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白い罪人の襲撃




かかしの目玉が取れているのは子供達のせいか

ゴミ捨て場の浴槽に溜まった水が冷たい

ココにとって銃声が身を裂く笑い声だった

木箱の臭いが強烈で土手をぞろぞろと歩いていた

棺桶の中もこうなのだろうか

ココが息を止める

燃えるように暑い夜にはブルーベリージュースが欲しい

何があろうと物置き小屋は孤独だった




ココが知っているのは死体だけで死ではなかった

ココに死を教えるものは誰もいなかった

あまりに当たり前だったから

死とは暗いものなのだろうか

穏やかなものであってほしい

ココの目尻が歪み一心に期待した

後頭部が冷たくなる

徐々に慣れてきた

腕から力が抜ける

意識がオウムに食べられているのよ

意識が失せ心中が失せココがココでなくなる

土のようだ

死は平等に訪れる

身体が未来へと向く

ナメクジのようにうつ伏せで進んでいく

生命の奈落だ

この町に生きる者誰しも死を忌むことはない

生きることと死ぬことが表裏一体であると濁った水が教えてくれるからだ

ココの両膝にシラミがいっぱい付いていた




父が母の元を去ったのはもう十年も前のことだ

物置き小屋が思い出の品で埋めつくされている

すべては過去の遺物である

所在無げに現世を彷徨う

はん雑なゴミの山々へ行くことはないであろうが

父が母を抱きながら拳銃を渡した

墓石にチェック柄のハンカチが被さっていた

小屋の屋根に無数の穴が点々とある

星のようだとココが思った

だが手は届かない

いつ襲撃が始まるのかまだ人の臭いがしている

姉達が下半身だけ裸だ

あえぎ声は接吻によって阻まれる

裸婦像が道路わきの草原に寝転んだ

ラジオがノイズのみを延々とたれ流す

毛布は穴が開いていた

凶弾が吐き出されるのを待ちわびている

枯れ草が夜風になびいて明日の運勢を占っていた




鋭く立った襟を撫でたギャングの男に墓をくれてやる

身構えるトカゲが捕らえるタイミングをはかる

廃車が銃撃戦で穴ボコになった

幽霊が血を好むのは性に合わない

段ボール入り爆薬をどこかに置いてきた

白い罪人がグリップを握り直す

戸の真ん前で中の様子を窺うギャング達

そこに殺戮があるんだ生活はない

「空き家のようだね」とネズミが言った

ギャングが戸を蹴ると月明かりが射し入る

部屋の入り口に垂れ幕がある

地下のネズミの棲家を誰も知らない

銃を振り回しながら居間を占領する荒らされ一瞬で廃れる

居場所を求めてたむろするこれすべて生の奈落である

死に近づくと物恋しくなるのはなぜだ

この家に居着いたのは十年前のことだ




白い罪人の膝に砂利が付いている

銃撃戦で湿った地に膝を着いたからだ

崩れた家具の隙間からカラフルな布地床が湿気っている

銃口が寝室へ向く

リボルバーが火を吹く

垂れ幕が掻き乱れ野犬が一斉に聞き耳を立て

この家はすでに家主のものではない

銃身と白い罪人が冷えてゆく

トリガーにかけた人差し指に期待した

血飛沫の華はいつ見ても興奮する

キツツキだどこかに飛んで行ったからだ

ギャング達がいつも思うのは血の臭いを洗い流すための強い酒だった




野次馬がたむろする

血塗られた祭りでは上等の酒が欲しい

長兄が錆びた工具箱から拳銃を取り出した

強烈な臭いのこびり付いた血だ

銃声が目醒めの伝言だ

呆然と家内の様子を窺っていた

年老いた老人が三人の赤子の世話をしているのか






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