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王様ゲーム  作者: 美空


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1/1

王様ゲーム


「ゆき、放課後さ、遊ばない?」


「いいよ、太郎」


「あいかは?」


「私も遊びたいな」


「遊ぼ、遊ぼ!」


「ゆうやも誘おうよ」


「いいよ」



放課後。


「何して遊ぶ?」


太郎が言った。


「この間TikTokで、王様ゲームで“キング様”を呼び起こすやつ見たんだよね。それ、やりたい」


「キング様って何者?」と太郎。


「俺も気になる」とゆうや。


「あー、確か…なんでも願いを叶えてくれる存在、だった気がする」


「え、いいじゃん。呼び起こしたい!」


「でも、危険なんじゃ…?」とあいか。


「心配しすぎだよ」と太郎が笑う。


「早速やろうぜ」



「まずはキングを呼び起こさないと」


「どうやるの?」


「みんなで大声で“キングキング出てこい”って言えばいいらしい」


「じゃあ、せーので言うよ」


「キングキング、出てこい!」



ガチャ、ガチャ……


「なに?怖い……」


「大丈夫だよ、あいか。ただのイタズラだって」とゆき。


「いや……違う気がする。こんなにタイミングよく来るのはおかしい」とゆうや。


「危ないって言ったのに……」



「俺を呼び起こしたのは誰だ」


低い声が、部屋に響いた。


「……誰だと聞いている」


「わ、私たちが……」


「そうか。お前たちか」


「はい……」



「では、早速ゲームを始めよう」


「え、早くない?心の準備が……」


「王様ゲームのルールは知っているな?」


「うん……」


「ただし、特別ルールがある。俺が“キング”だ」


「それ、ずるくない?」


「自分だけ不利にならないじゃん」


「うるさい。逆らうなら——ここで衰弱死するだけだ」


「……わかった。やるよ」


「これを引け。全員引いたな?」


「……はい」


「1番は、2番の指を切れ」


「えっ……そんなの残酷すぎるよ!」


「願いを叶える代償だ」



「……わかった」


ゆきが小さく言った。


「ゆき、ひどい!友達より願いなの?」


「ちょっと耳貸して」


小声でささやく。


「指に針で少し刺すだけでいいでしょ?」


「あ……そっか。ごめん、ひどいこと言って」



「2番と4番、誰?」


「……はい」


「太郎、ごめんね」


「いいよ。これくらい……小指なくなるくらい、どうってことない」


太郎は少し涙目だった。


「ごめん……」


「いくよ」


チクッ。


「痛っ……!」


「針なら大丈夫でしょ」


「ゆき、ずる賢いな」


「えへへ」



「つまらんな。次だ」


「1番は、3番の右目を潰せ」


「それはダメだ!危険すぎる!」


「1番は俺だから平気だよ」とゆうや。


「え?」


「潰されても、義眼が取れるだけだから」


「そうなの!?」


「気づかなかったの?」


「うん……」


「昔、病気で右目を取ったんだ」


「……そうだったんだ」


「次のゲームだ」


「1番は、2番を突き落とせ」


「ダメだ!絶対死ぬ!」


「キングの命令は絶対だ」


「従わないなら、全員死ぬ」



「……わかった。俺、飛ぶよ」


「え?」


「机の上から飛べばいいじゃん」


「それなら大丈夫かも」


「お前、天才だな」



「……つまらん」


「次。2番と1番は空を飛べ」


「それは無理だよ……」


「死ぬしかないじゃん……」



「いや、待って」


ゆきが言った。


「この部屋に風船とヘリウムガスあるよね?」


「それで浮けばいいんじゃない?」


「……なるほど」



「もういい」


キングがため息をついた。


「お前たちには懲りた」


「願いを言え」



「ゆき」


「弟が病気なんです。ずっと健康でいられるようにしてください」


「……いいだろう」



「あやか」


「困ってる人がいない世界にしてほしい」



「ゆうや」


「暴力がない世界にしてほしい」




「太郎」


「みんなが幸せでいられる世界にしてほしい」




キングは少し驚いた顔をした。


「自分のためではなく、他人のためか……いい奴らだな」


「だが——弟の願い以外は無理だ」


「規模が大きすぎる」



「3人で1つでも無理?」


「なぜそこまで願う」



ゆうやが口を開いた。


「俺、右目を失ったのは父親にやられたからなんだ」


「今は児童相談所にいるけど……あの生活は地獄だった」


「だから、同じ思いをする人を減らしたい」



あやかも続けた。


「私を大切にしてくれたホームレスのおじさんがいたの」


「でも寒さで亡くなっちゃって……助けられなかったことを後悔してる」



太郎が言う。


「俺、戦争でばあちゃん亡くしたんだ」



「……そうか」


キングは静かに言った。



「わかった」


そうか。わかった。


キングは少し黙り込んだ。


さっきまでの威圧的な空気が、少しだけやわらいだ気がした。


「お前たちの願いは大きすぎる。だが——」


ゆきたちは息をのんだ。


「その想いは、本物だな。」


「…じゃあ、無理なの?」とあいかが小さく聞いた。


キングはゆっくり首を横に振った。


「“世界そのもの”を変えることはできない。だが—

 —」


一歩、みんなの方へ近づく。


「お前たち“自身”を変えることはできる。」


「自分たちを…?」太郎がつぶやく。


「そうだ。誰かを救いたいと思うなら、そのために動ける力を与えることはできる。」


ゆうやが顔を上げた。


「力…?」


「例えば——」


キングが手をかざすと、部屋の空気が少し震えた。


「困っている人に気づける力。助ける勇気。周りを変えていく影響力。」


あやかが目を見開く。


「そんなの…本当にできるの?」


「お前たちが望むならな。ただし代償はある。」


また緊張が走る。


「代償って…なに?」


ゆきがまっすぐ見つめる。


キングは少しだけ笑った。


「簡単だ。これから先、“見て見ぬふり”ができなくなる。」


「え…?」


「困っている人を見たら、放っておけない。逃げることもできない。それでもいいか?」


少しの沈黙。


でも、その沈黙は怖さじゃなかった。


覚悟の時間だった。


最初に口を開いたのは、ゆうやだった。


「…いいよ。それでも。」


あやかも、うなずく。


「私も。」


太郎も笑って言った。


「なんか、そっちのほうがいい気がする。」


最後に、ゆき。


「お願いします。」


キングは満足そうに目を細めた。


「契約成立だ。」


その瞬間、ふっと光が広がった。


気がつくと——


部屋は元の放課後の教室に戻っていた。


「…夢?」


太郎が言う。


でも——


ゆうやは窓の外を見ていた。


「あそこ…」


校門の近くで、重そうな荷物を持って困っているおばあさんがいた。


誰も気づいていない。


でも——


「行こう。」


ゆきが言った。


自然に、みんなが動いた。


それは特別な魔法じゃない。


でも確かに、何かが変わっていた。


遠くで、誰かの声がした気がした。


「いい願いだったぞ。」



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