48話目 アイン王子再び 右子side
悪人らしいガラの悪そうな御仁がずらりと並ぶ。
「おうおう、ふざけたマネしてくれるじゃねえか!」
これだけ派手に破壊されたら文句も言いたくなるだろうと思いつつ、立ち上がる。うっかり逃げ遅れた私達は絶体絶命だった。
でもここは反政府組織、あれ?反社会組織だっけ??
悪者なので態度は緩めないで強気でいこうと拳を握り、腹から声を出す。
「あーんあん?
あんたらこそ、うちの義弟を誑かしてどういうつもりよ?責任取れんの、あーん?」
「はっあああ!?なんだこの生意気なねーちゃんは!!
キラキラしちゃって
·········へっ可愛いじゃねーか」
私は巨体のリーダー格っぽい男に腕を捕まれる。
「離してよっ!!」
「··········と思ったけどそうでもないし、離すとするか!!」
「「「!?」」」
そうでもないって、何て失礼な奴だろう。
私の『病の力』で命令しても、本心からくる失礼な一言はなかなか制限できない。
「いやいや、アニキ!?諦めないで下さいよ!?
こいつら二人共ピカピカにきれいじゃないですか!きっと金持ちの坊ちゃん嬢ちゃんで、毎日風呂に入ってるんですよ!!
身代金がっぽりふんだくれるんじゃないんですか!それとも売り払ってもいい値になりますぜっ!」
今度は痩せた服も体も汚い男が、私の頭と敦人の頭を両手で掴んで下にがくんと振り下ろす。
私達のおでこは、モルタルが剥がれ砂埃の舞う床に叩きつけられた。
商品にするんじゃないの〜!?
「おいおい、傷をつけるなよ。男の方は、俺等のお得意様のご子息様なんだってよ·······まあ、この部屋をこんなにしてくれた礼は親御さんから返してもらわねぇといけねえがな」
「じゃあ、このキラキラの女の方はしがらみが無えってんで·······」
男達は下卑た笑いを浮かべる。
「はーあ、うん、やっぱり爆発だよね」
私は隣の義弟の一言にこそ肝を冷やすことになる。
敦人はもう一つダイナマイトを懐に持っていたのだ。
敦人はダイナマイトを高く掲げる。
「や、やめて········!うそつき········!」
さっき、点火も、投げたりもしないって言ったではないか。
「姉さんは、甘っちょろいから、まったく·················ごめんね?」
敦人が悲しげに呟き、振りかぶる。
あっはっはっはっはっ、ははははは···············
そこへ高らかな笑い声が響いた。
怪しげな笑い声はこれでもかと続き、
次第に空気が渦巻いた様な感覚を受ける。
すると部屋の景色は全て消え去り、シネマスコープ館も渦巻いて何処かへ吸い込まれ、
何も無くなってしまった。
天井が無くなると、空の青さがズドンと落ちてくる妙な感覚が襲い、立ち眩みがした。
「何?これ··········」
建物が無くなり、其処の区画だけポッカリと空き地になり、そこに私達も、悪者も呆けて立ちすくんでいる。
繁華街から少し外れた場所のようだけれど、時折道行く人達の異様なものを見る目が突き刺さる。
そして、私達の立ち並ぶど真ん中に堂々たるや、登場したのは、
気位の高そうな美しい少年だった。
「やあ、シネマは楽しんでくれましたか?」
少年は自信満々に言う。
「『ガリガリ先生の〜』のシネマは、最後に大どんでん返しがある作品です。
こんな風に今迄の価値観を崩されるのはどうですか?
僕には快感ですらあります············人生は幻さ」
少年はふっと自嘲の笑みをもらし、美しい茶髪をかき上げた。
誰?こいつ·········
「これ、敦人の友達でしょう」
「はあっ!?ち、違う!!」
敦人が慌てて答える。
「絶対友達でしょう。オーラが似ているもん」
ダイナマイトを持つ少年と幾度も茶髪をかき上げる少年は、顔を見合わせて顔を顰め合った。
「ははっ、心を刳るような事を言う美しいお嬢さん。僕たちは初対面ですよ?」
「そっそうだ!そうだ!」
敦人があからさまに安堵した顔をして乗っかる。
それぞれが失礼の応酬だった。
少年は突然、私の手を取って甲へ口づけた。
「初めまして美しい方。僕と結婚してくださいますか?
私の名は アイン•リー と申します。
コーリア国の第二王子です」
········私は何処かで聞いたような自己紹介だな、
と思ったのだった。
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