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169話目 魔法は有効活用できるのか 根津生side

金原宮 根津生先生 前回登場 魔法の古道具提供は

『149話目 私はこんなにも嫌われている』

です。

どんっっ


学長代理だという数鳥さんが水の入ったコップを勢いよくテーブルに置いた。


「どうぞ?」


人払いをして欲しいとは頼んだが、一人だけいた侍女の少女をまるで私から隠すようにさっさと学食へお使いに行かせてしまった。

水を出すくらいなら、お茶の用意ぐらいさせてから退出させればよかったではないか。

人をばい菌のように扱うのは止めて欲しい。



私は、幾つかの申請書類を李鳥宮へ手渡した。


「話しに来たのは、もちろん右子様のことです」


「·············ふっ、兼任とは君も偉くなったもんだな。国立研究所の副所長に決まってさっさと辞めると思っていたのに、平の教師なんて次期公爵としては何の箔もつかないのになぜ居残る?」


「教師との兼任は名誉の為ではありません。

·········ここでは、魔術の研究内容の成果が出せます」


「ほう? 君の研究成果の為に右子様を研究対象に?」


李鳥宮は心底軽蔑するような目で私を眺めている


「!そうではありません!

あの方は、私が長年かけて調べてきた魔術の答えをいとも簡単に与えてくれるのです! 」



李鳥宮は深く深く溜息をついた。


「···············君はアレの正体が分かるか?

あれは右子様ではないぞ」


「いいえ、あれは右子様です。

別人のように見えるのは、封じ込められていた呪いが解けたからなのです」


李鳥宮は怪訝な顔をした。


「呪いだと?」


「そして、それを解いたのは私です」


「?」


「私は魔力を感じ取る力があります。

私は右子様の家庭教師を務めていた頃から、右子様の内に秘める魔力を感じていました。だけど今までそれが顕れることは無かった。

··················

しかし、卒業式が近づくにつれ徐々に魔力が開放されつつあるのを感じるようになったのです」


「それは、あの復讐を望む右子様か?·········」


「そうです。始まりはあの時でした。

········

私は彼女に魔法の古道具を提供しました。

それは、どんな難しい呪いでも解いてしまうという由緒正しい魔法道具です。

············そして案の定、それを渡してから右子様の力は格段に増大したのです。それはあの方を縛っていた呪いが解けたからなのでしょう」


「呪いを解く道具············?」


初耳なのだろう。

帝族の『病の力』しか知らない、

恐らく魔法については素人の李鳥宮だ。


「あら、呪う道具の間違いじゃないですか?

最近の右子様は呪いが解けたというより呪われてると言った方がしっくりくるような··········」


学長代理の数鳥さんが失礼なことを言う。

彼女の年齢は若く、現在は高学年に所属しているらしい。なんと去年までは中学年だったという。

学生が学校長をやるなんて荒唐無稽な事がよくもまかり通るものだ。


「素晴らしい魔力に満ち溢れている右子様を私達で正しい方向へ導かないといけません」


李鳥宮は顔色を変えた。

ようやく事態の深刻さに気づいたのだろう。

俺は一息ついてコップの水を飲み干した。

すると、李鳥宮はおかしな事を言った。


「え? 何と·········」


「だから、『魔法を使う右子様の有効活用』だ」


「え···········」


「現況、ニホン国は北からも南からも攻められて大変な状況だ。その戦争に魔法を使う右子様を利用出来ないかと考えている」


婚約者であろうと、猫も杓子も自分の昇進の為に使うのが、やはりこの李鳥宮奏史という男だったのだ。


「帝女を戦争に利用だなんて!?

あわわわわわ·············

奏史様!いくらなんでも賛同できかねます!」


上司の暴言にさすがに学長代理も咎める。


「その為には、準備が必要だ。

君の持ってきたこの提出書類の申請通り、魔法を使う右子様の為に魔法専用の練習場を作ろう。

魔法を使うのならその場所に限ってくれ」


私は動揺しつつも頷いた。

最初の目的を見失ってはいけない。

魔法をこの学校へ定着させて魔法に精通する金原派の権限を強くするのだ。


「···········なるべくそうしましょう。

後は、発足したばかりの親衛隊を『魔法騎士団』と名を改め編成し直します。

校内で魔法の適性がある者をかき集めて訓練する許可を下さい」


「それも認めよう」


「奏史様!」


学長代理は近衛騎士団との対立を危惧しているのだろう。

せっかく警察隊を排除したばかりなのに新たな勢力が誕生してしまうのだ。


「仕方ない。魔法を使う今の右子様は近衛騎士では抑えられない。抑止力とし魔力を使える者が必要なのだ。

その代わり、彼女の魔力の暴走があれば身を挺して止める責任を騎士団に負わせるが、金原宮、それでも良いか?」


「それで大丈夫です。万が一、右子様が暴走することがあれば止めたいのはこちらも同じですから」


「暴走も、正しい方向なら望ましいのだが···········」


え?

暴走を正しく·······何だって?

さっきの戦争利用というやつか?

俺は恐ろしくなってスルーした。


そもそもあの苛烈な右子様を、

どうやって我々の戦争へ協力させるというのか。


「金原宮、今まで私は君の3人の兄君達とは対立してきた。意図せず失墜させてしまったこともあったかもしれない。

だが、私は君が魔法を手掛かりにここまでのし上がって来てくれて、結果的にはこの国の為に良かったと思っているんだ」


「はあ」


「これまでの遺恨は水に流して、今はとにかく未曾有の国難を乗り切ることが重要だ。

特にこの国の4本柱と称される我ら公爵家で、互いに協力してこの事態を乗り切ろうではないか」


李鳥宮はおかしな方向で私を懐柔しようとしてくる。

本当に白々しい··········!


「わ、分かりました。とにかく申請についてはお願いしますよ」


「了解した。ああ、もうこんな時間だな。

そろそろ迎えに行くとするか。

お開きにしよう金原宮君」


李鳥宮は学長代理に学食の就業時間を確認している。



「は、では失礼します··········」


私は学長室を退出した。


誰を迎えに行くって?

そうか、お使いに出した侍女を迎えに行くのか············



そんなのは私との話を打ち切る為の方便だとは思いつつ。


ずっと違和感が

私の胸中には居心地悪くぶら下がっているのだった。


読んでいただきありがとうございます!


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