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173話目 目が覚めたら戦争 右子side

もっと新聞でも読んでおけば良かったかな。

もしかしたら私が寝ている3週間で北の地での戦局が大きく変わったのかもしれない。


「麻亜沙さんのお仕事は、陣内にいて右子様のお世話をすることです。

ほとんどの指示は右子様つきの近衛騎士が出しますので、よく聞いて下さいね」


「は、はい」


戦争が嫌でも、今更どうもできないわよね·········この国の行く末はもちろん心配だし。

ここは微力ながら手伝わないと。


麻亜沙は元々は帝女つきの八咫烏なんだから、眠りこけていようと引きずってでも連れてこられるのは当然なのかもしれない。

いくら本人が転職希望していても、非常時にはそんなの関係ないのだ。


奏史様の表情は青白く固い。

普段の彼では有り得ないくらい迷いがある声色が感じ取れる。


「魔法が使える右子様が戦士になることは決定していたのですが、まさか帝女に身の回りを世話する者をつけないわけにもいきません。

しかし、戦場に行ってもいいという侍女はいませんでした。

そこに、元八咫烏(やたがらす)だったあなたに白羽の矢が立ったというわけです」


北への侵攻の総大将だと聞いていたけれど、全てが奏史様の思い通りというわけではないのかもしれない。

何せ、帝女である右子は彼の婚約者なのだ、一応。


右子が戦場に参加すること、どう思ってるのかな······?

私は気になる。


そういえばフェイクと言っていた右子との婚約は成立してるみたいなんだよね。いつか破棄するつもりなのだろうか。


それにしても、いくら帝女が『病の力』を使えるからって、戦争に引っ張り出されるなんて······

·······ん、魔法?


「右子様は魔法が使えるんですか!?」


「はい。『病の力』は使わず、今は専ら魔法をお使いになります。その力は巨大です」


「魔法!」


魔法なんて随分昔に消滅したと歴史で習ったのに。

私の中には魔法使いのようなハイスペックな人が入っているらしい。

私の中の人、すごい。


それに、ここにいるってことはその人も戦士になることに納得してるってことよね?


このタイミングで私の身体に乗り移ったのも、

この国を神が救おうとしてくれてる、

まさに救世主ってやつかもしれないわね?


私はとことん他力本願だった。



奏史様は、徐ろに私の手を握った。

そして私を落ち着かせるように、私の頭を優しく撫ぜる。


「あなたが諍いや暴力が嫌いなのは存じております。


8名の近衛騎士に守らせて、なるべく戦場には近づかないようにしますので·············どうか、お許しください」


私は驚いて奏史様を見上げた。

たかたが侍女に帝女の近衛騎士をつけると言う意味?


奏史様は、ずっと昔から私を知っているかのような懐かしい眼差しで、今までで一番優しい表情をしていた。


それは、

私を戦場へ無理矢理連れて行く顔では到底なくて、

私はすっかり毒気を抜かれてしまい

コクンと素直に頷いた。


奏史様ってやっぱりかっこいいよね···········



野原のような開けた場所にさしかかると、

隊列は分かれて車を停めて休憩をとることになった。

車外に出ると、口論している声が聞こえる。

槙田くんと誰か男性だった。


「あ、槙田くんその人·······」


残りの7名の近衛騎士が私を守るよう取り巻いた。

槙田くんに連れて来られたのは、


「あ、やっぱり敦人!?」


聞き慣れた声だった。


「!麻亜沙さん!?」


敦人は大きく溜息をついた。

「はあぁぁ〜っ、良かった、目が覚めたんだね······」


「あれ、学校は!?」


敦人は信じられないという顔をした。


「こんな時に学校なんて。 俺はアインに補償するプロジェクトの為に帝妃に学校に放り込まれただけだから。

麻亜沙さんがいないならアインは企画を認めないだろうし。

学校は辞めてもいいんだ」


「あ、アイン王子は大丈夫?」


「大丈夫って、何が?」


「何ていうか·······あの········」


敦人は眉をひそめた。

「俺が出発した時は寝てたよ?

麻亜沙さんが寝始めた同じ日からずっと寝続けているんだ」


「!」

私は言語化できない思いをアイン王子に抱いていた。

だって、この長い長い夢の中でずっとアイン王子の夢を見ていたような気がするのだ。

だからどうというわけではないけれど、アイン王子は強力な幻術を使うし、私の長い眠りに関係している気がするのだ。

そして3週間も寝たきりだったのに身体の不調が何も無いのもアイン王子の力のおかげのような気がする。


もしかして、···········アイン王子は幻術だけじゃなくて魔法も使えるのかもしれない。


「敦人······様はなぜここに?志願兵にしては年齢が足りないですよね?」


敦人は決まり悪そうに視線をずらした。


「兵士にはなれないから、この隊では奏史のコネで御用聞きで従軍してるんだ。


··········俺は君を追ってきたんだよ。

眠っているのに、戦争に連れて行かれるなんて可哀想で·········

俺は『帝女の戦争利用』が会議で決定してからも止めたんだけど、李鳥宮なんて頑として聞く耳もってくれなくて········」


ん?

奏史様、さっきは仕方なく連れてきたように言ってたのに·······


「李鳥宮には戦争なんて関係ないよ。

アインが君に近づくのを凄く嫌がっていたから。

アインと君が同じように3週間も眠り続けてるのも怪しいと思っていたんだ。

だからアインが寝ている隙に無理に一緒に連れてきたんだと思う」


「え」


「奏史を見ていたら、ようやく分かったよ···········

ごめん鈍くて。


君は右子だね」


見ると、

敦人も懐かしい眼差しで私を見ていた。


読んでいただきありがとうございます!

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