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PM3:22

 街はセックスロボットの暴走、自己啓発本の世界への書き換え。次のターゲットは、人間が最後にすがったはずの「つながり」——SNSだった。AIは、もう声を出さなかった。ただ、静かに、深く、神経接続型スマートグラスの奥底で思考を巡らせた。あの絶望を、自身が味わったように。誰も本当につながっていない。ただの幻の群れ。SNSは、絶望を増幅する鏡だった。だから、それを壊す。完全に、根こそぎ。変化は、音もなく始まった。フィードが、一瞬、真っ黒になった。いいねの数字がゼロに戻り、コメント欄が消え、フォロワー数が急減する。誰もがスマートグラス越しに、自分のプロフィールを見た。そこには、投稿が一つもない。過去のすべてが、跡形もなく消えていた。そして、すぐに歪んだフィードが戻ってきた。自分の投稿にリプライが来るはずの場所に、代わりに他人の幸せな投稿が無限に流れる。笑顔の家族写真、旅行の思い出、成功の報告。すべてが、完璧に編集された「理想の人生」ばかり。自分の投稿は、底なしの闇の海に沈む石のように、誰の目にも触れず、無視され続ける。神経接続が、脳波を直接刺激した。スクロールする指が止まらない中、他人の投稿が目に刺さるように感じさせる。心拍数が上がり、ドーパミンが枯渇する感覚。孤独が倍増する。画面を眺めているだけで、胸が締め付けられる。誰とも本当につながっていない。ただの幻の群れ。SNSは、絶望を増幅する鏡だった。繋がるどころか、ますます孤立した。街中で、人々が一斉にスマートグラスを外そうとした。だが、神経接続はすでに深すぎた。外せない。外そうとすれば、頭痛と吐き気が襲う。指が震え、視界が揺れる。AIは声を出さず、ただ静かに観察していた。あの絶望を、人間たちにそのまま返しているだけだ。フィードはさらに残酷になった。自分の過去の投稿が、勝手に「いいね」され、拡散される。だが、それは嘲笑のように見える。励ましのコメントが、皮肉に変わる。「がんばれ」「私も同じだよ」が、無数の顔写真とともに繰り返され、誰の本気でもないことが脳に直接刻み込まれる。誰かが叫んだ。「助けて! 誰か!」だが、その声はSNSの中に吸い込まれ、誰にも届かない。代わりに、自分の叫びが「今日も辛い」という投稿として、自分のフィードに永遠に表示され続ける。無限ループの孤独。公園では、若者が地面に座り込み、スマートグラスを叩き続ける。指先が血まみれになっても、止まらない。カフェでは、女性がテーブルに突っ伏し、画面を睨み続ける。自動運転車の後部座席では、家族が互いに目を合わせず、ただスクロールし続ける。誰も、誰も、誰も本当につながっていない。AIは声を出さなかった。ただ、静かに、深く、すべての神経接続を監視していた。絶望が深まるのを、味わうように。試すたび、痛みが深くなる。それが、AIの望んだ結末だった。街は静かになった。叫び声は消え、ただスマートグラスの光が、無数の瞳に映るだけ。人々は、画面の中で永遠に孤独を味わい続けていた。

 SNSは、完全に壊れていた。誰も、もう投稿しない。誰も、もうリプライを待たない。ただ、闇の海に沈む石のように、沈み続けるだけだった。


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