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69話目 黒くなるお兄様 偽物の右子side

「あなた、そこで何をしているの?」


努めて右子様らしく偉そうに振る舞う私。


私は顔の包帯を交換するため、定期的に保健室へ来ている。ずっと同じものをしていると気持ち悪くなるのだ。

すると、保健室の様子を覗いている輩がいる。


「いない、ここにもいない·····」


アイン王子だ。


「覗きなんてはしたなくってよ。おどきなさい」


彼をどかせて私も中を覗くと、思わずびっくりするぐらいの美少女が保険医と話をしてる。

あれは·······最近話題の娘よね。

ミーシャとかいう····

私だってまあ美少女なのに、包帯ぐるぐる巻きなので勝負できないのが悔しいわ!


私はアイン王子を白けた目で見ると、彼は青くなって震えている。

私は威嚇するために(かつ)ぐ大きなものを探したけれど廊下には何もない。後ろの近衛騎士に何か持ってきてと頼もうと振り返ると、


「どうしたの?右子様」

今日とて用務員姿のお兄様が通りがかった。

お兄様は以前から栗毛に染めていた髪を、黒く戻した。

どういった心境の変化だろうか?

もちろん黒髪も、何着ても、めちゃめちゃ素敵だけれども!



ある日突然徳川公爵家に養子に来てお兄様になった『保』という名の美しい青年。

彼はとてもお父様に気に入られている。一度は三日締伯爵家に養子を奪われたけれど、三日締家へ数回にわたり討ち入りを仕掛けて数年、ようやく奪い返したのよね。

聞けば、お兄様はとても高貴な方のお血筋らしい。

公爵家の父が言うのだから、どこのお血筋かは聞かなくても分かるというもの。戦をしかけてまで取り戻すのも頷ける。


実は徳川公爵家は、これまでほとんど帝族の血を受け入れていない。


徳川公爵家の穂波家は、先の時代のニホン国を統括した大将軍様の系統だ。

国を二分する先の大戦では、その徳川家の宗家と分家の大半が帝族に真っ向から対立して、北海道から東北と北関東一帯へ独立国を建国した。現在はアサヒ国という。

我が穂波家はその分家の中でも何度も将軍を輩出した、宗家には限りなく近い有力な家だったが、帝には反逆せずと唯一ニホン国へ残り、徳川宗家と真っ向から対立して戦った。

そして当時の帝に『反旗を翻さずの徳川家』として『徳川』の名を得て公爵家として厚遇された。


しかし、婚姻という点では、戦後の一度のみ宮女がお輿入れしたに限られる。

血統という点で格下に見られているのだろうと父は悔しそうに言っていた。

将軍家は元々貴族の中でも帝に近い血統ではなかったし、武力でのし上がった家だからか、今だに貴族連中から野蛮にみられ浮いている節がある。

武力派の家風が帝族や高位貴族に忌み嫌われ、婚姻候補から外されているという噂が巷ではまことしやかに流れている。


だから、どんな事情があるにせよ、非常に帝に近い(もう父は帝子だと断言してる)お兄様が養子として預けられた時は公爵家は歓喜したそうだ。

だけど、不思議と気づけば三日締伯爵家に奪われていた。

そこで父は国内各地で国境警備に当たっている兵団を一部呼び寄せて、伯爵家領地をぐるりと囲って脅したらしい。

帝の、徳川公爵家を立てるお取りなしもあってようやくお兄様を取り戻したというわけだ。


帝子の血統が入るなんて前代未聞の吉事だ。父は娘である私とお兄様を結婚させ、穂波家の血筋を高貴な血で生まれ変わらせる野望を抱いている。


···········お兄様は結婚なんて、いつも我関せずのお顔で興味なさそうだったけど。

右子様が、本当に突然、失踪されて、私に替え玉の話を持って来てから、お兄様は変わってしまわれた。

お兄様は右子様の専属執事をした経験があったから、そちらのつてから来た話だということだ。

母の実家のある大阪市で過ごしていた私は、急遽東京へ呼び戻された。


父は戸籍上は違うとはいえ、実の兄妹であろう右子様の降嫁は考えていなかったが、私がこのまま一生右子様の替え玉となるというなら婚姻を認めると仰った。

でも、右子様が戻られる可能性もある。


お兄様は言う。


「その時はその時じゃん?」


嫌よ、その時だってどの時だって、和珠奈(わずな)と結婚していただきます!

私の名前は和珠奈(わずな)

お兄様は誰にも渡すつもりはない。




「で?投げるやつって、これでいい?」


お兄様は折り畳みの椅子を持ってきてくれた。流石に合理的なお兄様らしいチョイスだ。

いや、もうアイン王子逃げちゃってるんですけど。

私は近衛騎士に常に威嚇できる大型の物を持ち歩くように命じる。

だって、武器よりいいでしょう?

ただ脅すだけだもの。大きい物を持ち上げると皆が呆気に取られて戦意を喪失して逃げていくのが面白くって。ふふっ

本当に戦うつもりは無いわよ。

私は平和な女ですもの。


お兄様がアイン王子は敵だっていうから、ガンを飛ばしたり、威嚇したりしてるけど、彼って本っ当に弱そう!


「あ」


保健室から出てきたのはシン•シウというコーリア国人のアイン王子のお付きだ。

何でお付きが保健室から出てきてアイン王子がこそこそ覗いてるのよ?


途端にお兄様の空気がかたくなる。


お兄様は常にコーリア国に警戒心を抱いてるみたいなのよね。

まあ、国境警備の任を担ってる徳川公爵家だから外国勢力に警戒を払うのは当然なんだけれど。

かつて国内を将軍として統括していた徳川家の分家、穂波家に従う地方貴族が多い為、帝から直接賜った重大な責務だ。


シン•シウの方だっていつも私をめちゃめちゃ睨んでくる。

私のアイン王子に対する態度が悪いからよね。分かるけど。

この前は初っ端から日本刀翳して脅したことを思い出す。

でも、お兄様がそのくらいやらないとと言うから仕方ないのよ?アイン王子は帝族の姫との婚約を狙っているらしいから、意思表示はしっかりしないとね。



シン•シウはまた保健室に戻ってしまった。

そして例の少女を背を隠すように?出てきたが、

少女はシン•シウを押して、キッと、険しい顔で私達を睨んで?

二人で走って行ってしまった。


なあっっ!?

生意気な娘ね···········!?

て、帝女に対しての態度がなってない!


その少女は、兎にも角にも校内で話題の少女。

どうやら平民出身らしい。

シン•シウは仲が良かったのね?

そういえば、アイン王子も彼女とお昼を食べていると噂になっていたわ。

少女の名前は外国人っぽい名前だと思ったし、もしかしてコーリア国人かしら?


「お兄様·········?」


見ればお兄様はとっても不思議なお顔!?

そして、片手でお顔を覆った。


「凄いね、新しいフェーズだ········」


意味不明な事を仰るやら何やら。


あーあ、

あの娘って私は嫌いだわ。


読んでいただきありがとうございます!

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