水の音
水の音
巨大な生き物が 水を絶えず押しつぶして行く
。
捕食された生き物がしばしの夢を見る。
グゥムは相変わらず黒いおもちゃを咥えて戯れている。
本当によく飽きずに同じ事を繰り返せるもんだと感心する。
世話し始めた頃は、これが気になってよく叱ったのだが、
長いこと一緒に過ごすとこの行為をも 愛おしく感じるようになった。
孤独な自分にとってグゥムがいない生活は、今更考えられなかった。
頬を潮風が撫でていく。
太陽は高く昇って行った。
遠い故郷の、赤い乾いた大地が頭をよぎった。皆は元気でいるんだろうか。
家族は死んだし、友達は都会に行った。
あの場所には誰か残っているのだろうか。
水が音を立てた。大きな音だ。
自分とグゥムが溺れて、深い水の中に沈んでいくのを想像した。
何故か最悪だとは思わなかった。
水中から天空にあるあの太陽を見上げると、きっと美しいだろう。
グゥムが鳴いている。
言葉はわからないが、機嫌がいい事は一目瞭然だ。
違う場所、旅 という事で、高揚してるのだろう。
塩を多く含んだ風の中で耳をすますと、すぅーという
何かが大気に吸い込まれるような音が絶えず聞こえている。
それは遠い昔の記憶、砂漠での日々、家族と友、の様でもあったし。
今日産まれた 真新しい 物たちの様でもあった。
水を口に含んだ。
自分の身体の中でも同じ様な音がした。
太陽が真上に着いた。
万物を白く包み込んだ。
…………………………………本は閉じられる。
…………………………………………本を閉じた。
心は弾んでいるのに、身体は水の中を歩くように重いのです。
誰かが大きな大きな樽をひっくり返しちゃた様な大雨が、そばにある大きな建物を洗ってる音がここからも聞こえる。
本当なら、太陽が一番高い場所から初夏をとどけてくれるのに、でもそんなことまったく気にならない。
と言うか、悪くないと思います。
長いこと、一人で生きてきた。
故郷の港町のきらきらの海は、お父ちゃんとお母ちゃんを盗んでいった。
夏の晴れた日だった。
この街にきたころ、この街は私に優しくなかった。
転んだ私を見下ろして、わらってる様なふうに見えて仕方がなかった。
今私、幸せです。
幾重の雨の音、この水のなかでそう思う。
わたしはラッキーで、みんなもそうなればいいな、と思います。
この街にきたころ、街の人たちはわたしにするいじわるを、皆で話し合ってるふうに見えた。
雨はどんどんふる。
水が私の身体をつつみこみます。
心のきれいな私のかれは、お昼ご飯を食べてるかもしれません。
幸せが心臓から身体中をめぐります。
この街にきたころ、かれもこの街にきた。かれもこの街から最初やさしくされなかったから、あった時かれはすねて見えた。
あった時私のことを見た、かれのすねた気配をよく覚えてようとその時、なんとなく思った。
おかげでよく覚えてるのです。
はじめてあった日、落ち葉が舞っていた音。
だから私は、autum leavesというこの曲が好きです。