ココ長兄との再会
「ココ! 生きてたんだな!」長兄が言った
「兄さんこそ死んでしまったと……」ココが言った
「気絶して死体のふりしてたらなんとかなったんだ」長兄が言った
オウムが木の実を食べに戻ってくる
老婆がぼろ布で生まれてくる子のために人形を作った
やわらかい枝が消えぬゴミ汁によって溶けてゆくのだ
輸入菓子が肥満男を添加物漬けにした
トラックの荷台に乗った五十人の男女が目をギラギラさせている
墓場に木を植える仕事の男が昼飯の休憩を始めた
「兄さんは今どこに住んでいるの?」ココが言った
「俺は今、尊敬する人の所で一緒に暮らしているんだ。お前は大丈夫なのか、ココ」長兄が言った
「ええ、大丈夫よ。なんなら、今私が住んでいる家に来ない?」ココが言った
棺桶職人が月に二十個の棺桶を作る
ぬかるみの轍がバッタの親子の終の家になる
子供が寝転んだ子供を飛び越える遊びをしている
乾いた風を避けて蝶々が捨てられたドラム缶にとまった
「そうだな、俺もお前の住んでいる家が知りたい」長兄が言った
ココが白い仮面の少女に荷車を押されて長兄とココの家に向かう
排水管を詰まらせていた泥が勢いよく飛び出した
子供がまた貝殻を結びつけた紐を振り回して走っていく
砂煙の向こう側が死者の町
時々太陽の陰でちらと見える
虫や鳥や動物がたまにそこに行って死者の学校で学ぶのだ
日が暮れ始めると町人は穏やかな血のめぐりに
処刑人達が銃や金を頻繁にやり取りする
教会の神父が海外のテレビ番組を見て笑う
夕日を摘むふりをして少女達が遊んでいる
トタン壁に今のところは観られないであろう映画のポスターが貼られている
だがこの町の人々が悪魔とそれを区別できるかわからない
リトルギャングがギャングの下っ端を誘拐して身ぐるみ剥いで殺して夜に土に埋めた
ココと白い仮面の少女と長兄がココの家に着いた
「これが私の家よ」ココが言った
「ここは白い罪人のアジトじゃないか!」長兄が言った
靴屋のわきに積まれたゴミの山の中でカラスが死んでいた
麻薬売人が仕返しをしに帰ってくる
売春婦が魂を鎮めるために案山子を作った
ココのきれいになった家が時間と共に腐っていくのだ
血の滾りが長兄を一旦ソファーに座らせた
家族の血を代弁せんとする長兄の目がギラギラしている
白い仮面の少女が長兄にリンゴを差し出した
「お前はなぜここに住んでいるんだ?」長兄が言った
「私は今、ここで文字を教えようと思っているの。私はもう何とも思っていないわ、兄さん」ココが言った
ありきたりの往来に頭を転がしても何てことない
織物職人が死体を腐敗から守るための織物を織る
沈む太陽が屋根の上のしゃくとり虫とカラスに見られる
猿が子供達と追いかけっこをしている
棺桶に入れなかった亡者がいつか消えた
「そうか、それなら俺の所に来ないか。俺がお前も一緒に住めないか頼んでみる」長兄が言った
ココの喉に飛び出そうとした言葉達が詰まった
子供が遊ぶのをやめて家へと帰っていく
賑やかな灯りの向こう側が亡者の町
飛行機が飛んでくると目がくらむ
外交官や政治家やNPО職員がやって来て生者の学校をつくるのだ
夜になると町人は酒を飲み小さな宴をする
幽霊達が過去と棲家を頻繁にやり取りする
開拓時代に耕された果樹園が今はもう潰れていて笑いものだ
土地に生きるふりをして人間達が遊んでいる
大木の人に見られることがないであろう根の平たいところに絵が彫られている
だがこの町の人々が自らとそれを同一視できるとは限らない
月夜が酔っ払い男を誘惑して服を脱がせて踊らせて排水溝に落として溺死させた
ココが長兄に荷車に乗せられて長兄の住んでいる家へと連れていかれた




