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白い罪人の亡霊との再会



明るみ始めた空を肉屋に並ぶ豚の頭が見る

鳥の群れが休憩場の事故死者の転がる交差点に降りる

雑草が乾土の遥か前の豊かな地を思い出す

やや斜めった電柱と何があるかも知れぬコンテナが子供達の密売場だった

路肩で寝る老人の腰のあたりでバッタが温んでいる

ココのゴミだらけの生家にネズミが集まりだした

きっと果物屋の女主人の捨てた実のついた皮を食いにくる

ココと悪魔達が白い罪人のアジト目指して歩く

空のドラム缶が亡霊ですし詰めだということを知らない

食い捨てられたリンゴの芯が転がっている

浮浪者と死人を見分けるのは歯がついているか否かだ

風で木の葉が鳴り始めるとギャング達が起き出して銃に油をさす

男が死体を燃やした灰を埋めにくる



何か食べたいと言って悪魔エドウィンがゴミ捨て場へフラフラと行き手を突っ込んだ

ちょっと眠りたいと言って悪魔ズィーグァンが路肩で眠る男に背を合わせ寝る

打ち込みがしたいと言って悪魔ギャニットが木にパンチしだす

話がしたいと言って悪魔レキュスタが塀の上のカラスと話しだす

「みんな楽しそう。この町が好きなのね」ココが言った

「そうだよ。僕達もこの町の一部さ。ココもきっとそうじゃない?よし!みんなで歌いながらアジトまで歩こう!」悪魔タタンが言った



悪魔タタンが歌い始めた

ココが悪魔達を見る

町の人のよだれが土に染み込み川へとゆくのだ

赤い血赤い果物赤い蝶

ココがつられて歌いだした

ココがどこかで駆けるくまの子の足音を聞いたような気がした

麻薬で快方した男が窓からさし入る朝日を感じる

線路のそばに立って歯を磨く腹の出たオヤジが生きた風景である

ココは陽気になって歌った

ココが自分の歌が少しだけ好きになった



白い罪人の荒れたアジトに白い罪人の亡霊がいた

ココが白い罪人のアジトに着いた

ココがぼんやりと突っ立っていた白い罪人の亡霊を見た

ココの背筋が冷たくなった

二日酔いのオヤジがゲロ吐いた



陽で照らされた壁のしみを白い罪人の亡霊が見る

悪魔達が影のある路地の隙間に逃げる

スナック菓子が一面の金色と作業員の手の冷たさを思い出す

子供達の指と町を包み込む透明が悪魔の骨だった

人を隠せる林で老婆がゴミを捨てている

ココに気づいた白い罪人の亡霊が振り向いた

きっとカラス達がケンカをして本当の強者を決める

「おお、久しいな。ココじゃないか」白い罪人の亡霊が言った

ココの腹の中が感情でいっぱいになる



皮が破れたスポンジ剥き出しの大チェアーが倒れた

ガラスの割れた窓からネズミとギャングが覗く

ホコリがギャングの亡霊の拍手で震え出す

カラスが屋根裏に巣をつくり雛を育てる

触覚を振ってゴキブリがエサを探し走り回った

階段の裏の布団がムカデの交尾場でいっぱい出る

二階の白い罪人の隠し部屋が木片と血だらけ

ココの監禁された部屋が綺麗に片付いている

「俺はこの場所から動けないんだよ」白い罪人の亡霊が言った

「あなたは私を怒っている? 痛かった……わよね……?」ココが言った

「そんなことはないよ。俺は君に酷いことをした。だからどうかおあいこということにしてくれないか。悪魔に叱られたんだよ」白い罪人の亡霊が言った



ココが歌い出した

ココが町の裏で楽しげに踊っている悪魔達の声を聞いた

麻薬で全うした男が川を流れて旅に出る

ココの歌を聞いた者共の血潮がただ明日を生きる糧の金になる

この世の価値は絶対に一つではないのだ

ココが自分の歌をまた少しだけ好きになった



「そうだ。俺はお気に入りのライターを失くしてしまったんだ。探してくれないかい?」白い罪人の亡霊が言った

バッタが亡き母バッタの下に着いた

男が壺の中にある悪魔の骨の子供達の指の油漬けを見た

教会の鐘を止めて

「君は字が読めるから生きていけるよ」白い罪人の亡霊が言った




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