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ひねくれぼっちにラブコメなんて有り得ない!?  作者: 小鳥遊咲季真
ひねくれぼっち03「学校祭編」
12/81

12 ガラナ

「優勝おめでとう、九郎九坂くん」


「ありがとう、ございます」


「これで、野球部の面々も素行を改めて野球の練習により一層励むんじゃないかしら」


「そうだといいですけど」



 俺はドリンクを飲む。



 話が横道にそれるが、実はこの度、学校に自動販売機ができた。このドリンクもそれだ。場所は一階、生徒会室前。昼休みと放課後のみの使用限定とした上で教師、生徒に使用が許可された。これからこの部屋で話をするときにはお茶ではないが、しかしジュースを飲めるようになったというわけだ。俺はさっそくガラナを飲んでいる。これはマイフェイバリットソウルドリンクである。この炭酸ジュースを知らない人は是非調べてくれ。



「大丈夫よ。一般生徒の端くれみたいな、普段はいつも一人で何考えているんだかわからないやつが、球技大会決勝まで一人で豪速球を投げ続けて、さらにその決勝で初球をセンター返しの二点タイムリー。最終回三者三振で締める大活躍だもの。本来は野球部のレギュラーがその活躍の場を得るつもりだったんでしょうけど、あなたみたいな人に急に役を掻っ攫われて面食らったと思うわ。なんだあいつは、って。どう? 野球部に嫌がらせされたり、いじめられてない?」



「いや、それは大丈夫だけど」



 さすがにアイツラもそこまで民度は悪くない。寧ろ俺に対する野球部への入部勧誘が始まってしまって仕方がない。国崎を始め、廊下ですれ違った二年、三年から声を掛けられるように。一年坊主に至っては頭下げて挨拶までしてきたぞ。さすが縦社会。いや、俺はその社会にすら入ってないんだけど。



 もちろん、俺は図書委員と生徒会長の手伝いをしていることを言い訳に全ての勧誘を辞退している。野球部なんか入らないよ、めんどくさい。そんなことしたら一人ぼっちじゃなくなるじゃないか。孤独を愛する自分に反する。今回のことでよくわかった。思い上がるのも、前に出るのも、やはり俺の性分じゃない。ほんと、最初のときに意地でも辞めとくべきだったんじゃないかと思う。自分が揺らぐぐらいなら、な。



「さて、九郎九坂くん。君には次の手伝いをお願いしたいと思うの」



 え? まだなにかやるの。もういいよ、そういうの。



「君は生徒会長室特別代理補佐だからな」



 だからなんなんだよ、その肩書。



「今回はこれよ。学校祭」



 学校祭? ああ、来月の七月にやる。六月の球技大会の次は、学校祭か。そしてその後には夏休み前の期末テストが控えている。生徒にとっては楽しみなのやら憂鬱なのやらってところか。俺は学校祭楽しみじゃないから、その後の憂鬱のほうが大きいけど。



「七月後半から八月が夏休み。それが明けたら、二年生は九月末に一泊二日の宿泊研修よ。三年生のときに行く修学旅行の予行みたいなものね」



 ほーん、予定ぎっしりなのな。案外。



「まずは一ヶ月後の学校祭。設営とか、準備とか、色々人では足りないの。図書委員の方も忙しいだろうけど、こっちにも顔を出して欲しいのよ」


「ああ、わかったよ。たまにな」


「ええ、お願い」




 俺は缶を飲み干して立ち上がり、それを自販機横の空き缶のゴミ箱へ捨てるべく、生徒会長室を後にしたのだった。







 ※ ※ ※







 それから数日、俺は図書準備室にいた。今日はここで一人だ。久々な気がする。こうして本と向き合い、蔵書整理をするのは、なんか懐かしい感じがした。これが俺の日常。平常運転。心の平穏そのもの。背表紙にてタイトルと作者を確認し、本棚から該当を探し差し込む。簡易棚に雑作に並べられた本を取り出し、本棚に並べていく。その量は膨大で一日では終わらなくて、しかも分厚い専門書が多い。宇宙とか、生物とか、進化論とか、ニュートリノがどうとか、古代文明がどうとか、十一次元のスケールでネコミミは量子力学とか。



 

 紙の本、書籍というのは、心を整理するものだと思う。作者によって選ばれ、綴られた言葉の文字列は、その余白、行間さえ相まって総合的美をクリエイトする。表紙の装丁、裏表紙の装丁、背表紙の安心感と存在感。無駄なものはない。その重量感も、手に収まる存在感も、全ては言葉によって心を整理していくための総合芸術。総合美術。最高の、孤独のためのインテリアである。



 コンコン。



 ノックがされた。この図書準備室の扉が。ノックの相手を間違えてはいないだろうか。そのノックの相手は残念ながら俺である。図書委員に用事なら、表の図書室の中にある受付カウンターに立っているやつに話せばいい。では、やはり間違いか。



 コンコン、コン。



「はい」



 思わず返事をしてしまっていた。あまり大きな声ではないが、しかし扉の向こうに伝わる程度には聞こえる声で。



「し、しつれいしまぁーす」



 そこに現れたのは………女子で、ええと、同じクラスの、渡良瀬…………



「あ、ふたみん。いたいた、りうりーが呼んでるよ」



 りうりー?



「そう、生徒会長」



 りう…………凛雨。彼女の名前はそんななまえだったな、確か。それと



「ほら、はやくいこう? ふたみん」



 俺の名前は二海だ。渡良瀬彩芽。


 


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