表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/69

ココが白い罪人を殺す




血の匂う奇麗な夜だ

タイル片がココの掌で踊る

横たわるココが銃声を聞いた

銃は熱を帯びているだろうか

広場の階段の花が笑って

ココが何も期待していない

失くした足を追う旅に必要な荷を整える

魂はどこまで行っても身一つしか持てない

和解などあり得ないのだ

ココが小さなタイル片を口に入れた

ひとまず階下に降りよう

ココの行く途に落ちるのがカラスの羽根か

カラスが日中に残していったのだ

月が酒屋のひさしだけを照らす

夜な夜な半覚醒者が戸を叩くからだ

ココの冷静がもう頼るものなど何も無い

腹で処刑人達の暴れる様を感じる

毛虫がもう一息で母の元に帰る時鳥に喰われたのだ

夜風が電球を揺らす

悪魔は皆眠っていた

銃心が冷え往来に誰もいない

血の臭いが土に吸われた

ココが砂ぼこりを吸い過ぎてむせる

汗が噴き出る

処刑人達が階段を上がってくる血の臭いを纏わせて

タイル片がココの歯茎を傷付ける

バイク事故をよく起こす男が不良バイクばかり買う

大麻がこの町で栽培できないため信用と同じだ

買い出しに行くと末の子供に金を渡し大麻を貰う

最も手っ取り早い金儲けの仕方を子供が知っている

ギャングが知っていたのが金回りだけだった

夜冷えした床がココの体温を奪う

腕が痺れて階段を下りられない

ネズミが屋根に駆け上がった

処刑人がココを見つけた

蹴り殺されたニワトリが首をもたげている

「やぁ、お嬢ちゃん、大丈夫かい?」処刑人が言った

処刑人の縮れ毛をココが嗅いだ

「ええ、大丈夫よ」ココが言った

処刑人が銃を置き手を握った

大羽虫が汚れたビールグラスに入った

酔ったオヤジが木の下で寝ている

闇医者が金持ちギャングのふくらはぎの弾丸を出した

水道管が静かだ

ベッドで寝ているのが肥えた男と少女だ

身体が何より金になるよ

白い罪人が奥の部屋に隠れていた



銃を撃たれたのが処刑人だ

血がぺっとりと付いた

ドアの向こうが白い罪人の血も流していた

処刑人がココの側で死んでいる

床が血で滲んだ

ココが処刑人の小銃を持った

「もう、大丈夫よ」ココが言った

昼夜の寒暖で歪むアルミ屋根が星を見た

「おい、仇を取るなら今だぞ」誰かが言った

金を盗まれた男が子供を殺している

白い罪人がココを見つめていた

水道管が地下に埋まっていた

泥が詰まっていたので流れが緩やかだ

吐息がココの意志を奪う

ココが摂理としての死を受け入れた

やはり何より尊ばれるが命だと分かっている

空き家に飛び込んだ小鳥が月光の下でフィアンセを待つ

ココが目の前の白い罪人の息で瀕死だと知った

ココが白い罪人との距離を目算する

ココがタイル片を吐き出す

ココの家族が祈っている屈辱を晴らさんと

乾いた夜風が血を垂らすのか

廃車が三つのパーツを落とす

月が夜空を説教していた

白い罪人の銃が撃つべき相手を見失っている

悪魔は何も言わなかった

夜風が電球を揺らす

ココが白い罪人を憎んでいた

引き金が引けないとはどういうことか

ココの指が理性の狭間で震えている

旅をする羽虫に休息の地などないのだ

騒ぎを感づいた処刑人達の足音がした

老婆が寝床で煙草を吸う



弾丸が白い罪人の腹を抉る



ココが引き金を引いたのだ

ココの行く途に落ちるのがネズミのフンだった

魂を引きずり落ちそうココが小銃で白い罪人を撃った

ココの憎しみと死体が直接交わることはない

弾丸はどんなに撃っても星には変わらない

憎しみが骨の心に入りすっかり形を見せなくなった

空き缶が何を入れようとするのか

ココのうつ伏せの腰が荒んで

カラスは屍肉を消化しただろうか

小銃を置くココが絶望した

薬莢がココの腕にめり込む

死の擦れる音をさせる徒らな風だ




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