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ココが子供の指の城へ



ココが悪魔達を探した

風の色も赤い

麻薬売りの少女が路地裏から出てきた

金持ち太っちょが人間狩猟のため大型犬を飼う

鳥が枝にとまって求愛の歌を歌う

亡霊が聞きに来た

寂れた看板が死体を仮想の死とする

今日の風が陽が出ているというのに冷たい

ゴミ山の案山子がこの世は所詮偽物だらけと言う

子供が煙草を吸いながらサッカーする

ココが白い仮面の少女に荷車を押してもらって町中を駆ける

ココが変わればこの町は変わらぬという

ネズミ達がレンガ壁に上ろうとジタバタしていた

ココの目が眩んだ

ココがバラバラになろうとしている

「ちょっと止めて!」ココが言った

白い仮面の少女が荷車を押すのをやめた

何の変哲もない影が前の影と少し違っているいやよく見てみろ

陽を避けるように悲しげに青く見える

麻薬が燃える青い炎か

熱くはなかったが確かに心を捉えていた

妊婦が向こう側の家から出てきた

地がいつもより刺激的な臭いを放つ

リトルギャングが銃を世代越しに渡すため埋めた

魚を道端に捨て続けた男がやっぱり死ぬのだ

便器から水が溢れる

魂と骸の揺らぎ

ココが向こうの方にある木を見た

もうココのすぐ横にある街灯と大差ない

赤く赤くなっていくのだ



「タタァ〜ン、ギャニット〜、レキュスタ〜、ズィーグァ〜ン、エドウィ〜ン、どこに行ったのぉ〜」ココが言った

こっちに来た子供達がココを指差しながら笑う

今首吊り自殺をしようとする男が輪に首を通したのだ

ココがこの町の死を考えた

それが透明で掴めないわからぬものだがきっとある

ココが目の前にいる子供達に何かを伝えようとしたがアカンベーされ去っていかれた

ここは一体どこであるか?

「ココ? 大丈夫ですか……? ココ!」白い仮面の少女が言った



ココが悪魔達が集めた子供の指でできた城に潜っていく

麻薬を吸う老人が

旅人から盗む少女が

今日の昼に親友の頭を撃ち抜いたギャングが

はした金で踊り性交する踊り子が

悪魔を失った

それがなんだ青ざめるものか



赤い何かを掴んでみよう

ココの指がちゃんとある

血のついた鍬だ

真ん中から折れた両刃剣だ

得体の知れぬものの入った風呂敷包みだ

人を十人殺してきたキセルだ

永遠に朽ち果てることがないであろうご馳走を子供達が分け合っていた

「ここが安住の地なの……?」ココが言った

川のせせらぎが骨の音だ

亡霊とか鳥とか虫とか動物とかが死者の学校のチャイムを聞いて急ぎ始める



ココがむせかえる赤い地を潜っていく

ココがこの場所の意志を見出せない

ココがこの先進めば自分の何かが壊れると感じたのだ

ココの選んだ道を上の方の誰かが笑う

「ねえ、私はどうすればいいの? このまま町が浄化されて悪魔達がいなくなっていいの?」ココが言った



ココの母ポメラがぬっくと赤い地から現れた

「町が浄化されれば町は平和になるわ。病人も浮浪者も家無しも少なくなる。ギャングも暴力もなりをひそめる。すべてがよくなる。自然の道理ならそれが仕方ないのよ」母ポメラが言った

ココが驚いて母ポメラの顔を見上げた

赤い地がいい香りをさせる



ココの父カルトンが子供の指でできた城の方から現れた

蜃気楼のようだったが確かに父カルトンだった

「童話集は持っているかい? 僕の君への思いはあの中にすべて込めてある。僕はきっと悪魔と出会わなければ君も生まれなかったし、字も教えてあげられなかった。だから君はやりたいようにすればいい。生きるべく生きて」父カルトンが言った



ココが父カルトンの方へ振り向くと父カルトンパラパラになって消えた

ココが気が動転してジタバタしていた

「大丈夫よ、あなたが変わるだけ」母ポメラが言った

ココが母ポメラの手を払って子供の指でできた城の方へ潜っていく



ココが潜って息切らしている

赤い地の髑髏がこの世は所詮偽物だらけと言う

子供の指でできた城から風が吹いてくる

生臭い看板が死体以上の死を持つ

鳥が飛び交いながら呪文を唱える

虫が人間の死体を見つけるとバリバリ食らう

動物が骨になる

ハンターがココの行く先に現れた

「ここはあいかわらずだな。お前を引き戻しに来たよ」ハンターが言った




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