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198話目 ゆらゆらゾンビと死んだふりの私 右子side

「ああっっ!」


「!?」


叫び声がして見れば、アイン王子が何かと宙で格闘している。

ハチの巣の前でハチたちに襲われ応戦するクマのような構図になっている。


よく見るとそれはハチではなくて、妖精たちだった。

アイン王子はうっかりズタ袋を開けて妖精たちを逃してしまったみたい。それって自業自得かも。


「触らないで!」


「嫌い!!」


アイン王子は妖精にそう言われたと思ったら、


バタンッ!!

パッタリ倒れて動かなくなってしまった!?


私は信じられないものを見たと思った。

さっきは妖精たちに対してあんなに優勢だったのに、どうしたの?


そういえば、

そもそも彼はどうして私に惚れ薬なんて飲ませたんだろう?

麻亜沙さんの意識を表出させるために、私を制御して操り人形にしようと呪をかけた··········?


神である彼のやることは、昔からいつも計り知れない。

けれど、そうであるなら申し訳ない気もする。


私は、アイン王子を助けに行こうと思ったけれど、

アラディア様が凄い勢いで私に近づいてきて、進行を塞がれてしまった。



「ホ〜ホッホッ!薬を持ってきたわね!

良くやったわアライグマもどき!」


先ほどは弱ってる彼女にこそ何か薬をと思ったぐらいなのに、勘違い?

アラディア様はすっかり復活していた。

気持ちの上下の落差が激し過ぎる。


「さあ!ぐいっといきましょう!さあ!さあ!」


アラディア様は、まるで飲み会のようなすごい圧なのだ。

これを飲むのはアイン王子に飲まされた惚れ薬を解呪するためなんだから············


私は、そのペットボトル飲料を飲み始めた。


ゴクリゴクリ、ゴクリゴクリ············


味は微妙

うっすら甘くて人工甘味料を思い出させる。


高揚したアラディア様の顔がよぎる。


「いいわよーーー!飲み干して!」


ペットボトルは500mlサイズ。

思えば、私は前世ではこの量を一気に飲み干した事はなかった。普通に飲み切れない。


「·················うえ」


半分ぐらいで一口も飲めなくなってしまった。


「ちょ、ちょっと一休み··········」


『おい!魔女の女の子、無理すんなよ!そんだけ飲みゃいいんじゃないか?』

ラクーンが庇ってくれる。


「まあぁ、全部飲まなきゃダメよ!?」

アラディア様が眉尻を釣り上げた。




そ、そういえば、アイン王子はどうしているだろう?

さっき、倒れていたわよね?


すると、アイン王子が倒れてしまったところから、こちらへ妖精が一人、一直線に走って向かってくる姿がある。


「見つけた、現代の右子っ!」


ピョーンと私の顔めがけて飛んできた。

右の頬に抱きついたかと思うと、右目を覗き込んできた。


「あなたが現代の右子ね!!

覚悟しなさい!師匠とのこの最悪な記憶·············!

············同期してやる!!!


あれ······?」


と首を傾げると、左の頬に移ってきた。くすぐったい!


「同期しないね?」


そう左目を覗き込んで言ったので、私はその妖精を手に置いて、まじまじと見つめた。

この子には羽がない。

それはおやゆび姫のような···········右子だった。


「あっ全体を見るの!?····················あっ、そうだ!まだ経月にお別れを、············#%ワヰウヱヲ」


そう言うと、小さな右子はすっと消えてしまった。


えっ、これは同期!?

こんなに小さな同期ってあるの?


『ああっっ!!!』


タヌキのラクーンが騒いでいる。


『右月〜〜〜っっ!!!消えちまった!!!』




ユラリ········


「右子様············同期したね············?」


「ア、アイン王子!?」


立ち上がったアイン王子は顔色が良くない、体調がとても悪そうだ。

さっき倒れたのは妖精たちに攻撃されたからじゃなくて、もしかして体調不良?


「アイン王子、具合が悪いの?

もしかしてこの“右子の夢の世界”の影響で·······」


妖精たちもこの世界の空気が悪いと言っていた。

さっきまではアラディア様も息切れが凄かったのだ。


「··········僕を心配してくれるの?

右月と同期して、僕が嫌いになってない············?」


アイン王子は疑り深く聞いてくる。

え、右月? 右月って前世の··········私よね?



ユラリ·········


「現代の右子ぉーー、ま、まだ半分も残ってるのよぉぉーーー!」


見ると、アラディア様もよろよろ私に近づいてきている。

それはまるでお婆さんのような動きだった。

アラディア様も、空はしゃぎしていただけでやっぱり体調不良だったのだろう。



二人はゾンビのように揺れながら、私に近寄って来る。


「僕を·······嫌いになったんなら········教えて·········」


「もっと薬を·········飲みなさい·······よぉ········」


ユラリ·······!ユラリ········!



「ああっ!」

私は分けが分からない恐怖で、

ラクーンのもふもふにしがみついた。


「ああっ!?」

頭が割れるように痛い!

そしてその後、私は強烈な眠気に襲われた。

私は彼らに背を向けて、地面に臥した。



私は固く目を瞑った。


「右子ぉ〜」

「右子様······」


彼らはまだユラユラ揺れているの?



私は死んだふりをすることにした。


そしてそのまま、

深く眠ってしまった·········


読んでいただきありがとうございます!

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