猿からの挑戦を受ける
ココと悪魔達が平らな岩の上で休んでいた
鉄の椅子が演者を拘束していたのだ
踊る肉の波が幾万の矢尻の元になった
「なんか囲まれてるぞ」悪魔ギャニットが言った
岩の陰から猿達が現れた
右手に握るのが矛だ
切りつけた者の毛髪が熱を帯びた
体温計の水銀が岩肌に散らばる
コロセウムでできたならどれだけの観客が喜んだことか
「おい、そのリンゴは俺たち猿のもんだぞ!返せ!」猿が言った
「いえ、このリンゴは白い仮面の少女からもらったものです」ココが言った
憎しみで曲がった針金に肉を通す
筋肉が微かに痙攣して岩のように鋭い
「その女はどこに」猿が言った
雑草は決して旅荷を包む風呂敷ではない
千切れたサンダルが岩の隙間に滑り込み
白い仮面の少女はどこにもいなかった
「さては!お前達は嘘をついてリンゴを盗んだ罪を免れようとしたんだな!」猿が言った
岩に打ちつけ頬の肉が削がれた
溶けた空と車輪が闘士を乗せ回る
一秒ごとに肉体がガラス質に変わっていたのだ
綱が思い切り引っ張られ太陽がバラバラになる
轢き塗られた腸と健がうねる
雑草が作った穴に猛獣が入る
盾で防げるのが憎しみであると誰が決めた
「それ! 捕まえろ!」猿が言った
猿達がココと悪魔達に襲いかかった
体温が四方に分裂した
押される巨石とふくらはぎの筋肉が日時計だ
俊足の影が岩肌をなめて
剣が交わり雑草が騒めいた
血で濁ったせせらぎが岩肌の脈拍だ
ココと悪魔達は戦ったが猿の多さには敵わなかった
ココと悪魔達が猿の洞窟に連れていかれた
猿達の血臭い牙が旅の者を畏怖させたのだ
洞窟が奇声を響かせ礫が落ちた
ココと悪魔達が猿達に囲まれた
闇から猿の手がのびた
洗浄した脊椎が勲章だ
何見えぬ闇でただ一つの光だった
熱された油が余興のために運ばれて
闘士達にかけたらどれだけ憎しみが露わなることか
銀杯に山盛りの種が芽吹いた
ココと悪魔達を横穴に押し込める
「ここで裁きがくだるまで待つがいい」猿が言った
「いつ決まるの?」悪魔タタンが言った
ココが大きくなったリンゴをかじったのではない
悪魔タタンがココの目をそっと塞ぎ
「そんなの知る前に喰われてるかもな」猿が言った
ココと悪魔達はじっと横穴で裁きを待ち続けた
洞窟の岩肌をつたいながら白い仮面の少女が現れ
「ねぇ、あなた。どうして私達をこんな目に合わせるの?」ココが言った
「猿の言うことを聞かないと私が殺されてしまうんです。その代わりに、このお面を被って猿達との勝負に勝てばあなた達は助かります」白い仮面の少女が言った
白い仮面の少女の足音がレース模様
何か求めるが何なのかわからぬ
ココが助かるのが酢えた水であると誰が決めた
「誰が被る?」ココが言った
「俺が被ろう!」悪魔ギャニットが言った
「僕が……被る……。暗い所は……得意……」悪魔ズィーグァンが言った
石で剣を磨いて
甲骨が開かれ観客が湧いた
地下の水脈に錆びた鎧が溶けている
闘技を楽しんだ観客が食いかけの干し肉を捨てているのだ




