恋の糸
俺は、日下部柊季。高校2年。学校では、美術部に所属している。そこには、親友の江崎光希と今年から入ってきた中川結碧と佐藤梨花がいる。そして、俺が絶賛片思い中の同級生、阿片恋乃とその友人、長谷川彩愛と岩谷心音もいる。計7人で活動している。
ある日、放課後、みんなでデッサンをしていた。すると、ドアから
「あのっ。阿片さん、いる?」
と言う声が聞こえた。ドアの方を見るとクラスメートの久保蒼輝がいた。
「あっ、はぁい!」
と阿片は、すぐに久保の方に向かった。そしてドアを閉め、何かはなしている。話の内容を気にしていると、
「久保と阿片、絶対付き合ってるよね~。」
と長谷川が言った。
「え?!そうなんですか?」
と佐藤さんが反応すると
「2人、なんだか、土日はデートしてるらしいし~」
と岩谷が言った。その時、俺は、聞いていないふりをした。それを見た江崎は、
「まあ、噂でしょ?」
と言った。だが、本人が来て、
「付き合ってるよ。久保君と」
と言った。俺は、ショックだった。なぜなら、彼女とは、小3の時から一緒だった。そして、恋心もあった。だが、今それが踏みつぶされた気分だった。
部活終わった後、江崎と俺は、残って片付けをした。俺は、涙をこらえるために、
「阿片のやつ、付き合ってたんだ。全然知らんかったわぁ…。」
と言った。すると江崎は、
「誰もいない。泣いていいぞ。」
と言った。おれは、耐えきれず水道の蛇口を顔に向け、泣いた。片思いしていた自分がバカらしくなって、泣いた。そんな姿を阿片が見ていたなんて知らないまま。
次の日、部活は、なかったが作品を仕上げたくて美術室に行った。江崎は、補習を受けてから来ることになっていた。俺は、必死に作品を作っていると
「なんで、泣いてたの?」
と岩谷の声が聞こえた。
「いやっ。泣いてねーし」
と俺が答えると
「素直になるなら今のうちですよ~」
と岩谷がしつこく言ってきたので
「阿片のこと、小3の時からずっと好きだったんだよ。だけどあいつは、今、幸せそうじゃん。だから、俺みたいなのと付き合わなくて良かったって気持ちと告白できなかった悔しさがあったんだよ。悪いか?」
と俺は、半分怒りながら言った。すると、岩谷が
「そうだったんだ…ごめん。」
と言って帰ろうとした。俺は、彼女を止めて
「絶対阿片には、言うなよ。あいつは、今、久保といて幸せなはずだ。それをいって、邪魔したらいけないから」
と言うと彼女は微笑んで
「言わないよ」
と言って帰った。俺は、一安心して作品にまた没頭すると
「補習おわったー!」
と江崎の声がした。
「なぁ。もういいの?阿片のこと。」
と言った。俺は、
「あいつ、久保が好きだから付き合ってるんだろ?外野は、何もいえないよ」
と笑いながらいった。江崎は、悲しそうに笑い、
「明日、カラオケ行こうぜ」
と言った。きっと彼は、励ましたかったのかもしれない。それくらいいい奴なんだ。
だが、その日の放課後、思わぬことに出くわした。俺が、校舎裏のゴミ箱にゴミを捨てに行こうとしたとき、
「最低よ!アンタ!」
と言う声が聞こえた。聞き覚えがあるので見に行くと
「日下部先輩が悲しんでるのにデート?いくら何でも最低じゃない?聞けば小3まで一緒にいたんでしょ?そのくらいいて、よくもふったよね~」
と言う佐藤さんと中川さんがいた。そして、知らない女子たちが
「先輩だからって容赦しないんで」
と手を上げた瞬間、おれは、
「やめろっ!」
も叫んで阿片を抱き寄せた。
「こいつは、何も悪くねーんだ。俺が悪いんだよ。殴るなら俺を殴れよ!」
と言うと中川さんが
「そんな人、かばう必要なんてないのに…」
と言ってどこかに行った。それをみた後
