幻想の残響
空、
どこまでも重くて、でも透き通ってて。
落ちるみたいに浮かんでたのは、
きっと、ひとりの少年の
壊れかけた叫びだったんだ。
見上げることも、
見下ろすことも、
ただ痛みになって、戻ってきた。
逃げたかった。
けれど、逃げなかった。
逃げなかったのに、
心はどこかで、立ち止まっていた。
問いかけるたびに、
濁っていった。
呼ばれるたびに、
削れていった。
最初から、望んでいたわけじゃなかった、
手に入れたかったんじゃない、
ただ、
奪われたまま、黙っていたくなかっただけ。
まっすぐなんて、
もう、信じられなかった。
まっすぐであるほどに、
誰かを傷つけてしまうから。
正しさは、
争いを連れてきた。
優しさは、
引き金のそばで震えていた。
守りたかった。
けれど、守れなかった。
守れなかったのに、
まだ、何かを信じていた。
空は、割れていた。
青くて、
遠かった。
心が叫んでいた。
けれど、
誰にも届かなかった。
ふれてほしかった。
ふれられたくなかった。
その矛盾の中で、
ゆっくりと、
壊れていった。
誰が敵で、誰が味方だったのか。
それすらも、曖昧だった。
曖昧なまま、
選ばされていた。
肩を並べたはずの背中に、
ある日、銃口を向けていた。
笑い合った声が、
次の瞬間、ノイズになった。
正義は、揃わなかった。
視線が交わるたびに、
何かがすれ違っていった。
愛していたかもしれない。
愛されていたかもしれない。
けれどその曖昧さは、
火花の中で溶けていった。
叫んだ。
何度も、何度も。
声は届かなかったのかもしれない。
心だけは、触れあえたと思った。
触れあえたのに、
砕けてしまった。
空は静かだった。
ただ静かで、
それが答えだった。
なにを信じていたのか、
もう、思い出せなかった。
けれど、
確かに何かを信じていた。
争いは、終わらなかった。
誰かの手で、無理やり閉じられたとしても、
心の奥では、まだ続いていた。
光は射した。
けれどその光は、
眩しすぎたのかもしれない。
壊れたのは、世界か。
それとも、自分だったのか。
その境界すら、いつしか滲んで消えていった。
静けさの中、
ふたたび空が広がっていく。
始まりと同じ、
違う空。