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閑話 悪いことはバレるもの



 天界でメルランは浮かれていた。

 自分の計画がバッチリ、上手くいったからだ。


 メルランの机には二セットの下着。

 ノブトが誤って飛ばしたクリスとエミリアの物だ。


「お告げ感覚でイメージを飛ばせば、絶対に成功すると思っておったが、こうも上手くいくとは思わんかったわい」


 その日の朝に確認した下着を、そのままノブトの頭にお告げとして流し込む。

 通常は、困っている人間や絶望に落ちてしまった人間を救うための救済システム、お告げを利用した結果だ。


 安易に下界に干渉できない神が、唯一、公然と介入する手段を使っての犯行。

 完璧な計画にメルランは酔っていた。


「唯一のは懸念は、ノブトの力で天界まで物を転移させることができるかどうかじゃったが、なかなかどうしてやるではないか」


 呟きながら、メルランは笑みを浮かべる。

 なかなか自分の本を翻訳しない役立たずと思っていたが、こんなところで役に立とうとは。


 やはり自分の人を見る目は間違っていなかった。

 自分とノブトを褒めつつ、メルランは椅子の背もたれに体重を乗せる。


 あとの問題は、この下着を女神ルシアにバレないように隠すことだけだ。

 発見されたと同時に、下界への介入を疑われてしまう。

 別に神のルールに違反はしていないが、悪質すぎることはメルランも自覚していた。


 さて、どうするか。

 そう思っている、唐突にメルランの部屋の扉が開いた。


 扉の向こうに底冷えのする目をしているルシアがいた。

 そんなルシアを見て、メルランは悟った。

 全部バレていると。


「メルラン様……その机の物はなんです?」

「こ、これか……? これは……儂の翻訳家からの貢ぎ物じゃな」

「わざわざお告げを使って貢ぎ物をさせたのですか?」


 ああ、やっぱりバレてるとメルランは確信した。

 どこから知っているのか。

 メルランは疑問で仕方がなかった。


 しかし、ルシアが事態を察することができたのは偶然だった。

 たまたまノブトのことを見ていたルシアの目の前で、メルランの計画が遂行されて。ノブトがエミリアから折檻を受けた。


 どう見ても不自然な状況にメルランの関与を疑ったルシアは、メルランが証拠を隠す前に、部屋に押し入ることに成功したのだ。


「メルラン様……とりあえず、それは没収です」

「あ、待て! 待ってくれ!」


 ルシアが指を振ると、メルランの机の上にあった下着が消え去る。

 消えた下着を追うようにして、メルランが宙に手を差し出す。しかし、消えた下着を追うことはメルランにも不可能だった。


「な、なんということを……! 男の敵め!」

「どうとでも。女の敵であるメルラン様」


 ルシアは淡々として口調のまま、メルランに右手を向ける。

 メルランは嫌な予感を感じて、椅子から腰を上げるが、遅かった。


「メルラン様……少し反省してください」


 そう言ってルシアの手から閃光が発せられ、それはメルランを飲み込んで、メルランの白い部屋を崩壊させた。


「はぁ……キサラギ・ノブトも気の毒ですね……。こんな人に選ばれたばっかりに」


 ルシアは溜息を吐きつつ、再度、指を振って、クリスとエミリアの部屋に下着を転移させる。

 これで少しは二人の怒りが収まるだろう。


「まったく……少しは成長してくださいね。メルラン様」


 そう言って、ルシアは崩壊したメルランの部屋から姿を消した。


 一方、閃光に飲み込まれて、瓦礫の下敷きとなったメルランはルシアへ恨みを向けていた。


「おのれぇ……ルシアめぇ……。いつか目に物を見せてやるから覚えておれぇ……」


 半泣きのままそんなことを言いつつ、メルランは自分の上に乗っている瓦礫を一つ一つ丁寧に退かしにかかるのだった。

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