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ひねくれぼっちにラブコメなんて有り得ない!?  作者: 小鳥遊咲季真
続・ひねくれぼっち03「夏祭りデート編」
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54 渡良瀬母親

「あなたがふたみんくんねー、彩芽から噂はいっぱい聞いてですのよ。今準備しますからね、ちょっと待っててねー」



 明るい性格の渡良瀬母親だった。彼女はとても若く見えた。実際渡良瀬のお姉さんかと間違うほど若く見えた。若作りとかではなく、若いのだ。雰囲気というか、その人柄というか。



 俺は渡良瀬の家に来ていた。



 さて、俺がどうして渡良瀬の家にお邪魔しており、渡良瀬の母親の手作りケーキを食べることになったかと言うと、それは六月の頭、初旬のことであった。



「今度の土日、どっちか遊びに来ない?」



 渡良瀬からの提案であった。その場に居たのはいつもの通り、俺と渡良瀬と恋瀬川であった。俺は恋瀬川を誘ったのだと思った。彼女とは小学生の頃からの仲だと聞いているし、休日くらい女の子同士で家に遊びに行くなど、普通のことのように思えたからだ。



 だから俺は、書類整理に精をだして返事をしなかった。まさか自分のことだとは、夢にも思わなかったからである。



「お母さんがね、ケーキを焼くんだって。ケーキって言ってもシフォンケーキみたいなやつ。お父さんは自分の趣味で出掛けているから、お母さんと私の二人で食べても、食べきれないかもしれないからって。どうかな?」


「ええ、構わないわ」


「ほんと! ありがとう。ふたみんは?」


「……は? 俺?」


「そう、ふたみん」


「え、いや、え? それ、俺も誘われていたのか?」


「うん。だから、そう言ってるじゃん」


「俺、男だけど」


「え、逆になんで? 友達じゃん」



 俺たち友達……ではないよな。友人と呼べるほど親しいかというと、そうではないよな。いつかのチョコレートの日に知り合いという関係であることは確認したが、友達ではないのでは……?



「友達かどうかは、さておき。まあ、お呼ばれってことなら断るのも失礼だからな」


「ふたみん、いくの? いかないの?」


「いきます。お願いします」



 というわけで、俺は恋瀬川と渡良瀬の家に遊びに来ていたのであった。誰かともだ……知り合いの家に行くとか初めてのことで、しかもそれが女の子の家だなんて尚更初めてのことである。相手が渡良瀬とはいえ、女の子の家だもの。で、おかあさまが美人で若いのだ。緊張するよ、そりゃ。



「もう少しで焼けると思うから、だからお話聞かせて? ふたみんくん」


「……恋瀬川は、よく来るのか。渡良瀬の家に」


「ええ、友達だから」



 それはまるで、俺は友達じゃないみたいな言い方ですね。まあ、友達じゃないんだけど。



「ふたみんくん、彩芽とはお話するの?」


「ええと……まあ、そうですね。同じクラスですから、少しはするんじゃないですかね」


「そうなの」


「ああ、ええと、……そうだ。この間と言っても二ヶ月も前の四月の事ですが、渡良瀬……彩芽さんからサイン入りユニフォームを貰いましたよ。ありがとうございました」


「プレゼント?」


「うん。ふたみん、四月四日が誕生日だったから、そのお祝いで。ほら、お父さんからもらったやつだったんだけど、私あまり興味ないし。ふたみん野球好きだし」


「ふたみんくん、野球が好きなんですか?」


「え、ええ。まあ、少しは……」


「あら、この間、球技大会の決勝戦で最後の回に投げて、大垣先生を二年連続の優勝に導いた守護神のピッチャーが何を謙遜しているのかしら」



 やめて! やめてくれ。全てを説明するかのごとくセリフに詰め込むな。



「はい、野球が好きです……。あと、読書が趣味です」



 俺は何を自己紹介しているのだ。



「どんな本を読まれるんですか?」


「ええと、江戸川乱歩とか、川端康成とかですかね」


「古いのを読まれるんですね」


「最近のも適当に読みますよ。ミステリーも、ファンタジーも。純文学からライトノベルまで。恋愛系は苦手ですかね、あまり面白いと感じたことがない」


「恋愛とかそれこそ、ラブコメ? というのかしら。漫画とか、そういうのも読まないんですか。恋愛漫画とか」


「そうですね……あまり無いですね。ラブコメとか、アニメや漫画とかで流行ってますけど、でも俺には刺さらないかな。なんていうか、道理がないんですよ」


「道理?」


「ラブコメなんて、男と女が理由もなく好きになっていたりするじゃないですか。登場人物だって言うだけで、好きになっている。それはおかしいんですよ。そこに理由がないんですよ。性格がいいとか、仕草が良いとか、なにか理由があると思うんですよ。単純に見た目だけの面食いだってんなら、まあ、そういう人もいるんでしょうが、それなら可愛ければ誰でも良い、イケメンなら誰でも良いってことになる。その人である理由がない。エピソード地味た理由というか、根拠というか、そういう道理がないと俺は納得できないんですよね」



 ……って、何を長々と話しているんだ俺は。俺の恋愛観など、誰が興味あるんだーっ。




「そっか、頭いいのね。ふたみんくんは」



 気がつくと渡良瀬も、恋瀬川も何やら真剣に考えていた。いや、そんな考え込むようなことではないですよ。適当な世間話よ、世間話。世間ではこんな事を話しているんじゃないでしゅか? 違うのか?



 ピー、ピー、ピー。



「あら、焼けたみたい」


「あ、ママ。手伝うよ」



 こうして渡良瀬親子はキッチンへと消えていった。世間話タイムから解放された俺は、焼かれたケーキがやってくるのを待っていたのであった。



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