ココが旅に出る
白い罪人がココに無力を教えた
撃たれた死体で空を掴む感覚だ
くまの子が引き戸の影からココを見る
目はくり抜かれていた
ココが現世を見られない
処刑人達が白い罪人の死体にたむろしていた
笛が教会から寂しげに吹かれた
白い罪人を殺したところでココには何も起こらなかった
母と長兄と三女が笑っていた
父と次兄と四女が悲しんだ
童話がココをうつ伏せで叩き上げた
文字かココの四肢を貫通した
ココが「うっ」と言った
空焚きしていた車が爆発したのだ
誰もいない町で干された包帯が黄ばむ
月はこの町のどこを見ていたというのか
ギャングの魂が木の下に集まる
鏡がレンガ塀の上に置かれた
母親が殺した子を埋めた穴に葉を被せる
処刑で流れた血が根から吸われ葉によって撒かれた
ココが気にしなかった
もうどこへ行ったか知れぬのだ
透明な道に誰彼もいない
筋腱の旋律が軽やかだ
この町を別れる前にどこに寄ろうか
ココが懐かしむ場所など一つもなかった
蝶々に話を聞こう
処刑人達が白い罪人の死体を写した
「心と魂の依り代を探しなさい」蝶々が言った
ココをつなぐものは何も無い
「旅に出るんだね」悪魔タタンが言った
「そうよ。だってここには何も無いもの」ココが言った
処刑人達がココの横を通り過ぎる
「お嬢ちゃん、おじさん達と一緒に来るかい?」処刑人が言った
「大丈夫よ。私は一人でいるわ」ココが言った
処刑人達が列なして帰っていく
「ねえ、どこ行くの?」悪魔タタンが言った
「私の両足と童話がある所よ」ココが言った
岸辺の小舟が銀の羽毛を載せている
若いギャングが麻薬を携えてかの岩山を目指す
棲家を追われたネズミの一家が新しい地へ駆けてゆく
太っちょ売春婦がくしゃくしゃの紙幣を捨てる
悪魔タタンが旅立ちの詩を詠った
うさぎの頭蓋。カラスの脳。
猿の目玉。白い花の茎。
カエルの前足。ネズミのフン。
しゃくとり虫。裸の種二つ。
かの国から来た黒板、
文を括られた風船、
真二つに裂かれた国旗。
父のために死ぬ、
母のために死ぬ、
魂が肉屋の店先に並ぶ、
私は空へと飛んで行くのだ。
湖の色白い。
私は途方に暮れる、
父を生かし、
母を生かし、
国は大地から一人立つだろう。
案山子の腕がほどけてゆく、
私は飛んだ。
偉大なる種は咲かんとしている。
地を揺るがす汗は赤い。
雲が私を見ている。
何万という鈴が鳴る。
私は準じて絵を描く。
海の底の色、
遡上する魚達の意志よ、
私は畏敬の念を持つ、
遠いかの地へ。
ガラス匙は誰のものでも無い、
時の糸は誰をつなぐ、
誰もいない荒屋。
大きな墓石。
火を見下す凧。
私は可愛げな彼らを慰む。
心と魂の依り代を目指す探しなさい、
いかだと綱、
カラスよ、
飛んで下さい。
ウサギよ、
聞き耳を立てて下さい。
猿よ、
駆けて下さい。
白い花よ、
泣かないで下さい。
しゃくとり虫よ、
歩き続けて下さい。
裸の種二つよ、
肉体と魂。
頭蓋を皿に砂をすくう、
旅人は秘薬と共にかの地へ、
覆面を被り過去を占う、
五つの指と内臓聖なる重し、
私は旅立ちのために詩を詠った、
うさぎの頭蓋。カラスの脳。
猿の目玉。白い花の茎。
カエルの前足。ネズミのフン。
しゃくとり虫。裸の種二つ。
うさぎの頭蓋。カラスの脳。
猿の目玉。白い花の茎。
カエルの前足。ネズミのフン。
しゃくとり虫。裸の種二つ。
「ここはどこ?」ココが言った
「ここは静かな海だよ」悪魔タタンが言った
「何だか血生臭いね」悪魔レキュスタが言った
「敵はどこだ! どこだ!」悪魔ギャニットが言った
「静か……Zzz」悪魔ズィーグァンが言った
「モグモグ、魚、いるかな?」悪魔エドウィンが言った
「波の音が耳障り」ココが言っ




