散歩と夜桜
あー明日から新年度かー、なんかやる気でねえ。
俺は明日で社会人3年目に突入する一人暮らしの24歳でIT企業に勤める会社員。仕事内容はというと在宅ワークで資料作りやらほぼ雑用の様な業務ばかり。楽だけど大学の同級生と比較すると誰かに言えるような仕事はしていない。
いっその事、転職しようかな。でもやりたいことなんてないしなー、転職活動めんどくさいし、もう今日ほんとやる気でねえ。ゲームもしたくないしもうだめだ、こうしてダメ人間が生まれるんだ。
夕食を食べ終わり片付けも住んだ後、そんなことを考えているうちに23時近くなり、明日も9時前に起きればいいしと思い、外に出て近くの桜を見に行った。
この前買い物でここ通った時に綺麗って思って見つけたんだよなー、夜桜よきよき。
そう思って目当ての場所に行って周辺を歩いていると女性が桜の写真を撮っていることに気づいた。
(あの人も桜見にきたのかなー?)
一瞬女性の方に目をやると視線に気がついたのか女性もこちらに気がつき、目が合ってしまった。俺はすぐに目を逸らした。
(やべ、目が合って、、って泣いてた?いやいやこのままじゃ変質者だ。帰ろ)
俺はすぐに家に戻り、一服してからとこに着いた。
にしても綺麗な人だったな、絵になるというか、って泣いてたのに不謹慎か。寝よ寝よ。
次の日、俺はいつも通りの業務をこなし、定時でパソコンを閉じようとした時、チャットが入り、入社式の飲み会に先輩から誘われた。
俺の家は会社から近いこととタダ飯が食えると思い、参加した。
会場というか店は宴会可能な場所で行う。
(入社式っつっても新卒10人とかだろ?うち小さい会社だし、1年で何人やめんのかねえ。どんなやつがいるんだか)
俺は店に入り予約してある名前を言うと座敷の席に通され中へと入った。既に新卒も先輩たちも揃っており、俺が最後となっていた。
「すみません、遅れましたー」
「ええよええよ、今始まったとこだし、悪いな急に呼んで」
「いえいえ」
「じゃあ改めて新卒の子達は自己紹介をお願い」
(自己紹介なんてやってたのか、新歓かて)
俺はそう思いながら席に座り自己紹介している新卒の子を見て気がついた。
(あれ昨日の、ていうか歳下だったんかい!)
「青葉大学から来ました三井さくらです。出身は長野で、情報系については未経験ですがよろしくお願い致します」
(まさかこんなとこで会うなんてなー)
自己紹介が終わると社長が乾杯の音頭をとり、席が近い人達で話をして、時間が過ぎていった。これでも社会人3年目に突入した俺はコミュ力が鍛え上げられ、初対面相手でも結構喋れるようにもなった。酒の力もあるが。
新卒の子たちは移動しながら色んな人と話し、数時間経って三井さんが移動してきた。
昨日のことが気になったが、最初からそんな話もできないため趣味とか出身地のこととか当たり障りのない会話をして近くの先輩たちがちょうどお手洗いに行ったので、これはいい機会だと思い聞いてみた。
「てかさ、昨日桜みてた?」
「え?はい、見に行ってましたけど、、あ!あの時いた男の人!」
「あーはい、そうだよね変質者みたいだったよね、ごめんね」
「いや、いえ、あははは」
(そりゃ苦笑いになるわな)
「いっこきいていい?」
「はい?はい大丈夫ですけど」
「なんであの時泣いてたの?」
「見えてたんですね、いやまあその社会人やって行けるか不安でとりあえず外に出たら桜が咲いてて綺麗で、なんかこう不安が一気に出たと言いますか」
「なるほどね、新しいことをするときって不安になるわな。大丈夫とは言いきれんけど、三井さんだって一歩踏み出して上京してきてるんだからそれだけで凄いことだと思うよ」
「そうなんですかね」
「初めて何かをするときって誰だって怖さが付き纏うから、それを乗り越えてやってみるっていう勇気があったってことじゃん?本当に強い人は不安いっぱいでも前に進む力がある人だと思うよ」
「なんか、、いいですね。ありがとうございます!」
「いいえー、頑張りな」
「はい!」
それから少し経ち、飲み会はお開きになり、一応明日も仕事のため二次会には行かず、俺は家に帰った。
三井さんも方向が一緒なので途中まで一緒に帰った。帰っている時は、俺も三井さんも頑張って間を空けずに話し続け、なんとか変な空気にならずわかれることができた。
そして家に着いた瞬間冷静になり、飲み会で言ったことが頭を巡った。
あー!なんか酔っ払ってキモイこと言ってたー!新卒の子になにいってんだー!
でも、前に進む力か、、しゃーねえ、転職すっか。
とりあえずやりたいこと見つけんと。
春は出会いと別れの季節なんて言うけど、別れがあって出会いがあるんじゃないかと俺は思う。まあ、どちらが先かなんて人それぞれだけど。ただ、新しいことを始めるのに適した季節なんじゃないかとは思うね。
新生活が始まる人もそうじゃない人も頑張って生きよう。