読書をするに最適な場所
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
お昼代の鎬を削って、買ったのが喫茶店です。
という訳で、喫茶店も書生も出ます。
『もう飽きたよ!! ヽ(`Д´)ノ』
まぁまぁ、そう言わず、好きになってやって下さい。
とある日の午前、とある男女が逢い引きを行っていた。女は紅茶と聖マルコを、男は珈琲とレアチーズを、それぞれ静かに口にする。昭和味溢れるこの純喫茶に、BGMは何一つ掛かっていない。けれども換気扇のぶぅぅん……という蝿の唸り声と、それが突然に変化したきゅぅぅん甲高い叫び声だけが、雰囲気を醸し出す。まるで古めかしい小説に迷い込んだ様に。そしてそれを助長するかの様に、男は時代錯誤の書生姿だった。
女は三角型のマルコの先を静かに口にしながら、文庫の頁を捲る彼に一つの質問を問い掛ける。
「ねぇ貴方、読書をするに最適な場所を存じ上げない?」
「此処こそが最上だと思うのだが、君は違うのかい?」
男は目元を隠す様に覆い隠された長い前髪と、黒眼鏡の内側から静かに女を覗きに掛かる。女はその問い掛けに、口を真一文字に引き結んで困惑した。
確かに此処は物静かで、誰かの声が反響することは無い。換気扇の厳しい唸り声も、物語の中に突き落とすには最適だ。けれどもだからこそ、あえて身を引くという事も考えられるのである。
「雰囲気が良いと、それどころでは無くなるのです」
此処から漂う古めかしい匂いも、斑に色付いた壁の染みも、スカートから除く裸電球も、延々と怒り続ける換気扇も、何もかも、何もかもが女を夢中にさせた。それこそ目前にある文字の世界から、顔を無理矢理に背けさせてしまう程に。
此処ではない別の場所、博物館を訪れた時もそうだった。古美術から漂う甘い香りも、全てを遮断する大理石の壁も、眠りへ誘う優しい橙も、人々の反響する声や足音さえも、何もかも、何もかも、ただ女の意識を逸らすには十分過ぎた。
「ふむ。難儀だね。僕ぁ、この場所ならば読み物が捗って仕方がない。特に夢Qと大乱歩。んっふふ……」
犬歯を剥き出して、男の揶揄う様な物言いに、女は僅かに頭を垂れた。その反応を見て、男は読書をそっちのけで、女の様子を観察する。口許はくの字にしなっていた。
「まぁ別に、特段困る事でも無かろうよ。本がなくとも世界に没入出来る。支払った対価以上の物を得ることが出来る。それは誇っていい感性だよ。お嬢さん」
その言葉に救われた様に女は前の聖マルコに口を付ける。甘く、苦く、時折酸っぱい。ただただ最上品のチョコレート菓子だけが、彼女にたしかなものだと告げている。その複雑さは前に座る男の様に。
オマケ 質感責めしてみよう!!
「あの……何故その様なお姿で?」
時代錯誤な書生服に同色の和傘。都会の中でも本の街故目立たないが、此処から一歩でも出れば人目を引くその姿。
「? 普通では無いのかな? 少し前のトレンドなだけで」
「目を隠す必要はあるのでしょうか?」
髪は白く、豊かだった。それが前も後ろも長いと来た。その上鼻上にちょんまり乗った黒眼鏡。
「お天道さんの光が眩しくってねぇ。裸眼で練り歩くと目が痛くて仕方がないんだ。剣山で柔な目を突かれてご覧よ。ぼくのようになるから」
「『お嬢さん』と呼ばれるには、些か歳が過ぎているのですが」
「ん? 僕ぁ、女人の呼び方で好きな物が二つほどあってね。それが『お嬢さん』と『御夫人』なんだ。好きな物には一等好きな呼び名で呼ぶのが相応しいだろう?」
編集が此奴に怒ってない事を祈ります。
この書生、一見すると掴み所のない二枚目ですが、割と誰に対しても三枚目。いじられキャラ。ネタ枠とも。
紳士、という言葉からは外れますが、気遣いは出来ます。
好きな人は幾人かいるかも知れないけど、付き合う事はしなさそう。まぁ、悲しませるのがオチなんで。
肝っ玉母ちゃんとして編集がいるんで大丈夫。
『逢い引き』なんて使ってますが、ただ単に男女が会ってるだけで、デートではありません。
念願叶って、とある喫茶店でドグラ・マグラ読んだんですよ。
開始三頁で続かなくなりました。
『約1000円払って、この空気吸わなきゃ勿体なくない? 本読んでる場合じゃねぇ!!』
という私の心境。
純喫茶と博物館と神社の匂いが好きです。
寧ろ匂いを吸いに来てます。
鼻の穴を開いて吸う方の匂いと、雰囲気の二つです。
匂いフェチなのかも知れない。




