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58話目 彼の制服、私の制服 右子side

「どうやって貴族か平民か見分けてるのかだって?」


ガタイのいい男の子は麦本くんいう名前。思い切って彼に聞いてみた。

彼は驚いた顔をしたけど、すぐに嘲った表情に変わり言った。


「お前、バカだなぁ!?

そんなことも知らないでここの学生になったのか?そんな基本的なことも知らないんじゃ苦労するぞ·····

仕方ないな、教えてやらないこともないぞ!」


彼が言うには、貴族と平民では制服の生地が違うのだ。

「厚いか薄いか、だな」


なるほど。

私もそれは気づいていたけれど、彼はもっと詳しく教えてくれた。

どうやら貴族ご用達の布地屋が制服用に適した丈夫な布地を買い占めているらしい。

平民がどんなにお金を出しても売らないのだそうだ。

この時代、洋装に相応しい布地は争奪戦なのだ。


彼は特に分厚い生地の制服を着ているので、2割ぐらい増しに太く見えてると思う。

実際のスタイルは太っているというより体格がいいという感じなのに、実に勿体ない。

女の子はもっと顕著だ。

分厚い生地の制服を着て2割増しの体格に見えるのに、なおかつボリュームのあるヒラヒラフワフワペチコートをスカートの下に履いているみたいなのだ。


どうりでスカートの輪郭が鹿鳴館っぽいな〜っと思っていたけど、それは正しかったのだ。

中世貴族っぽいドレスの輪郭を出すにはペチコートは不可欠だと思う。

でもとっても動きにくいし、ちょっと太って見えるのは前世有りの私から見れば、········かなり野暮ったい。


つまり、こういう厚い布地で着ぶくれして暑そうにしている子は漏れなく貴族の子女というわけだ。


私はスラッと見える方が嬉しいので今の薄い生地でいいけれど、このままでは貧弱に見えるのかもしれない。

この世界は価値観が違うみたいだ。

この世界にはまだココ・シャネルみたいなファッションの革命家がいないのかもしれない。


そこで麦本くんが私に言った。


「どうだ?教えてやったんだから、お前、今日から俺の下僕になれ!」


気軽に明るく言ってくれる麦本くんは、

なるほど、彼は子爵家の息子だそうだ。商売に手を出して成功しているお家らしく彼は羽振りが良さそうだ。

貴族には逆らえないので仕方ない。

それに貴重なことを教えて貰ったのは確かなのでウィンウィンかとも思う。

(私の)気が済むまで下僕になってやろうと思う。


私はニッコリと笑った。


「私、子爵家の方とお友達になったのは初めてです!」


麦本くんは見ると真っ赤になっていた。


「げ、下僕だって!

でもまあ、そうだな。子爵家は平民ごときが話せる相手じゃないからな」


とても彼も嬉しそうなのだった。




先日、教室の照明が異常に明るくなったので、学校側は今日これから電気の点検の業者を入れるそうだ。


まあ私のせいなので故障ではないのだけど、私の正体は明かせないので、それは黙っておく。

電気点検は、半日も時間がかかるそうだ。それまで各自自習と言うことになった。

大半が図書室へ向かう。

そこで配られた課題をやるつもりなのだ。


私が図書室へ着いて端の方の席につくと、麦本くんは向かいの席にどっかと腰を降ろす。その隣に麦本くんの友達が座る。


えっとこれね·······小学6年のプリントってずいぶん簡単だわ·············


「産業関係の本ってどの棚ですか?」


私は常駐している図書室司書さんに聞きに行った。


「えっ!?」


麦本くんが素っ頓狂な声を上げる。


「?」


「おっお前、ちゃんとやらなきゃダメなんだぞ!何、本を取りに行こうとしてるんだ!?」


麦本くんは席を立って私に駆け寄り、騒ぐ。


「?もう終わったのですが?」


「はあ!?そんな訳、そんなら次のプリントがあるだろ?」


「10枚でしょ、全部やりましてよ」


私はプリントをびらっと麦本くんに見せた。

麦本くんはびっくりして、わなわなと私のプリントを見つめて震えている。

小学校6年生のプリントを難しく感じる大人はあまりいない。しかも前世よりだいぶ易しい内容だ。

前世感覚では私が凄いわけでも無いので、もし早かったとしても、自慢する気になれないし········


そんな困惑と気遣う気持ちが綯い交ぜになって表情に出ていたのかもしれない。

包帯が無いと気持ちが伝わってしまいすぎるのも問題だわ。


「ばっばかにすんなよ!!平民が!!」


あら?私ったら嘲りの顔でもしていたのかしら?


「········別にバカになんてしていませんよ。

·········どうぞ、もーっと良くご覧になりますか?」


そう言ったら、麦本くんはちょっと考えて私のプリントを急いで写し出した。

10枚全部写したら、


「よし!お〜わり!サンキューな!

お礼に校内案内してやるよ!」


彼は貸し借りがきちんとした、礼儀正しい少年だった。


彼のお友達が私のプリントを写してるのを待つことはなく、廊下へ引っ張られて歩かされる。

どこに行きたいかと聞かれて、


「図書室」


「ははっバカだなぁ〜今行ってただろう」


私は本を読みたかったんだけど?でも校内見学も悪くないわねと思い直す。


「面白いところ。あります?」


前世で小学校と言えば、面白い場所は思いつかない。


「········あるよ」


麦本くんはニヤッと悪い顔で笑った。


読んでいただきありがとうございます!

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