入学そして愉快なクラスメート
翌日、言われ通り魔法学園 ソルシエールへと向かい、現在、学園前に居るのだが、女子率が高すぎて、アウェイ感が半端ない。男はほんの少ししか居ない。
とりあえず、職員室へ向かおうと掲示板に貼ってあった地図を確認したが広すぎて職員室の場所が全くわからない。
生徒に聞こうと思ったのだが、殆どの生徒に目を逸らされて話す事なんて出来やしない。
困っていると、いきなり後ろから羽交い締めされて喉元に刀の形をした詠唱具を突き付けられた。
「ここは神聖なるソルシエール学園の敷地だ……部外者が勝手に足を踏み入れて良い土地ではないぞ」
殺気がこもり、ドスの効いたハスキーな声が耳元で警告してきた。
しかし、こちらとしては今日から同じ学び舎で学習する先輩、だと思うが先輩にいきなり刃を突き付けられるのは理不尽だ。
「今日から……」
「喋るな! 口を開くな! 俗物め」
何処の女王様ですか。埒があかない。誰か助けてくれ。
「風紀委員長、そこまでよ」
俺の願いが叶ったのか、大人らしい声がこの辻斬り未遂の女を止めてくれた。
その声を聞いた風紀委員長と呼ばれた女はすぐに俺を離し、その女に謝罪を行った。
「申し訳ありません! 学園長! この者が勝手にソルシエールの神聖な地を穢すものですからつい……」
酷い言われようだ。まあ、しかし、その学園長とやらを見るとこちらに少しお辞儀をすると風紀委員長と呼ばれた女の頭を撫でた。
「ありがとうございます。けど、この方は今日からアナタと同じ学び舎で学業に励む生徒なのですよ」
「なんと! それは誠に申し訳ない事をしたな! 私はソルシエール学園の風紀委員長を務める。ガブリエルだ。よろしく頼む」
ニコっと、笑いかけられた。なるほど、笑えば可愛いじゃないか。
ガブリエルは刀を鞘に収めると頭を下げ何処かに行ってしまった。
学園長の方を見ると意味深にニコニコと笑っていた。
「……アンタが学園長?」
「そうよ。リュツィ・フェール。悪魔の子、厄災の種、忌み子」
「なんだテメェ。不愉快だ」
「まあいいわ、ついてきなさい」
子供の頃に言われていた悪口を言われて少しイラっと来たが抑え学園長について行った。
その道すがら色々と話をしていたが、どうやら学園長は情報収集マニアらしく、学園の生徒全員の何かを知っているらしい。
一番敵に回したくないタイプの人間だな。
執務室に着き、中に入ると既に何人か来ていたらしく、机の上に入学届け的な物が置かれていた。
椅子に座るように促され座ると学園長もテーブルの向こう側の席に座った。
「昨日の試験、見てたけど、アナタは2年から始めなさいな」
「2年から?」
「そう、1年からしてもどうせ、時間の無駄になるだけ。なら、2年から始めた方が効率がいいじゃない? それに2年には問題児ばかりが集う教室があるの。そこに入って欲しいのよね」
「まあ、郷にいっては郷に従え、だよ」
「話のわかる人で良かったわ」
そんなこんなで、入学手続きは10分程度で終わった。しかし、この時、クラスの事はちゃんと話をしておいた方が良かったと後悔する事となってしまった。学園長に案内されてクラスの教室の前に立つと中から怒鳴り声が聞こえてきた。
『てめえふざけんなよ!』
『お前こそふざけんな!』
女と男が怒鳴りあっているのだろうか。
「ここは某極道の娘が教師をやっている的な感じの問題なのかい?」
「違うわよ。ここは、国から問題視されている生徒達で構成、もとい保護している教室よ。力を持ちすぎた子、亡命者の子供とか、黒魔術に手を染めた一族の子孫とかね……まぁでも、いい子達なのよ。それを国は危険分子だって言ってね……! だからここは招かれた者しか入れないのよ」
学園長は下唇を白くなるまで噛み締めていた。
学園長が何故、情報収集しているのか、少しわかった気がする。
学園長が笑顔で教室の扉を開けるとメロンパンが学園長の顔面に直撃した。
「!?……ババ……」
赤い髪の男が何かを言い切る前に学園長は指を鳴らした。すると赤い髪の男が天井に磔にされてしまった。
「あはは! だっせェ! のわぁ!?」
その赤い髪の男の隣で爆笑していた緑の髪の女も同じように磔にされた。
学園長から殺意が湧き出ていた。何も言うまい。
「はーい、今日は転校生が来てまーす」
「転校生? 珍しいなぁ! つか降ろせよババァ!」
赤い髪の男は言ってはいけないだろう言葉を言い学園長の逆鱗に触れたのか。ミシミシという音と同時に頭が天井よりも上に行ってしまった。
「リュツィ・フェールだ。よろしく頼む」
何事もなかったかのようにして俺は教室に入り挨拶をした。なるほど、ヤバそうな奴等ばっかりだった。
「面白い名前だねェ。アタシはアザジエル・O・ブライエン。見てのとおりオーガと人間のハーフだ。得意な属性はあんまないけど、強いていうなら火だな。それとオブライエンって呼んでくれ。アザジエルってのは嫌でね」
黒髪の額に二本の立派な角が生えた女が酒壺をプラーンと揺らしながら自己紹介をしてきた。ハーフ、そう言う者もいるのか。
「そうか。よろしくな。オブライエン」
「私はベイェモンだ」
天井で磔にされている緑の髪の女がニコニコと手を振ってきた。
『ベリオールだ!』
天井の上からたぶん、赤い髪の男が大声で自分の名前だろうか、それを叫んだ。
今日からこの教室で授業を受けるのか、なかなか絶望的なクラスだ。




