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37話目 (一年前) 忘れられた帝子(1) 右子side

保くんが自力で逃れ、槇田くんと教会の外で待機していた他の近衛兵も加わり、いよいよ刀を交えたアイン王子とその護衛達との殺陣が始まってしまった。


キンッキンッ キインッッ


「右子!!光を照らせっっ!!!」


私は意味が分からず保くんに聞き返した。


「ひ、光を照らす?」


私はといえば、『病の力』で応戦するつもりで手を突き出してをわしゃわしゃと構えたところだった。

いわゆるコチョコチョ攻撃を仕掛けるポーズだ。


「手で触って操ろうかと·······」


「そんな奴等に触れる必要はない!!というか、近づくな!拐かされるから!

遠くからでも光れば目眩ましぐらいにはなるだろう!」


え、ええ?

私ってどうやって光るの??

いつもは勝手に光るけど、光ろうと思って光ったことはない。

全く役立たずな私は、刃が煌めく度に激しくなる戦闘の烈しさに目を瞑った。

ケガ人も出ている。

目を背きたい残酷なシーンだ。


怖い!


そして思わず、手を合わせて神様に祈ろうと思ったけれど、前世の神様は軒並みこの世界にはいない事を思い出す。




「おっっ·······お父さん~ーーー!」


こんな時に頭に浮かぶのは父だった。


私の父は神話の神の末裔で非常に強い『超常の病』を持つ。今だに帝である父を現人神と呼んで拝んでいる人々もいる。


だから、他の知らない神よりよっぽど助けてくれそうに思えたのだ。


グスッ


「···········ここで父を呼ぶなんて、意外だった」


保くんが心底呆れた様に言う。


「どうしてよ!私、まだ子供だしっ、ヒック」


私はいつの間にかグチャグチャに泣いていた。

前世で父も母もいなかったせいか私は今の父を頼りにしているのかもしれない。


なんかもう、私のせいでこの状況なんだよね?

知らない人と婚約なんてヤダし、国家紛争ももちろん勘弁して欲しい。



「···········サインなんかして、ごめんなさぃぃ〜」


「えっ········うそ、泣いてる?

ねぇ、ここに兄がいるんだからさ。言う事聞いてくれれば怖いことないよ。大丈夫だから、ね?」


急に優しそうに態度を変えて頭を撫ぜてきた保くんは、

何故か、父である帝にそっくりだった。


「えっ、····保くん?」


意地悪そうに笑う顔は、随分馴染みがあるような不思議な気分だ。


兄?

保くんが兄?


いや門番でしょ·········??

あれ、··········以前は他の役職だったような········??

色々な保くんのイメージが頭に流れ込んでくる。




私は頭を振った。

それより、今は

そう、誓約書を奪って逃げないと!


私は少しだけ元気が蘇っていた。



ふと、私の胸元が光っているのを感じる。

服の中を覗くと、十字架のネックレスが首にかかっていた。


「あっ?これ!!敦忠にクリスマスの夢で貰った·········!」


美しく白いローズクオーツの十字架のネックレスだ。

夢の中で貰ったものがなぜ今ここにあるんだろう?

いや、さっきまで無かったはず。


しかしそれは、みるみるうちに形を変えていった。


「それは!!十端十字架!!!」


保くんが顔を引き攣らせる。


何故かアイン王子も戦闘を止め、戦闘を避けて蹲っていたニコライ神父も顔を上げ二人とも食い入るように見ている。


「あれ、形が変わった······?何この変な形の十字架?やっぱり夢で敦忠に貰ったやつじゃない??」


それは普通の十字架より棒が増えていった。

数えると十本の棒が突き出している。



それは、見る見るうちに輝き出した。

私は顔から遠ざけて高くかざす。



「まっ眩しーー」



バァン!!!


ーーーーーっっ爆発した。


と思ったら、敵の真中で小さな爆発が起きる。

こちらとしてはとても都合の良い場所にだ。

敵は不意の攻撃に慌てている。



不思議に思った私は、もう一度翳して敵の方へ振り下ろしてみた。



ババァンッ!!!!


今度はアイン王子のいる方で爆発は起きた。



保くんは驚愕する。


「ハァァァ!?それ何だよ?」


思わぬ破壊力に私はびっくりして足がガクガクなった。


「あ、だ、誰かに貰ったような貰わなかったような?」


こっ怖い怖い怖い!

爆発するなんて!?

これを胸の所に入れてたのが何より怖い。


既に、まるで爆発した事なんて無かったように平然とその十字架は手の中に残っていた。

煙が少し出ている。


見ると十本はあった棒が2本減って8本になっている。


「まさか········撃った数の分、棒が減ったの?」


「ーーーこれは兵器だな。で? 誰に貰ったって?」



辛うじて爆発から逸れ放心しているアイン王子そっちのけに、保くんは私の頭を掴んで聞いてきた。

保くんの声は静かだけれど、あからさまに怒気を含んでいた。


いくら彼に叱られ慣れている私でも、生きた心地がしなかった。


読んでいただきありがとうございます

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