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序幕:墓前での誓い

伯爵シリーズの一つです。


また前に出たキャラが名前だけ出て来たりしますので、他の作品も宜しければ読んで下さいっ。

フランスのマルセイユにある共同墓地。


その日は誰かが死んだかのように静寂が支配しており、雨が絶え間なく降り続けていた。


雨が共同墓地に埋められた墓石を容赦なく打ち続ける。


共同墓地には幾つもの墓石が立ち並んでいる。


その多くある墓地の中に立つ墓石の前で一人の女性が立っていた。


目の前には墓石が3つ立っていた。


何の変哲もない上を丸くされた墓石で特に目立つような物は無い。


だが、中心にある墓石にはこう書かれていた。


『ここに安らかに眠る者、我が生涯の中で最高にして最愛の友』


女性の夫であった男の親友であり主だった男が書き記した文字だ。


金髪のロングヘアーを頭の上で纏めていた。


黒い喪服を着て、黒いベールが付いた帽子を被っていた。


年齢は、27、28歳で脂が乗り切った身体をしている。


「今日から貴方を・・・貴方達を忘れるわ」


女性は網のベールが付いた帽子の中から小さな口を開いて、喋り出した。


「貴方と子供たちを忘れるわ。貴方達も私を忘れて。私は・・・もう貴方達が知っている・・・貴方達が愛していた女では・・・アンナではないわ」


とても静かな声で、淡々と言葉を述べる女性。


「私は今日から生まれ変わる。血と狂気を身に宿し、地獄の業火で焼かれる者となるわ」


それが自分に対しての罪滅ぼし。


愛する夫の留守を護れず、愛する子供たちを護れなかった愚かな自分に対しての。


「だから、貴方達は天国で仲良く暮らして。私は一人で地獄へと堕ちるわ」


そして貴方に代わりあの方を護り抜く。


どんな相手からも・・・・・例え、貴方達であろうと。


「今日から私はアンナを捨てる。今日からは・・・・・・・・・・・・」


雨が更に激しさを増し、雷鳴が聞こえてきた。


ピカッ、と光が近くで輝いた。


そのため女性が何を言ったのか聞き取れない。


しかし、唇の動きで確認できた。


今日から私の名は・・・ザミエル。


魔弾の射手として、あの方に敵対する者共を何処までも追い続けて狩り仕留める魔王。


「・・・・・・・・・」


女性は首から一つのペンダントを取り出した。


ロケットだった。


中には夫と子供の写真があった。


「これも必要ないわ。魔王に家族は・・・必要ないから」


無表情にロケットを墓に落とした。


カラン、と乾いた音が雨の中に小さく響く。


ロケットは墓の上に落ちた。


その上に雨がしきりに降り注ぐ。


「それじゃ・・・さようなら」


女性は墓石に背を向けて立ち去った。


その背中は憮然としていたが、とても小さく哀傷を誘う背中であった。


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