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ひねくれぼっちにラブコメなんて有り得ない!?  作者: 小鳥遊咲季真
ひねくれぼっち03「学校祭編」
16/81

16 愛と平和

 学祭前日。放課後。



 自主制作映画がいつの間にか完成し、そのメイキングを取りたいとか言い始めたバカのお陰で今、俺は学校の屋上にいた。特別に入る許可を取ったのだ。ちなみにどんな風に映画を作ったのか、どんな映画を作ったのかは、まあ、興味がある人にだけまた別のどこかで話すよ。



「イエーイ。ピース!」



 夕焼けがきれいに傾いていた。どこまでもまぶしくて、どこまでもきれいだと思った。バンプの藤くんもこんな夕日を見て曲を書いたのかもしれないと、邦ロック好きの俺は思った。そんなきれいな景色を背景にクラスメイトが一団となって集まり、写真撮影やら動画撮影やらをしているのを見ていた。もちろん、ガラナ片手に。



「あら、九郎九坂くんじゃない。どうしたの、みんなの輪に入れてもらわないの?」


「……恋瀬川か。俺は孤独を愛する孤高なる存在なんだよ。一人であることを誇りに思っているところなのさ。それよりなんだよ、お前こそなんでここにいるんだ」


「私は先生に頼まれてあなたたちのことを見張りに来たのよ。先生方は忙しいから」


「お前は忙しくないのかよ。前日だろ?」


「ええ。少しなら大丈夫よ。少しだけしたら、戻るから」


「そうか」


「ええ」



 風が吹いた。それはスカートをひらひらさせて、キャーキャー言わせている。……俺は見てないぞ。断じて興味などないし、視界にも入ってない。



「あなたのおかげで上手くいったわ」


「? なにが」



 俺は恋瀬川の言葉を探るように、聞いてみる。



「八組の件よ。あなた、なかなか小悪党っぷりを演じてくれたらしいじゃない。そのせいで敵を前に一致団結した『銀河喫茶八組』は二年生にしてはとてつもないボリュームで、知恵と考えと配慮が行き届いた、いい出し物になっているわ。さすがね」


「それは、八組の連中が頑張ったんだろ。俺は何もしていない」


「あら、またそういうのね。最初のときもそうだった」



 最初。それは、ネイルが校則違反だったときのことか。もうそれすら懐かしく感じるな。



「ふたみーん! なにしてるの? みんなで撮るよ? あ、りうりーだ。! ハロハロ!」



 渡良瀬が集団から駆けてきた。

 


「ハロハロ? なんだそれ」


「ハロー、ハローの略? それより、ほらふたりとも行くよ!」


「わ、私はクラスメイトではないのだけど……」


「いいから、はやく!」



 引っ張られた俺と恋瀬川は二組の集団の正面に連れてこられ、タイマー機能が働いたカメラで写真を取られることになったのだった。






※ ※ ※







 学祭当日。



 俺は地域公開日に、妹と二人で回った。妹には「まだ友達いないの?」って言われたけど、妹より大切な友達なんていないって言ったらなんか納得した。やだ、この娘お兄ちゃんっ娘なんだから。まあ、義妹だけどね。



「映画よかったねー」


「そうか? まあ、茜がそういうなら良かったけど」


「ねぇ、次あそこ行きたい」



 八組。銀河喫茶。店のタイトルどうにかならなかったのかと思ったけど、まあ、本人たちが満足してるならそれはそれでいい気がしてきた。お、俺って意外と寛容的じゃない。心広いわー()



「順番にお並びになってお待ちくださーい」



 秋葉原のメイド喫茶みたいな、そんなフリフリの衣装に身を包んでいる八組が接客した。男子は裏方、女子は接客。適材適所かね。



「すごーい。可愛いですねー! 茜、こういうの憧れちゃいます。お名前なんて言うんですかー?」


「はい、茜ちゃん。私の名前は多々良唯って言います。多い少ないの多いが二つに良い悪いの良いで多々良。唯は唯一の唯一文字。よろしくね」


「はい、兄をよろしくお願いいたします」


「お兄さん?」


「はい、兄はいつも友達がいなくて寂しい人なんです。時々友達になってください」


「あ、あはは。これはセールス上手な妹さんだこと」


「……妹が勝手に済まない。こうは言ってるが、あまり真に受けるな。俺のことは無視してくれて構わないから」


「二名様入りまーす」



 やがて俺たちの番が来て、教室の中に通された。内装はシンプルなゴシック調な装丁で、お金をかけすぎずに、然して手を抜かず丁寧に作られているようだった。細かい所をこだわっているようで、なかなか見事なものであった。この短期間でよく仕上げたものである。誰か詳しいやついたのかな。



「いらっしゃいませ」



 香取香平だった。イケメンで高身長の彼がメイドの格好をしている。



「……笑わないでくれ。似合わないのは承知の上なんだ」


「いや、くく、よく似合ってるぞ。はは、ほんと。お似合い」


「クラスの連中がどうしてもって言うんだよ。ご注文は?」



 イケメンだとそんなこともしないといけないのか。大変だな。あー、イケメンじゃなくてよかったわ、ホント。



「コーヒーで」


「紅茶でお願いします」


「紅茶はアールグレイになります。よろしいですか、お嬢様」


「は、はい」


「……お、おい。俺の妹に色目使うなよ」


「普通の接客ですよ、お兄様」



 ……うへえ。気持ち悪い。




 やがて「インスタントコーヒーです」って皮肉たっぷりに運ばれたモノを飲み干し、妹がゆっくりと多々良や他の女子生徒と話をしているのをなんとなく見やっていた。紅茶も飲み干されると、混雑してきた次の客と入れ替わるように俺たちは出ていった。



「次はステージ見たいな」



 茜がそう言うので、俺たちはそれから体育館の特設ステージへ向かった。体育館の特設ステージでは演芸、主に落語をやっていた。ニ、三席。終わると「茜もできるかな?」と聞くので、「きっと良い茜噺ができるさ」と答えておいた。その後ステージでは有志クラスの代表のダンス発表、地域、生徒含めたカラオケ大会、そして最後には全校生徒を一時集めての生徒会からの話があった。生徒が前の方に整列させられて、地域の方が後ろの方にパイプ椅子にて座らされていた。それは学祭地域公開日のまとめというか、地域への感謝とか、生徒へのねぎらいとかそんなスピーチ。もちろんそれは生徒会長である恋瀬川が行っている。そしてその簡潔で、まとまりのあるスピーチも終わり、そしてその最後であった。彼女はこんなことを言い出した。「今年の学祭テーマは愛と平和です」「そして、新しい日々を作るのは新しい君と僕なのです」



 途端、後ろの幕が降りて無くなり、そこにドラムセットが現れた。スピーチの台はあっという間に片付けられ、そこにはギターアンプと、ベースアンプが現れる。ドラムセットに座るのは……渡良瀬か? ベースは大垣先生? で、ギターボーカルが…………。



 彼女は後ろにかけてあったギターを取り、軽くチューニングしたところ、アンプのスイッチを入れ、ジャーンとひと掻き鳴らした。それは控えめに言って最高だった。



 そしてそのまま演奏を始め、歌い始めた。



 愛と平和!



 悲しみで花が咲くものか!







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