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久しぶりの我が家



ココと悪魔達が町に戻ってきた

月夜がギャングも浮浪者も皆寝静まっている

野良犬がかさぶたのできた乳首を引きずりながら歩いている

黒い乳臭い乳首

ココがまずどこへ行こう

空き屋の西向きの壁が子供達の小便で変色してしまった

人家の前に置かれたバイクのタイヤが劣化と寒暖でヒビ割れた

「ねぇ、どこへ行く?」悪魔タタンが言った

「とりあえず、私の家に行ってみましょう。何か変わっているかもしれない」ココが言った

「でも、みんなを起こさないように忍び足で行かなきゃ」悪魔タタンが言った

虫達が屋根の上で郵便局員の巡回路を思い出している

未来になど興味はない

この通りが肉の敷き詰められた迷路

ここに僕の肉があるよと亡霊が言っている

道が一人でに動き出したい

ギャングの顔をブン殴ってやりたい

風に吹かれて目に当たるのが錆びた瓶のふた

倒れた酒瓶に酒が入っていなかった

あの丘の向こうがココの家だ



カエルが川の上流にのり泳いでいく

こんな涼しい夜に大麻草が折られる

月が肉の吊るされた屋根に欠けさせられる

壺の水に痰が浮いていた

ココが悪魔タタンの肩の上で辺りを見回した

「もう少しゆっくり歩いてくれる?」ココが言った

ココの鼻につくのが懐かしみでなく土と汗の臭い

ココがこの町でもはや異物となったのか

枯れた噴水場が老人の衣服で埋め尽くされていた



ココの家が見えてきた

「あそこ! あそこの家よ!」ココが言った

ココを肩車した悪魔タタンが駆け出す

ココと悪魔タタンが家に飛び込んだ

家の中がゴミで埋まってよくわからないものになっていた

インコがココと悪魔タタンのはるか頭上を回りながら飛んでいる



輸入菓子の袋

空き缶

血つきの服

経血のついたティッシュ

ネズミの死骸

ニワトリの羽根

大便の入ったビニール袋

車のタイヤ

カビたペーパーバッグ

泥だらけで使い物にならない布団

「ここには住めそうにないみたい」ココが言った



「じゃあ、僕達はどこへ行けばいい?」悪魔タタンが言った

たらいの水の中でボウフラ達が眠っている

前輪のないバイクが浅い川に置き去りにされる

老婆が子供から取り上げたアメ

「どうしましょう……」ココが言った

空き箱に詰まった砂だらけのシャツがカビることはない

ギャングの食いかけのドーナツが路肩に捨てられていた

ココが指をしゃぶりながら考えた

ココの親指と母の手

何も変わりなどしないオウムが襲撃の記憶をそっと運んでくるのだ

ココが白い罪人とそれに殺される家族をゆっくりと想像する

過去になど興味はない

この家が家族の死体で埋められて

ココがそれらの声を聞くことはない

床が一人でに悲鳴をあげる

悪魔の肋骨の裏に入りたい

熱にうだされるココの目に当たるのが弾丸

遠くを見るココが何も見ていなかった



ココの目を見ていたのが悪魔レキュスタだ

ココが意識の下流にのり流されていく

こんな涼しい夜に死体が捨てられる

「白い罪人のアジトに行ってみるのはどう?」悪魔レキュスタが言った

「私があの場所で何をしたかわかって?」ココが言った

ココが悪魔タタンの肩の上で俯いた

「ココは彼に会うべきだ」悪魔レキュスタが言った

時計の短針が折れて女の足裏を切ろう

この夜にホットミルクを飲むやつなどいない

処刑人の持つ小銃がいつでも撃てるのだ

ココが息を吸った

「そうね。行ってみようかしら」ココが言った

ココを肩車した悪魔タタンがココの生家から出る

ココが

どろりんと飛び込んだ

ココが身動きとれずズブズブと沈んでいた

違法入国者が手はずの車はまだかまだかと待っている



町の教会の鐘

五人の悪魔

童話

家族

ギャング

両足

ガラス

白い罪人

弾丸

ココと悪魔達が居場所を求めて歩き出し




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