悪魔がいなくなった
床に座って子供達がココの黒板に書いた字を見ていた
ココがイスに座って発音と字を合わせている
旅の途中の鳥達が休憩所として寄っていくのだ
畑を耕すスカート姿の少女の写真をこの町の人々は信じることができない
昼寝をしながら少女が異国の夢を見る
そこには二本足で歩く豚とフルーツ色の牛がいる
風で散っていく煙草の煙がきっと海を超えるだろう
ゴミだらけ上にいる羽虫が風を読むのだ
故郷を憂う日などあってはならない
ココが黒板に字を書きながら考えた
この字が何を目指しているのか
部屋の隅で子供が二人で指遊びをしている
白い仮面の少女が切り分けたリンゴを持ってきた
子供達がリンゴに群がった
この字が子供達に何をもたらすのだろうか
穏やかな太陽光がココの室内に香る
猿がかなきり声をあげて悪い浮浪者を追っ払う
ココにとって天井が空とそう大差のあるものではない
ココが今ならどこへだって飛べる
だが飛び立つ理由が見つけられない
ガラスの抜けた窓枠がいつでも開かれている
しゃくとり虫とカラスが探索を終えて戻ってきた
「じゃあみんな、そろそろ教室を終わりにしましょうか。みんな遊びたいでしょう?」ココが言った
子供達が手を振りながらココの家から出ていく
みんな足取りが軽い
彼らに字が何だというのか
学校に行った方がよほどいい
顔に泥を塗る少女
今日も異国の風吹かせたトラックが入ってくるというのか
空と風に土のとは違う臭いが混じっている銃や大麻でもない
ココが白い仮面の少女に頼んでタライに水を汲んでもらって外に出てみた
空を映したタライの水が赤くなった
きっとどこかで誰かの血が混じってしまったのだろう
ココがその水を撒いた
地がその水で湿らす前に蒸発させた
鳥達が慌てて旋回してどこかへ飛んでいく
縄につながれ引っ張られる豚と牛が首を上げ死の行進
「「なんか、ちょっと、おかしいね」」しゃくとり虫とカラスが言った
地べたに座る現地雇い労働者がギャングに怒鳴られ仕事し始める
太った現場監督が手元のメモと現場を見ている
だが鉄筋を運ぶ男達がこの場所が何であるかを分かっていないのだ
町中に建てられた完成図をこの町の人々が見て喜ぶ
白昼夢の中で悪魔が宙に浮く
そこでは自重を失い崩れかけのところ産業機械と友達になる
土を固める仕事をする男の汗がきっと純銀毛の牝牛のように清い
天から絶えることなく与えられるエネルギーが人を動かすのだ
未来を憂う日などあってはならない
処刑人達が酒を酌み交わしながら語らった
この町はあの町を目指しているのだ
海の向こうのオフィスで土木作業者が設計図を書いている
子持ちの女が現場雇い労働者に甘い飲み物を持ってきた
現地雇い労働者が甘い飲み物に群がった
この恩がこの町に何をもたらすのだろうか
鉄板靴で踏まれた地がいつかコンクリートで埋められる
警官がホイッスルを鳴らして浮浪者を追っ払う
大人にとって大地がコンビニと同じだと慣れる日も近い
俺達がそう無限でなんだってできるんだ
ただそれに形があるかどうかは分からない
美術史に沿うた象徴絵画が持ち込まれる
外資を目論むオフィスワーカーとNPО職員が車でやって来た
今日の作業はもう終わろうと現場監督が言う
明日も元気に働こう
現地雇い労働者が汗を拭きながら帰りに酒をひっかけていく
みんな足取りが軽い
彼らに死が何だというのか
近い将来この町にできるプールの方がいい
金の目をした獅子
明日も異国の風を吹かせたトラックが入ってくるというのか
今オフィスワーカーのwwwによって大量の意志が入ってくる
天馬や不死鳥ではない
現地雇い労働者がすっかり酔って立ち小便をした
地に浸み込んだ小便が赤くなった
きっとよく働いたから血が混じってしまったのだろう
現地雇い労働者が歌った
月夜がその歌をガラス割るみたく響かせた
虫と鳥と動物達が何か察知して逃げていく
縄につながれ引っ張られる死者と悪魔が俯いて生の連行
悪魔がいなくなったいなくなった




