第2話 異常事態?
劇中は、とても暑い日です。
こんな日は、熱中症に注意しましょう。
地図には、”民家のインターホンを押せ!”と書いてある。
異常事態に頭が麻痺している感じで、インターホンを押した。
でも、その呼び出し音が聞こえない。
故障しているのか?と思って、何度も押したところ…
「そんなに何度も押さなくても聞こえているわ。あなたは、どこの押し売り屋なの?」
という声がスピーカー越しに聞こえた。
しかし、家の中は漏れてくる光もない。
真っ暗なまま。人の気配もない。
「押し売り屋ではありません。海外出張を命じられてきました。」
「…。地図の後ろには、何が書かれていますか。」
何のことだ?
それっきり、声がしなくなったので、持っていた地図を裏返して、見てみると…、何も書かれていない。
書かれていないものに、何を言い返せばいいのだろう。
「何も書かれていませんが?」
「お名前をうかがってもよろしいですか?」
「神野 始 と言います。」
今度は、そんなに時間がかからずに返答が来る。
「ああ、神野さんね。ちょっと待っていてね」
なんだか話は通じているらしい。
カチャン
玄関の引き戸のカギが外れる音がした。でも、人の気配はない。どこからの操作なのだろうか?
すると、スピーカーからの声が…
「玄関のカギを開けたから、真っ暗だとは思うけど、そのままお家の中に入ったら玄関のところで待っていて下さい。」
という声が聞こえた。
玄関を開けて、中に入り、真っ暗な家の中を見ても、人の気配はない。玄関を閉めると、同時にカギのかかる音がなる。
やっぱり自動で開け閉めをしているらしい。奥の方から、やはりスピーカーがどこかにあるらしく、声が聞こえてきた。
「土足になるけど、そのままゆっくりまっすぐ奥へ進んで頂けますか、その突き当りに階段がありますので、その手前で止まってしばらくお待ちください。」
土足でいいと言っていたが、板敷きの床面はワックスで磨いたような感じだったので、そこを土足で上がるのはどうかと思ったけど、結局は指示通りに土足で上がって廊下をゆっくり進む。
ゆっくり進んでいる途中で、なにかの機械音がした。高速で回転しているようなひゅんひゅんという音。カチカチカチという時計の秒針が動くときの音。
階段の手前まで来た。また、声が聞こえた。
「神野さん、今ご本人であることを確認しました。今、扉のロックを解除して、お迎えに行きますので、もうしばらく、そこでお待ちください。」
いつ、確認した? さっきの変な音が、確認するためのものなんだろうか。それにしても、相変わらず家の中は真っ暗で何か出てきそうだ。しかも、この場所がだんだん、寒くなってきた。まだ暑い日だったから、車で移動中は、エアコンをつけっぱなしだった。車の外に出て、一気に汗が出るくらい物凄い暑さだったのに、この家の中は、逆に真冬のようだ。
目の前にある階段が突然消えた。と同時に、扉が出現。
扉が自動ドアのようにスライドして、扉の向こう側にいた人が
「お待たせしました。お手数ですが、扉のこちら側に進んでいただけますか?」
その言葉に、正面をよく見ると、おかしなことに、ドアの向こう側は、明るく見える。しかし、ドアのこちらは暗いまま。ちょうど、自動ドアが開いているにも関わらず、光はこちら側には来ない。スクリーンを見ているような感じ。
指示通りに、ドアの向こう側に移動する。後ろで、ドアが閉まる音がして、続けて、カチャン というロックがかかった音がした。扉の向こうにいた人は、さっきからスピーカー越しに話していた女性と同じだったらしい。
「遠路はるばる、お疲れ様でした。初めまして、私は案内人のスリーと言います。お手数ですが、このあと施設などの案内を行いますので、しばらくお付き合いをよろしくお願いします。」
「ええと、スリーさん。親父から、海外出張に行けと言われて、こちらに来たのですが、どうなっているか、親父から聞いていますか」
「海外…。ああ、そうでした。海外出張ね。それについては、別室を用意していますので、そちらでお答えします。別室までは距離がありますので、簡単な質問については、お答えが可能です。では、通路を進みますので、足元に注意して、お進み下さい。」
見た目、通路には何も落ちていないように見えた。
入ってきたドアのこちら側には、さっきまでいた家の中とは違い、空調システムがあるのか、過ごしやすい気温。明かりも、まぶしくもなく、暗くもなく、ちょうどいい感じ。ドアから通路がまっすぐ伸びていて、通路の中央には白いラインが書いてある。通路の両端には、黄色いラインがあり、左側の黄色のラインと壁の間の通路を歩いている。
通路は先が見えないほど長く続いているようで、しかも通路自体が白く窓や扉もないため、遠くは見にくい。質問してもいいと言う事だったので、いくつか質問しながら、時計をみると10分くらい歩いたところで、スリーさんが止まった。意外と歩いたと思ったのだけど、後ろを見ると、さっき入ってきた扉が、入った時と変わらずにそこにあった。
?おかしい?
