココを見ていた子供がゴミ拾いをやめると死ぬ

ネズミが壁下に穴掘り通路作る

処刑人が看板を立てさせる夢と希望が溢れるようだ

金持ちのし尿を老婆がぶちまけた

野良犬がココを見ていた

川の魚が棒を持った男に叩かれ捕まるのか

死体を載せた飛行機が飛んでいく

とある屋台では油で揚げた虫がい食べられる

ネズミのような小動物が餌がなくなり共食いするのだ

臓器売買は実入りのいい仕事だ

ココが荷車を白い仮面の少女に押してもらい帰った



使い古されたテレビが電気ないから二度と見られない

ココが後ろに気配を感じる

麻薬中毒でイッた浮浪者が突っ立っついた

存在に急かされるように浮浪者が歩く

そして怪しげな家の戸がゆっくりと開く

この世に普遍的な数式があると誰かれも言う

汚水がパイプを通って川へと流れていくのだ

肉屋で切り分けられた豚がバケツに入れられていく

早めに食べた方がいい

暗い小屋で売春する少女が意思なくその身に正義を讃えようとするのだ

顔面蒼白の郵便配達夫が路肩の暗がりに入っていった

しゃくとり虫とカラスは? 白い仮面の少女は? 猿は? 彼らは帰るべき地を確かに失ったのだ

ココが土をすくって口に入れた

エサを狙った鳥が木の上に群がっていた

牛が飼い主に捨てられ身を守らんと暴れる

盲目の少女が親を求めて歩いている

ココが世界など本当は霞んで気付かぬ間に変わってしまうのかと思った




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