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64話目 バッドエンドを目指そう 右子side

現在過去の文章を見直す作業をちまちまやっております。

「彼のプロポーズ、女性への挨拶みたいなものなんだって。だから気にしないでね」


私は以前にアインが言っていたことなので、一応知らせておいた。


「あらまあ!フフフ」

麻亜沙さんは全く動じてないし軽く流しているから心配無いだろう。


アイン王子の顔はまた青く戻っていた。


「そうだった、俺が誰か帝女か宮女を攻略しないと、お助けキャラはヒロインにならないんだった·······」

ブツブツ言っている。


「アイン、ここは確かにあの『滅亡帝女』の世界に似ているけど全く同じになるとは限らないんじゃないか?」

敦人が言った。


「『滅亡帝女』?って何?」


「前世のゲームの略称だよ。そのゲームの世界にこの世界が似てるんだ」


『日本滅亡〜亡国の帝女と王国の聖王子〜』と敦人は用意したメモに書き記す。


「そうなんだ!?確かにゲームの世界に転生ってそういう話、前世ではいっぱいあったよね」

私はつい声が弾んでしまった。いよいよ異世界転生っぽいなと思う。


「ああ、問題はそのゲームが『糞ゲー』ってことなんだが」

敦人が憎々しげにつぶやく。


「ク、クソゲー······?」

そんな、クソゲーって。まさか自分が転生したのが。


「そうだ、まさか自分が転生したのが、糞のような世界だって言われたらどう思う?」


「どう、その、クソ······なの?」


「この国が滅ぶ。戦争でも、天変地異でも」


「ヤ、ヤダ!」


「まず隣国のコーリア国と戦争になる。これはニホン国はかなりの確率で負ける。理由はこのゲームをつくったのが、前世でコーリア国の元になるK国の人間らしいからだ」


そんな········


「というか、このゲーム自体がニホン国を滅ぼす事を目的に作られたゲームだと言っていい」


「嘘でしょう······」


それって、絶望では。皆に動揺が走る。


「いや、救いはある」


敦人の真剣な声に注目が集まる。


「このゲームは様々な分岐がある。

ニホン国が滅びるのがトゥルーエンド。滅びないのがバッドエンドだ」


「!じゃあ······」


「そう、俺たちが目指すべきはバッドエンド、だよな」


皆、頷いた。アイン王子もしっかり頷く。


「さすがクソゲーだよな·····コーリア国人の俺でもあのトゥルーエンドはないと思うよ」

アイン王子は心底呆れたといったように話す。



「ここまで話したけど、全てがゲーム通りに進んでるわけじゃないんだ」

敦人が言う。


「どんなストーリーなの?」


「まずアイン王子がニホン国の高学年へ留学してくることから始まる」


アイン王子は確かに本当は16歳だけれど、今は記憶を無くしていて、見た目も12歳とゲームより若い。確かに既にストーリーと違う。


「そして、アイン王子は右子と婚約者だ。しかし、ここではそんな事実はない」


アイン王子も頷く。


「そして、王子は本来のヒロインである、登紅子か留美子を攻略する。その間、嫉妬した婚約者の右子がヒロインへ虐めや嫌がらせをする」


「えっ、それ?」


「確かに、悪役帝女だったね」


何それ、めちゃめちゃ強そうな響き。

私、婚約者の相手のヒロインに嫉妬して虐めるんだ〜ヘェ〜!


「そこ!そこらへんから出てくるんだ!第4のヒロインが!」


「第4のヒロイン?いたっけ?そもそもこのゲーム、俺は一通りしかやってないから、分岐はほとんど知らないんだ」

敦人が無情に答える。


「!隠れキャラなんだよ!お助けキャラがヒロインになるの!」


「あ〜、確かにお助けキャラはいたかなぁ。

不思議と色々都合よくお膳立てしてくれる奴ね。

うん、なぜか美少女なビジュアルだったのはそういうわけか」


敦人が思い出してアイン王子は嬉しそうだ。よっぽどそのヒロインさんが『推し』だったのね。

麻亜沙さんは、これまでずっとにこにこ話を聞いてくれている。



「で、ニホン国を滅亡へ導くためには仲間を増やして色々やるんだけど。僕だって別にニホン国を滅亡させたいわけじゃない」

アイン王子が神妙に言って、続ける。


「もしかして、ストーリーがこんなに違っちゃったのは、一年前に僕が記憶を失って前世の記憶の方を思い出したせいのような気がするんだ」


「一年前·····確かにあのままいってたら婚約者になってたわね」

私が独り言のように言うと、アイン王子も敦人もギョッとした。

あっ私が右子だって二人は知らないんだった······


でも、必要な情報なのでミーシャとして遠くから目撃したことにして、一年前の半蔵門外での教会で起きた話をする。保くんについては帝族の遠縁の子息ということで一応、名前は伏せた。


「一年前にそんなことが······」

敦人はすごく動揺している。そうだよね、登紅子お姉様に関係する事だもんね。


「黙っててごめんなさい」


「えっ、じゃあ一年前、僕ミーシャさんに見られてたの?僕は婚約者も登紅子ルートも失敗してたってこと?」

アイン王子もショックを受けている。


「ということは、後はアイン王子は留美子様を攻略するストーリーという事ですか?」

突然、麻亜沙さんが話に入ってきた。


「いやいや、バッドエンドを目指すのよね·······上手くいっていいの?」

「好きな女の為に他の女を攻略するなんて、不毛だよな·····」

私も敦人も混乱した。何だかややこしいことになっている。


コホン、と敦人が会話を纏める。

「だからさ、結局はストーリーが大幅に変わってきてるってこと。一番平和なバッドエンドを目指すにはそれでいいと思うんだ」


皆、頷いた。


とりあえず、ゲームの分岐のあれこれをアイン王子にノートに書き出してもらう。

彼は本当に何回もゲームをやったみたいで幾つかの分岐を知っていた。


(麻亜沙さんの攻略法を探すためにここまでこのゲームを何回も········)

例えK国の人でもこの穏やかでないゲームを、一人の女性を攻略する可能性を探るために何回もやった人は少ないと思う。


「それって愛よね·····」


愛の力がこの国を救ってくれるかもしれない。


私はこの国が好きかどうか分からないけれど、

ここには大切な人達がいっぱいいる。

私にできる事は、何でもしたいと思った。


読んでいただきありがとうございます。

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