確かに10分くらい歩いたはずなのに。
後ろのドアに気を取られているうちに、スリーさんが、左側の壁に手をついてこちらを見ていた。しかし、そこは壁で扉も窓もない。その左右も同じ白い壁。
「神野さま、入ってきたドアでなく、こちらの手をついている場所を見て頂けますか」
ドアの位置も不思議だったけど、スリーさんの指示に従って、手をついている壁を見てみるが、白い壁としか見えない。
「その壁がどうかしたのですか」
「今から、別室に入ります。でも、見た目は真っ白な壁ですが、ここに自動ドアがあると思って壁の前に立って下さい。ちょうど、今、私が手を付けている壁あたりを見て、そういう風に強く思ってください。」
「え?」
何それ?言っていることがよく分かりません。
「とりあえず、私の言ったことをそのまま、疑問を抱かずにやってみて頂けませんか。今後、これと似たようなことは嫌という程ありますので。」
なんだか、押し切られた感じで、壁の前に立つ。スリーさんが、もっと前と言ってくるので、壁に顔がくっつきそうなくらい近づいている。ええと、壁に見えるけど、ここには自動ドアがあると、強く思う…。
「この壁は自動ドア、自動ドア…」
すると、次の瞬間、目の前の壁は、自動ドアのように、横にスライドした。
スライドした先は、屋外だった。
ちょっとした広場みたいで、目の前に小さな噴水がある。周囲は花壇になっていた。
しかも、外はもの凄い暑さだったのに、この広場は、暑くもなく寒くもなく、ちょうどいい気温だった。
なんとなく、広場の方に移動したら、後ろで自動ドアが閉まったような音がした…ような気がする。
後ろを見ておどろいた。自動ドアから入ってきたはずのドアがなく、しかも白い壁どころか、壁すらない。後ろは小高い丘になっていて、遠くの方に森のようなものに見える。
「ええっと、ここはどこですか?」
と、声を出したが、当然周囲に人はおらず、答えてくれる人もいない。
とりあえず、他の場所に移動しようと思い、周囲をよく見ることにした。今いる位置から、噴水以外の場所を見ると、後ろが、見渡す限り低い草が生えている草原になっている。
遠くの左側は、森のようだ。ここから、そこに行くのは大変そうだ。しかも、なんだかそっちは行くことができないような気がする。
その反対側、右側は、なだらかに下がっている地形で、これも草原としか見えない。周囲の状況から、噴水の方に歩いて行くことにした。
小さな噴水で、ちょっと離れた位置から見た時は、周囲に人がいないと思っていたのにも関わらず、噴水に近づくにつれ、さっきまでは見えなかった人が見え始めた。不思議だと思いながらも、噴水前にいる女性に話しかけることにした。
「すみませんが、ここはどこでしょうか?」
と、尋ねると、その女性は
「え?ここは、自然庭園ですけど。」
「自然庭園?ええと、ドアを抜けたら、ここに出たのですが。」
「ああ、あの通路から入ってきたのね。それなら、このまま真っすぐ進んで、あの石垣の反対側に回り込んでみたら、分かるわよ」
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