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ひねくれぼっちにラブコメなんて有り得ない!?  作者: 小鳥遊咲季真
続・ひねくれぼっち05「中学軟式野球大会・地方大会編」
64/81

63 投手返し

 中学軟式野球、夏季地方大会の会場、円山球場に俺は居た。



 試合前、キャッチボールなどで体を動かしている選手が多かった。まだ試合までは三時間ある。俺は観戦に来ていた妹が会いたいというので、ベンチの外、バックネット裏で落ち合った。そこには予定外の、恋瀬川と渡良瀬が居た。彼女たちも観戦だろうか。



「なんだ、お前たちも来ていたのか」


「ええ、九郎九坂くんの野球を見に来たのよ」


「ふたみん頑張ってね! 妹ちゃんと一緒に見てるから!」


「お兄ちゃん頑張ってね! 彩芽さんと見てるから!」



「お、おう。まあ、出番があればな」



 俺は補欠の補欠だし。そう揶揄して見せるも、言葉は変わらなかった。まあ、妹に応援されちゃ頑張らない訳にはいかないんだけどな。百倍頑張っちゃうんだけどな。



 俺はベンチに戻った。戻ると部員が何やらニコニコしている。なんだ、なんかあったか?



「九郎九坂、お前モテるんだな」



 国崎が近づいてきて言った。



「何言ってるんだよ、あれはただの知り合いと妹だぞ。カウントに入らないよ」



 ストライクからは外れて全部ボール。スリーボール。危ない危ない、もう少しでフォアボールになってしまうところだったぜ。



「まあ、いいや。キャッチボール、相手してくれ九郎九坂」


「ああ、それくらいなら」



 俺はいつもの、いつかの誕生日祝いに貰ったグローブでボールを受け始めた。





 ※ ※ ※








「プレイボール!」



 試合が始まった。先行は相手、守る後攻はこちら側自分たち。試合は投手戦の様相であった。五回の表までゼロが並ぶ平行線。こちらが守りきったその裏だった。ツーアウトランナー二塁で四番、部長の岡村。



 その初球だった。



 センターへ弾き返したその打球はヒットになり、ランナーが走って、ホームへ。



「セーフ」



 ベンチが湧いた。ランナーである一年生を皆で迎え入れ、ハイタッチの嵐。俺もそれに加わった。



 試合はその一点を争う形となった。打線はヒットが生まれることはあっても、その後が抑えられた。さすが地方大会決勝。投げては、こちらもエースの影山がヒット二本に抑える無失点ピッチング。そしてそれが七回まで続いた。



 七回表。ノーアウトランナー無し。投手影山。その先頭打者であった。


 

 カキーン。



 相手バッターが放ったボールはまっすぐ打たれ、そのままピッチャー返しに。しかもそれは影山の頭の近くに。ボールをショートが捕球。ランナーは一塁でストップ。マウンドには内野手が集まり、コーチもでてきて人だかりになった。影山の安否が心配される。大丈夫か、あいつ。



「九郎九坂、準備しろ」



 監督の一言だった。俺はこんな状況を見て、それに対して反論とか、文句とか言うことはできなかった。



「はい」



 すぐにベンチからグローブを持って立ち上がり、控えの選手とキャッチボールを始める。何球か投げたところで、影山がベンチに戻ってきた。



「大丈夫か、影山」


「かすめただけだ。みんな、大げさだ。大したことない、大丈夫だ。しかし」



 影山は残念そうに、然して力強く言った。



「俺の代わりに抑えてくれ、九郎九坂。俺たちはここで負けるわけにはいかない」



 ベンチを見た。監督の先生も、コーチも控えの選手も、みんな頷いている。俺は影山からボールを受け取った。



「確かに。受け取ったぞ」



 全ての想いを。みんなの気持ちを。全国まで持っていく。そのためのこれまでで、そのためのこれからであるように。



「ピッチャー、変わりまして九郎九坂くん」



 俺はマウンドにあがり、内野手たちと言葉を交わした。頑張れとか、頼むとか、後ろは任せろとかそんな事を。互いに鼓舞して、鼓舞されて。



 さて、最終回点差は一点差。同点のランナーは一塁。抑えとしての、クルーザーとしての度胸と腕が試されるマウンドが始まった。

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