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ひねくれぼっちにラブコメなんて有り得ない!?  作者: 小鳥遊咲季真
ひねくれぼっち05「宿泊研修編」
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28 夜景、孤独を行く

 一日目夜。快晴。夜景日和だった。



 俺たちは班散策のときに夕食をレストランで食べ、そしてその足で全学年集合の、山の麓へと向かった。ここからロープウェイで山頂展望台まで登る。ロープウェイは百二十五人が定員。三クラスごとに分かれて乗車。学年は八組までなので、最後は七組と八組の二クラスの乗車となる。このとき、一時貸し切り状態になるが、そこは現地スタッフの方が対応してくれている。一回約三分で到着するのだ。回転効率はそんなに悪くない。



 夜景眺望の時間は四十分。ただ景色を見るだけなのに、そんなに時間いらないだろう、と思っていたが、しかし一組から八組まで全クラス登頂する時間も鑑みると、意外とそこまで時間はないことを知った。まあ、それならそれで、むしろ都合はいい。ターゲットである香取の乗る八組号は一番最後だ。



 一番最後ということは、一番最後に到着した集団を探せば、その中に意中の人を見つけることができるということである。俺は荻野のにもそう伝えていた。それがチャンスになると。もしも、他に同じようなことを考えている女子がいた場合、その場合、それは最初に話せるかどうかが鍵である。そう、俺は説明していた。それは他にもライバルがいるのだということを、彼女にも認識してもらうための言葉だった。



 そして七組、八組の乗るロープウェイのゴンドラが到着した。ぞろぞろとにぎやかにその集団は降りてきて、そして夜景の一番良く見えるスポットを探しに駆けていった。そして、その集団の中からその姿を探そうと、キョロキョロ周囲を探るような女子が出てきた。荻野もひとりで、こっそり探していた。そして彼女たちは困惑した。それは、待てども待てども彼が降りてこないからである。八組の最後の方の集まりにも、彼はいなかった。現れなかった。だから困惑した。そして、急ぎ足で、探し始めるのであった。



「本当にうまくいくとはな……」



 香取は俺の隣で帽子を深くかぶりながら、そう言った。



「まあ、お陰で男二人で絶景を見ることになったけどな」



 俺はそれに対して軽口で答えた。




 種明かしすると、なんてことのないただの誤乗車である。八組の香取は二組の乗るロープウェイに乗ったのだ。帽子を深くかぶるだけで、制服という同じ格好の集団に紛れ、そして俺の側に居ることを彼に課した。俺は集団の中でも端くれのような存在だからな。そんなやつと一緒にいると、たとえ香取の姿がバレても、なんか誰かといる。誰か男子といる、と無名の男子が現れて声を掛けにくくする効果があるのだ。だから山のどこにいても問題はない。こうして夜景がきちんと見えるところにいても、何も問題はなかった。



「あ、おーい!! ふたみーん!」



 ……問題はないはずだった。



「あれ、君が呼ばれているんじゃないのか」


「いや、知らない。違うと思う。俺はふたみんじゃない。二海だ」



 渡良瀬がパタパタとやってきた。



 ……なぜ来た。



「渡良瀬か。こんな人混みで、よく俺がわかったな」


「まあね、友達だし」



 友達? 俺と渡良瀬が? おいおい、冗談はよしてくれよ。正気か?



「こんばんは、九郎九坂くん」



 恋瀬川。お前もいたのか、こんなところに。



「そこにいるのは……香取くん、かしら」 


「や、やあ、こんばんは恋瀬川……さん」



 恋瀬川は普通に挨拶している。しかし、渡良瀬はええーっと言う顔をしている。どうやら彼女の中では絶賛告白の真っ最中のつもりだったらしい。まあ、それもそうだな。今頃恋する乙女たちは必死になってこいつ探しているんだもんな。



「いい夜景だな、恋瀬川」


「あら、本当ね。ひねくれ者のあなたでさえ美しく見えるのだから、これは相当ね」



 相変わらず言いよる。まあ、それくらいないと張り合いがなくて合わないくらいだけど。



「おーい、九郎九坂くーん。いたいた、ごめんね見つけられなくて」



 そこに多々良がやってきた。彼女は俺が呼んでいた。しかし、その呼んだ本人の俺は人混みにまみれて消える……という算段のはずだった。そうすれば、小野の多々良への告白はなくなる。多々良と香取とのそれなりの中の良さは継続される。しかし、俺のことを見つけてしまった。どうしよう。



 渡良瀬はまたもや、ええーっ、ええーっ、と叫びだしそうであった。なぜなら彼女も小野くんから絶賛告白されている最中のはずだと思っていたからである。



「おお、なんだ、全員揃っているじゃないか。どれ、写真を取ってあげよう。誰かカメラかスマホを貸してくれたまえ」



 大垣先生であった。先生はこの五人で記念撮影をしようと、そう言いたいのだろうか。俺は、俺は入らなきゃだめ?



 いつの間にか帽子を取り、カメラ写りがよくなるようにしていた香取に肩を掴まれた。逃げるな、という意味だろうか。渡良瀬がスマホを大垣先生に渡して、何やらシャッターの位置を教えているようだった。少しして、渡良瀬は戻ってきて、しゃがみ込むように座った。恋瀬川が真ん中となってその隣に座り、その恋瀬川隣に俺が座らされた。香取は俺の方を掴んで、その後ろに屈むように立っている。多々良は香取の隣に立った。



「青春だな! ハイ、チーズ!」



 青春にされてたまるかよ。



 俺はそんなことを思いながら、引きつった笑みで写真に写った。

 

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