「大丈夫か?けがは?」
と俺が言うと、
「大丈夫。ありがとう。」
と阿片が言った。だが、おれは、このままいるわけにはいかなかった。
「久保にこんな姿見せたらお前ら別れちゃうだろ。俺、先戻る。歩けるか?」
と阿片に聞くと
「平気。ありがとう。」
と言った。おれは、安心して戻ろうとすると目の前に久保がいた。
「なにやってんの?」
と言われ、おれは、起きたことを説明した。すると久保は俺を一発殴った。
「彩愛を助けていいのは俺だけ。わかったな?」
と久保が言った。だが、おれは、睨みつけ
「こいつ、殴られそうになってたんだぞ?遅かったらこいつの顔に痣ができてたのかもしれないよ?俺、そういうの大嫌いだからさ。大切な人が目の前で殴られるの見ると許せねーんだよ。」
と言った。すると久保は、俺の腹を蹴った。
「だからなんだよ?お前が守っていいことなんてないだろ?」
と久保が言うと、阿片の方を向き、
「行くぞ」
と腕を引っ張ろうとした。だが、阿片は、振りほどいて俺のほうに、きた
(まずい。)
とおれは、思った。そして阿片がしゃがみ込んだ瞬間、阿片の耳元で
「何があってもお前を守る。だけど今は久保のとこにいけ。久保に殴られるぞ。」
と言った。すると阿片は、悲しい顔しながらこっちを見ていた。そして何か言い掛けようとしたとき、
「日下部!大丈夫か?」
と江崎が駆け込んできてくれた。
「大丈夫だよ。擦り傷だから。」
と俺が言ったが
「擦り傷でもばい菌入ったら危ないよ!さぁー保健室に行くぞ」
と江崎におんぶされながら行くことになった。
「下ろせよ!」
と言ったが江崎は、
「ここで下ろしても阿片が心配するだけだよ!」
と言った。おれは、言われるがままおんぶされていた。
夏休みも近づき、いよいよ花火大会の日がきた。
「花火大会、俺、江崎といくわ」
と俺が言うと、
「はいはい。行こうな~」
と言った。すると
「あたしも一緒にいく!」
と阿片の声が聞こえた。一旦沈黙が続いたが
「久保も一緒だよな!」
と俺が言うと
「別れた」
と言った。
「何で?」
と俺が聞くと長谷川が
「それは、花火大会の時のお楽しみ~!」
といった。
ー花火大会ー
おれは、待ち合わせの公園に行った。すると携帯のメールの着信音が聞こえた。内容を見ると江崎がお腹こわして、いけないらしい。
ため息をついていると
「お待たせ」
と浴衣をきた阿片がいた。
「いや。今きたところ。江崎、腹痛で来ないって」
と言うと、阿片がいきなり手を握った。そして、
「ごめん…。あたしが頼んだの。あたし、日下部君のこと、好きだったの。でも、日下部君が違う人と付き合ってるって噂が流れてきて久保と付き合ってたの。だけど、このまえの日下部君みて、自分に、うそつけなくなって…。ごめん。日下部君、好きなんだ。」
と言った。俺は、気持ちを抑えることができず、手を握っていた彼女の手を引っ張って体に抱き寄せた。
「俺も好きなんだ。ずっと前から…」
と俺がきつく抱き寄せると
「さすがに苦しいよ」
と阿片が言った。そして、阿片から離れ、
「ごめん、もう抑えきれない。」
と言い、キスをした。彼女は抵抗することなく応じてくれた。そして、夜空に花火が舞い上がっていた。体から離れてキスをするのをやめると
「あっ!赤い糸が…」
と俺が言って浴衣から出た糸を取り出そうとした。その時
「きっと運命の赤い糸って言えるのかな?」
と阿片が言った。おれは、糸を取ったあと、またキスをした。そして、耳元で
「これから何があっても守るし、もう、離さない」
と言った。
数日後、このことは、有名になり、やがて学校のひと全員俺たちのことが、広まった。その中でも、おれは、阿片といて幸せだ。そして今でもラブラブだ。