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44話目 爆発を科学する 敦人side

敦人は毒舌·····

俺は一年前の夢を見ていた。


一年前、あの樅の木の下でミーシャらしき少女に出会った。

その時は互いに名乗り合うこともなかった。

それから権野宮邸で火事があって二人で駆けつけた。


俺は一年前は貧弱で能力が低い出来損ないのガキだった。

おまけに『超常の病』を制御できなくて寝込んでばかりいた。

あの日も平民と結婚すると言い張る登紅子姉上と口喧嘩して外へ飛び出したものの、途中で高熱が出てしまいあの樅の木の下で休んでいたのだ。


ミーシャはあの時俺を庇って背負ってくれた。

あんなに華奢なのに·····今でも信じられない思いだ。


彼女はあんなに美しく幻想的で泡沫(うたかた)の夢のように儚げな容姿なのに性格は芯がしっかりしている。実は勝ち気なのかもしれない。

だからこそ危険を呼び寄せることもあるだろう、彼女の身を守れるようアミュレットを用意しようと思った。




それなのに、

苦心して用意した十字架のネックレスのプレゼントは、いつの間にか手元から忽然と無くなってしまった。


たぶん最近頻繁に座敷牢へ来るサンタ聖教会の神父たちが盗っていったのだろう。

誇らしげに聖職者とのたまう奴等の顔は、目は虚ろで焦点が合わなく顔色が総じて悪い。

どいつもこいつも信者の財産を付け狙うようなこそ泥紛いの輩ばかりだ。

俺は前世でも、施設から引き取られた家族によって新興宗教に手を染めさせられていたから事情は分かる。どこも似たりよったりだ。

今世でもこの類の奴等と付き合わなくてはいけないとは、心底吐き気がする。


十字架のネックレスは自ら設計図をひいてまで、神父達の伝手で彫金師へ発注させたのに。

ああ、その時から神父の奴等は狙っていたのだろう。

何せあの十字架はローズクオーツを材料にしていて結構高価なものだ。

もっと高価な石でも良かったけど、前世のクリスマスで姉さんへのプレゼントに用意して渡せなかったものを模して贈りたかった。

そこへ『病の力』を念入りに込め守護力を強化した。

この方法で俺の火の力を、品物の持ち者が自分の意思で好きに使えるようになる。


これは夢の中でよく出会う黒髪の男に教えてもらった方法だ。



とはいえ代わりの物を用意しないといけない。

何か、他にミーシャを守護してくれるアミュレットは無いだろうか?

俺は部屋の隅に置いていた粗末な木箱を開けた。卵型のものがびっしりと整列して入っている。

俺は徐ろに卵型のものを手に取り粗がないかチェックする。

これはサンタ聖教会の復活祭というイベントで使うイースターエッグ。カラフルな装飾の上の釉薬にニスが塗ってありピカピカしてとても派手で綺麗だ。


もちろん中部には爆発するよう小さな火薬と俺の火の力を込めてある。

火薬を入れたので付与する火の力は少なくてすむし、かなり軽量で気軽に持ち運びできる。物が卵なので安価で量産しやすいのも利点だ。


他にも着火しやすい繊維を外国から取り寄せて制作したイコン(聖像画)なんてのがある。

特に激しく燃える毛織物を使っている。


どれも火の力を込め、激しく燃える物質に火薬付きの使用だけど、連続して爆発するのは無理だし、やっぱりミーシャに渡すなら10回は連射爆撃可能なあの『十端十字架』が安心なのだけどな。



座敷牢に外部から入れるのは、専属医師と罪人の信仰する宗教の聖職者に限られる。

権野宮家はサンタ聖教会を信仰している為、父上の手配でそこの神父達は自由に出入りしている。

帝族は貴族より法の掟に縛られないので宗教も融通がきく。


聖職者がフリーパス状態なのは、自らの行いを反省するには神の存在が必要だろうという前向きな理由らしい。


俺は胡散臭いサンタ聖教会なんてまっぴら信じていないが、父がこの機にと俺に布教しようとしているのだろう。

俺もずっと暇なので、仕方なく話を聞くふりをする。

神父らは俺が必要な生活用品や火薬なんてアウトな物まで融通してくれるので便利だった。

そして、彼らが入信を勧める為に山ほど置いていく聖品を利用して武器などを作れないかと思いたったのは、自分でもナイスアイデアだった。


俺はやってやる。

やってやれないことは、ない。





「イースターエッグと言うんだ。綺麗で可愛いだろう」


ミーシャが座敷牢に来たので卵を渡す。


「わ、わあ〜ほんとうですね♪キ•レ•イ♪」


目がキラキラ輝いて、まあ、そっち(ミーシャ)の方が綺麗だ。



「で、どのくらいいる?」


俺は箱いっぱいのイースターエッグを見せる。


「え、どのくらいって?」



「ああ、ここはもうじき戦場になる。多い方がいいだろう」


「はあ!?」


この卵は君の身を守るアミュレットだと説明したら彼女はみるみる顔が青ざめた。


「や、やだ········!」


彼女は思った通りに察しが良かった。


読んでいただきありがとうございます!

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