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51話目 学校へ通うこと 右子side

根津生先生、久しぶりに出てきました。

私は姿見の前でくるりと身を翻した。

前世で言えばセーラー服のような制服に身を包んでいる。


「あの、」

「ミーシャ様!お似合いです!」


窓から外を見ると、庭には敦人が立っていて、その前の木が一本だけ燃え盛っている。異様な光景だ。


「全く·······!金原宮の夫人の屋敷だったとは!なんて危ない真似をしてたんだっっ!」


バシューン!!

外で爆発が起きる。


「だっ大丈夫だ·······っ他には燃え広がらないように·····制御できてるっっ」


学ラン姿の敦人が苦しげに叫んでいるのが聞える。汗が滝のように吹き出している。

庭で他に被害が無さそうなのを見れば、敦人はかなり細やかに『病の力』を操るようになったみたいだ。


家の中では明燈(あけび)夫人と根津生先生がニコニコ私の制服姿をずっと褒め称えてくれていた。

夫人は庭の珍事には目もくれていない。


窓を見れば、燃えていた木は粉々に崩れ去っていた。

敦人はまだ青ざめて呻いている。

ストレスを感じて当然かもしれない。

敦人が逃げているのは警察と、それを統率している金原公爵からなのだ。


でも夫人は公爵と仲違いしているらしいし、大丈夫だと思う。


「すみません。制服まで用意していただいて」


「いいのです。何よりミーシャ様の為ですもの。光栄です。

入学おめでとうございますわ!」


夫人達には私がミーシャと身を偽っている事は話してある。『病の力』でお願いしたらあっさり理解してくれた。なのでそれ以後はミーシャとして扱ってくれている。

夫人は華も盛りの完璧な美女で、かつて公爵を虜にしただけはある。その笑顔は見るものを魅了して惹き込まれそうだ。

私はぼうっと見つめる。



「ミーシャ様、本当にお久しぶりでございます。お元気そうで安堵いたしました」


「金原宮先生········」


次に続いたのは精悍な姿の凛々しい青年、前任家庭教師の金原宮 根津生先生だった。


「根津生、とお呼び下さい。もう貴女の教師ではないのですから」


「いいえ、根津生先生。あなたは私の先生ですわ。先生は平民の生活の事を色々教えて下さいました。

先生がいなくなって、どれだけ落胆したか·····」


私は思いの丈を伝える。当時の気持ちが蘇ってくる。


「ああ!私もです!

実はミーシャ様に庶民の生活を体験していただくためにこの館も用意したのですよ?館と言うには粗末な家ですがね。というわけで、ここはミーシャ様に使っていただきたいのです」


「は!?この館をですか?」


「ええ、ここは母の生家ではありません。母の知り合いからお値打ちに譲ってもらった家なのです」


この家は一般庶民の中でも十分裕福な大きさだと思う。それを他人の為に別宅として用意できるなんて。


「母は平民とはいえ豪商の娘でして、慎ましく生活するにはお金に困っていないのです。遠慮なく、この家は好きにお使い下さい」


外から戻って来た敦人が信じられない物を見る目で根津生先生を見ているのを感じる。


「おっお金持ちなんですね·······」


それしか言えなかった私だが、先生は満足そうに笑った。


「それで、アイン王子の手配で敦人が帝国学校に通うことになった件ですが、本当に私も良いのでしょうか?」


「もちろんです。母の親戚の養女のミーシャということで入学手続きはもう済ませてあります」


「ミーシャまで学校に行く必要ないのに·····」


敦人は不満のようだ。


「平民として学校に通えるなんて最高よ!前世を思い出すわ!」


私の声は弾む。


「俺は寮に入ることになる。アイン王子の側近ということにするらしい。前世の記憶でコーリア語も流暢に話せるしな」


「敦人は警察に追われているし、コーリア籍を貰ってアイン王子の所にいれば安心だね。

アイン王子、どうして誘ってくれたのかな?」


「王子も今世の記憶を失って色々不便らしい。前世の話は周囲に理解を得られないから、記憶を持つ俺が近くにいると証人変わりに便利ってことかもな。相談相手になれって言われてるよ」


「前世の話なんてそうそう信じてらえないものね」


私はそう言いつつ、前世の話をしても、私の無茶な夢を話しても、手放しで受け入れてくれる根津生先生を改めて不思議に思った。


先生を見ると、にっこり優雅に笑うのだった。


「そうそう、明日は私も帝国学校に行きますよ。私はあの学校の教師なのです」


「えっ·······そうなんですか?」


それならどのみち『先生』ではないか。さっきの呼び捨てでってやり取りは、何?


「はあ!?お前金原公爵家の力を使ったな?

やはり公爵家と切れていないこいつは危険だ!!

ミーシャも寮に入るように要求する!」


「ふっ、敦人殿下。我が家はミーシャ様の親戚という体でのすで、実質保護者ですよ?

保護者の意見は何より優先されます。寮なんて危険な所にやれるわけがないでしょう?」


「はあああ〜!?」


あれれ、保護者ってことになるの?

明燈夫人が?それとも根津生先生?

私の名字って金原宮だったりしないよね?


私、平民になれるのよね??


「ミーシャ!こいつ明らかにおかしいだろ!?

どんな知り合いなんだ!!」


事態が変な方へ転がってはいないかと、ようやく疑い始めた私と敦人だった。


読んでいただきありがとうございます。

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