ココが使命見つけた
ココが屋台の下の隙間からヤギの目を見た
「何かありました?」白い仮面の少女が言った
「いいえ、肉屋のヤギの頭を見ただけ」ココが言った
ココのすぐ横の女達が靴を並べて売っている
子供が蹴られて血を流す
するとどこかで盗人がナイフを振り回すのだ
地面に弾痕がよく見てみるとある
少年が煙草をふかす男のそばでスプーンで土を削っている
痩けた男が紙皿に盛られた煮魚を食う
風鈴が鳴る
ココが止まった
ひさしに張った布の模様が再生と同じ意味だ
亡き者への鎮魂がハゲタカの血
そう父の頭蓋は何処に帰る?
母の頭蓋は何処に帰る?
長兄の頭蓋は何処に帰る?
長女の頭蓋は何処に帰る?
次兄は?
次女は?
三弟は?
四女は?
悪魔が何を教えたか?
ココが周りを見た
人人人人人人人人人
足足足足足足足
汗汗汗汗汗汗汗
闇闇闇闇闇闇闇
人人足汗闇闇足人
ココが太陽の温かみを感じる
そうここが愉快な不滅の実存たるプラスチックおもちゃの遊園地なのである
店の奥の暗闇から髭を生やした男が少女を見ている
店の前で値切る女客が店員の手を見ている
足がかさぶただらけの男が歩きながら太陽を見ている
右腕のない子供が道の真ん中に突き立てられたパラソルを見ている
太った女が太陽をTシャツですかして見ている
車道のすぐ横に植えられた木で話す男女が互いの唇を見ている
肉の色をしたポロライド写真
この町では誰もが死を知りながららんらんと肉踊る
人間や日に焼けた体の心が闇であることをココが悟った
ココが童話を思い出す
花がくまの子が鳥達が白く美しい
「ああ、お父さん……」ココが言った
ココに字を教えたのが父だった
店番の女がココを憐れみの目で見るが笑う
この町で生きた愛玩具がとても珍しいのだ
「早く行きましょう、ココ」白い仮面の少女が言った
「ねえ、白。私、みんなに文字を教えたい」ココが言った
ココが白い仮面の少女に引き摺られながら人々を見た
「何を見ましたか?」白い仮面の少女が言った
ドラム缶の中に豚の骨があった
土手で飢えて死んだ子供が整列している
海外から来たオフィスワーカーが血を流す
すると企業がまた新しいオフィスワーカーを送り込むのだ
傷が浮浪者の腹によく見てみるとある
国からの助制が切れた河川工事が途中で止まっている
地べたに座る男が右手で乾燥大麻をいじくっている
「目隠し迷子」ココが言った
悪魔の見る丘の上からの町が操り人形だ
生者の髪の糸が強靭である
文字が何を語る?
生者が何を叫ぶ?
町が何を聞く?
悪魔が何におびえている?
麻薬が?
殺人が?
誘拐が?
腐乱が?
ココが父に字を教わった
ココが白い仮面の少女を見た
「私はみんなにお母さんへって手紙を書かせてあげたいの。それは死んだ人への思いにもなるわ。生きる私達の未来にもなるわ。みんな自分のこと、心の底ではわかってない。その手助けがしたいの」ココが言った
ココがココの血がたぎるのを感じる
そうこれが童話という逃避の中にしかなかったココに初めて芽生えた現実への本物の 思いである
ココに寄り添いながら字を教えてくれた父が外から帰って来たばかりで背広から砂の匂いがした
裕福だった頃の母が魚の素揚げを返すためお玉を持っていた
長兄の使い込まれたサッカーボールがボロボロだった
長女のよくわからぬ西洋人形が捨てられず残っていた
次兄が輸入物のビスケットを好んで食べていた
次女が彼氏として好青年を連れてきた
三男が寝床のシーツをおねしょでよく汚していた
四女が小さくやわらかい手でココの指を握った
父が残した色褪せたポートレート
ココがこの町での血の意味を知らなかった
血が鮮烈でありながらも静かなる再生である
ココが闇に触れる
夢と無と生がある
どろりとココにまとわりつく
ココがバラバラにならずゆっくりと起き上がる
店番の女がココを憐れみの目で見るが笑う
この町で生きた愛玩具がとても珍しいのだ
しゃくとり虫とカラスが飛んで来た
「「お〜い!ライターが見つかったよ!」」しゃくとり虫とカラスが言った




