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通せんぼカラスと脳




ココと悪魔達に手を振る

海の底が棺桶から外れていた

砂浜で肩を並べて眠る

血と生がただ転がるだけの窓だ

頑丈な舟は沈まない

ココと悪魔の交代で櫂が軽やかになる

海面の煌めきが魂の軌跡だ

ココが下を向くと林のさざめきがした

悪魔ギャニットがココに櫂を渡すことはない

悪魔タタンが舟頭で仰向け空を見ていた

拒まれた花粉が落ちる

水の中に入っても水輪は起きない

後ろを見て浜で虫達が次の舟の準備をしていた

舟が穏やかな霧を纏う

どこからかカラスが集まってくる

カラスの後ろで骸が浮いている

空いた影にすべり込んできたのだ

「おい、ここから先は通さないぞ!」カラスが言った

「あなたはなぜここを通してくれないの?」ココが言った

海流に砂鉄が乗る

その道で誰もが泣いた

迷うた記憶はもう戻らない

カラス達がうめき声を上げた

ココが悪魔タタンにしがみつく

蜂達が今日の仕事を終えた

「俺にそんなことがわかるか。知っているとしたらしゃくとり虫のあいつだ。あいつが俺の脳を奪ったんだ! あいつなら知ってるはずだ! あいつから俺の脳を取り返してくれたらここを通してやってもいい」カラスが言った

魂の機嫌を損なうと打ち寄せる

風で舞い上がった腐木が落ちた

羽虫を咥えたカラスが憐れんだ

母の生き方など誰にもわからないというのに

ココと悪魔達が舟を反転させた

「戻るのね」ココが言った

「しゃくとり虫に話してみよう」悪魔レキュスタが言った



脳が食べられたい

夕日が虫の巣を染めていた

打ち寄せる波で乙女よ泣け

顔が潰れても必死に泳ぐ

黒い靄は探す

ココを降ろした後に悪魔が降りる

林からぞろぞろと現れるのが虫だ

悪魔レキュスタの足元にしゃくとり虫が寄って来た

「やあやあ、みなさんどうでした?」しゃくとり虫が言った

斬首のための刀が砂浜に流れ着いた

岩場の骸が折れ曲がって寝ているようだった

「しゃくとり虫さん、聞きたいことがある。カラスが舟を襲うのは脳が無いからからだそう。そして、その脳をあなたが持っているとカラスが言っていました。あなたはカラスの脳を持っているのですか?」悪魔レキュスタが言った

ダイヤで砕かれた骨が集まる

虫達が生者を食い殺すのだ

「まさか! そんなの嘘っぱちですよ!」しゃくとり虫が言った

砂浜に箱と埋まっていたのだ

「なぜカラスはそんなこと言ったと思う?」ココが言った

「それはきっとカラスが母親を亡くしたからだよ。母親を亡くしてから通せんぼをする。カラスに母親の亡骸を見せればきっと正気になる」しゃくとり虫が言った

「その母親の亡骸というのはどこに?」悪魔レキュスタが言った

地に生えた手が踊る

その道で誰かが泣いていた

喰われた記憶はもう戻らない

虫達が羽音を立てた

ココが悪魔タタンにしがみつく

窓が真上に吹き飛んだ

頬の肉が波に浮いている

女王蜂が窓に着地を教えた

「亡骸はきっと海の底だ」しゃくとり虫が言った

母の行方など誰にもわからないというのに

ココと悪魔達が舟に乗り込んだ

「しゃくとり虫さん、あなたは嘘をついている。だけど僕らは海の底を見なければならない」悪魔レキュスタが言った




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