第5話 召喚成功?
とりあえず、異世界に行ってもらうということで、来たこの世界。
ライトノベルにありがちな感じで、どこか分からないけど、床面に様々な模様がある、いかにも召喚しましたな感じのところに立っていた。あれ、ユニークスキルとかチートな能力はないの?なんだか、少し拍子抜け状態でぼんやりしていたところ、真っ白なローブを着てフードをかぶっている人が近づいてきた。その人は、俺の周りをぐるぐるとしながら、頭のてっぺんから足のつま先まで、舐めるように見ている。はっきり言って、気持ち悪い。満足したのか、”ほぅ”とため息が出て、
「間違いじゃない。本当に召喚できた。召喚は成功したんだ!」
周囲にどよめきが広がる。周囲の人が、真っ白いローブの人を見て、その人がうなづくと、一挙に歓声を上げた。みんな、肩をたたきながら、喜びを表現している。
俺は、蚊帳の外で、それを見ているが。
真っ白いローブの人がフードを脱ぐと、赤い髪をした女性が出てきた。年齢は、俺と同じくらいだろうか。体格などは、ローブに隠れているようで、よくわからないが。
その真っ白いローブを着た女性に
「こうしてはいられない。早く王に謁見させなければ。」
そして、こっちに来いとばかりに手招きをされて、召喚された部屋から出て、廊下に出る。まっすぐな廊下は、視界の許す限りまっすぐで、先が見えないほど遠い。
そのまっすぐな廊下を進んでいくと、何もない場所なのに、白いカーテンのようなものが揺らめいているのが見えた。答えてくれないと思ったが、
「この白いカーテンのようなものは何ですか?」
と、問いかけてしまった。
真っ白いローブを着た女性は、
「それは、王宮に害を成すものを拒む結界よ。この結界を見えるとは、あなたはかなりの実力者のはず。とうとう私の能力が認められる時が来たんだわ。」
なにやら、自己満足な様子。今まで、迫害されてきて、それが報われる。そんな感じだった。
しかし、俺は、その結界の向こう側にどうやっても行くことができなかった。揺らめいているのは、分かったものの、進もうとすると壁のような感じになってしまい、それ以上進めなかったのだ。後から、にやにやしながら来た若い男性(ローブの手首部分に赤い輪のようなものが描かれている)は、
「おやおや、一番魔力が弱い掃除係が呼び出したゴミは、王を殺そうとしているようですな。結界に拒まれているのが、その証拠。」
兵士に取り囲まれ、その男が命じた。
「そこの掃除係とゴミを牢屋へ入れろ。」
俺と召喚した女性の2人は、兵士に拘束され同じ牢屋に入れられてしまった。
******監視室*****
牢屋へ入れられるまでの一部始終を見ていた俺がスリーさんへ問いかける。
「捕まっちゃいましたけど?どうなっているんですか?」
「最初は何の力もないから、仕方がないのよ。召喚時にパラメーターに異常なデータを入れると、管理者側に気づかれちゃうからね。」
「パラメーターって、何ですか?」
「パラメーターというのは、その人の持つ-技術-スキルやキャパシティー-才能限界、普通はあり得ない異常な高ステータスのことよ。一般的に召喚時に付与されるもので、その召喚した世界に元からいる者は、持っていないもの。もちろん、そういったパラメーターは召喚された者が持つことができる特殊技能だから奪うことはできないわ。」
「俺は、召喚時には、何も持っていないということですか?」
「そうなるわね。」
「あのままだと、大変なことになるのでは?」
「あのままならね。でも、これから他の召喚で忙しくなるだろうから、こちらの対応はかなり後になるはずよ。」
「どうしてそんなことが分かるのですか?」
監視室内にあるモニターには、上下左右にタブのようなものがあり、異世界へ行った俺を見るシートだけではなく、いくつものシート同時表示されている。
タブが赤く点滅しているシートが引き出されると、シートの周囲も赤く太い罫線が引かれ、シート中央の一番上で、囲み罫線の中に”警告”という字が見える。
シートの中に折れ線グラフがあり、その数値がどんどん上がっていくことが一目瞭然。線は、さっきから赤く太い線に代わり、左側の数値の量が増えていることから、グラフ上の相対位置が同じでも、実際はかなりの勢いで大きな数値になっているというのが読めた。ただし、それが何を意味するのかが分からなかったけど。それを聞こうと、スリーさんの方へ顔を向けると。
「あのシートは、召喚した世界から流れ出すエネルギーよ。召喚には、召喚した世界のエネルギーの他、召喚する世界からの引き抜きに要するエネルギーなど、どれもかなりの量が必要。世界を構成するエネルギー以上のエネルギーを使えば、それだけで世界が崩壊する。空間消滅ね。しかも、この消費量から、50人以上の召喚は確実。」
「50人以上…」
「そう、あの世界で50人以上の召喚を行える程のエネルギーはないわ。そのツケは、どこかで払ってもらう必要がある。もちろん、この状態を見過ごした管理者側の責任も追及しなければならないけどね。」
「結局、どうなってしまうんですか。世界崩壊ですか。」
「そう、崩壊してしまったのよ。世界の管理者が責任逃れのために、管理者上層部に発覚しないように隠蔽していて、こちらの対処が遅れて世界崩壊。しかも、崩壊した周囲まで巻き込んで…よ。」
「崩壊した。でも、あの世界はまだありますよ。俺も見ているんですから。」
「あれは…、とりあえず最後まで見ましょう。あなたの役割が分かると思うわ。」
確かに俺はあの世界に行った。それが、俺の分身たる存在であっても。そして世界が崩壊するという言葉。ここ、監視室から世界を見下ろしている状況では、崩壊する兆候は見えない。釈然としないながらも、中央に位置しているメインモニターから、俺とその周囲の情報を見つめなおした。
様々な世界に降りた時は、このような二重構造で掲載します。
つまり、世界とそれを監視する、監視室の両方です。
とても亀更新…樹木?レベルの更新なので、気にしないでください。
(連載よりも短編向きのようで、中々、更新が…)
***
いつも読んでいただきありがとうございます。
できましたら、感想、評価などをお願いします。
感想につきましては、読ませていただき、今後の作品作成の参考にさせていただきます。
ただし、返信は無理かもしれませんので、その辺はご承知おきください