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ひねくれぼっちにラブコメなんて有り得ない!?  作者: 小鳥遊咲季真
続・ひねくれぼっち06「仕事探し編」
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67 新聞販売店

「俺、新聞配達しようと思う」


「新聞配達?」



 妹との夕食中。卒業したら何するの? と聞かれたので、働くと答えたので、何するの? とまた聞かれたので答えた。



「まだ全然決まってないんだけどな。説明会も面接もしていない。だから、これは俺の第一希望。先生にいくつか候補を出してもらってさ、その中から選んで決めた。理由はいくつがあるけど、本が好きだから新聞とか活字に抵抗がないことと、地域のための仕事になりそうだから。我が家は今のところ誰も読む人いないから新聞取って無いけど、でも販売所は家からそんなに遠くないし、たぶん原付きとかスーパーカブとかの免許を取るんだろうけど、それまでは自転車使えばいいし」


「ふーん、そっか。お兄ちゃん働くんだね。なんか、急に大人? な感じだね」


「当たり前だよ。当たり前のことなんだ。誰しも急に大人になるわけじゃない。なるべくして、そのうちに大人になる」


「また小説?」


「まあな」


 

 ひねくれぼっちっていうライトノベルさ。






 ※ ※ ※







 


 俺はしばらくして、大垣先生とやり取りしながら新聞販売店の店長さんと軽く面接というか、顔合わせをするくらいのことをする日程、段取りをつけた。そしてとある日の放課後に、俺は販売店を訪れた。



 販売店は想像以上に騒がしかった。ガシャガシャという、すごく大きな機械の音が奥の部屋からしていた。後からわかった事だが、それはチラシをセットする機械の音だった。セットとは、これも後からわかった事だが、その日新聞に入れる、挟めて入れる複数のチラシをひとつに束ねると言うか、一枚を帯びにして残りをその帯に挟める作業が必要となる。これを自動化した機械の音が、俺が訪れた際に聞こえていた機械の音というわけだ。



 入り口にはたくさんのスーパーカブやら原付バイクが並んでいた。そして喫煙所が外の隅にあって、社員の方だろうか、煙草を吸っていた。俺は一礼をした。向こうも浅く返してくれた。



「すいませーん、ごめんくださーい」



 扉をカラカラと開けて、中に入ると、そこは広いスペースだった。壁に向けて少し低い作業場が作られていて、その下にチラシだろうか、紙がおいてあった。事務所の入口前には新聞のバックナンバーだろう、ずらりと一ヶ月分、数字と共に並んでいた。



「すいませーん」



 困った。なかなか声が通らない。聞こえていない。呼び出しボタンみたいなのもないし、困った。



「どうかしたのかい」



 男の人に声を掛けられた。先程喫煙所で煙草を吸っていたひとりだ。そう思ったら、少し緊張した。



「あの、啓成中学の九郎九坂と申します。本日は店長さんにお会いするご予定でして、ええと、その」


「ああ、噂の新しい子ね。ちょっと待ってね、……店長ー、店長ー」


「山田さん、どうしたの。店長なら二階よ」


「そうか。いや、中学の子が面接かな? 来てて」


「あら、そうだったの」



 事務所の扉が開く。



「ごめんなさいね、待たせちゃって……ええと」


「九郎九坂二海と申します。本日はよろしくお願いします」


「クロクザカくん、ね。スリッパ、そこの使っていいから」


「はい」



 俺は事務所の中に入った。



 事務所は学校の職員室のように雑多で、でも人数は二人と少なかった。そのうちのひとりの事務職員さんは、今店長さんを呼びに二階へ向かっている。



 俺はひとりで少し立つ事になった。そのままで待っていた。



 待つこと、しばし。



 ドタドタと音をさせて二階から人がやってきた。



「あー、ごめんよ、ごめん。待たせたね、九郎九坂くん」



 さっきの事務職員さんが先に降りてきて、その後ろから少し大柄な、太っていると言うよりは体格のいい、そんな中年男性がニコニコしながらやってきた。



「とんでもないです、本日はよろしくお願いいたします」


「そんなに緊張しなくても大丈夫よ。今日は説明だけだし、ね。じゃあ、用意してあるから、行こうか。二階ね」


「はい」



 俺はその店長さんの後についていくようにして、二階へと登っていった。一階にいた社員さんと、事務職員さんへの再三の挨拶も忘れずに。



 二階にあがると、でかいテーブルのところに通された。座った左側にはでかいモニターが付いている。パワーポイントだろうか。パソコンの画面が見える。



「失礼します」


「はい、お願いします。店長の吉川です。履歴書もらいましたよ、ありがとうございます。九郎九坂二海くん、で良いのかな読み方は」


「はい、大丈夫です」


「今は十五歳か、若いね。うちの職員おじさんばかりだから、ね。良い人ばかりだから、心配はいらないと思うけど。若い子は本当にいないんだ。二十代もいないかな。さっき下にいた山田くん、彼は三十後半で一番若いかもしれない。ははは、まあ、うちの業界通しておじさんおばさんばかりだから、そんなに不安がることも心配することもないからね」


「は、はい」


「あ、そういえば、大垣先生からお話聞いたけど、野球が得意なんだって? うちの地方紙にも載っていたね。すごいじゃないか、大会新記録? ピッチャーか」


「はい。一応僕……私は野球部には入ってなくて、補欠みたいなものなんです。学校の球技大会の時に投げて、その時にスカウトされて。今月末には全国大会に行きます。投げるかは、わからないですけど」


「へえ、全国大会ね。すごいね、じゃあ、中学最後の夏になるわけだ」


「まあ、そうですかね」


「なるほどね。なるほどねー」




 吉川店長は、しばらくにこにこと俺と履歴書を見比べていた。



「高校には行かないのかな、野球続けたりしないかな」


「はい。高校には行きません。私の家庭、少しありまして、現在は父の再婚相手の母親と、その娘、私の妹との三人で暮らしています。父は五年前に亡くなりました。産みの母親も、私が幼い頃に亡くなりました。病気です。今の母親は銀行員として地方銀行に勤めています。妹もいますし、これ以上やりたいことがあるわけでもないのに、ただ惰性で高校に通うことはしたくないんです。あと、私は家族に一生の恩があります。そのためにも働いて、少しでも恩返しをしたいのです」


「そうか。なるほどね、大変だったんだね」


「いえ、それほどでもないです」



 そんな時、そんな会話の時、一人の男性が入ってきた。中年よりもう少し年行ってるかな、そんな貫禄ある男性。おじい様というか、六十五歳くらいのおじい様。


 

 吉川店長はその人に対して言った。



「社長、おかえりなさい」




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