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156話目 補償なんて無限大 アインside 敦人side

ページの都合上、 前半 アイン視点 後半 敦人視線

となっております。よろしくお願いします!

ここは右子様の夢の世界。


僕は引き続き、高層化したタワーの頂上の右子様の部屋にいた。

自前のベッドを出現させてそこへゴロゴロ転がって寛いでいる。



突然、質問する声が天から降ってきた。


『思い残したことはないか?』



「?じゃあ、右子様と結婚したい。え?


··········それはダメだって?」


なんで?制限有り??


思い残すことはないかってのは、

············遺言的なのを聞きたいって、そういう意味じゃなかったの?


よくよく聞けば、それは兄さんの声だった。


どうしてか目を覚まして現実世界へ戻れないんだよね。


···········身体のダメージが酷いからかな。

これって、今、意識不明の危篤状態なのかな。



死···········?


僕って神のはずだけど。

神って·········死んだらどうなるの?



でもいいんだ。

このままずっと永遠に、右子様の夢の中で暮らすのも楽しそうだ。

好きな人の夢の中で暮らすと考えるだけで、言いようもない多幸感と高揚感が湧いてくる。

しかもここは世にも珍しい、特別な右子の世界だ。

色々な右子が出てくるから冒険心がくすぐられて飽きることがない。

悪い右子もいれば良い右子もいるし、喜怒哀楽、様々な右子がいるのだ。


だけど、僕が会いたいのは『右子様』だけだ。

そうそう、今夜は勇気を出して、地上に右子様を探しに行こうと思う。


「え?

『で?何を望む?』··········って?」


まだ終わってなかったの、カオン兄さん。

言われてもなぁ〜·········他には何も無いよ?


「『え?もう金にしとく?』って?

いや、別に要らないし··········」


何、煩いなぁ。

せっかくこの世界で、傷ついた心を休めているのに、兄さんのせいで余計に疲れてしまいそうだ。


「右子様にして欲しいことなら無限にあるんだけど。

え?それでいいって?

··········細かいよ?いいの?」


だけど、無尽蔵にあり過ぎて絞れず、逆に難しかった。

とりあえず思いつくままに、右子様にして欲しいことを言ってみる。


何で兄さんがこんなことを聞いてくるのかサッパリだけど。


右子様にして欲しいことを、途切れなく言い続けていたら、いつの間にかプッツリ兄さんの声は聞こえなくなっていた。

まだまだ続くのにね?


途中で電話を切られたって、そんな感じかな。


疲れた僕はまたベッドに臥せった。


「やれやれ········」






「有りました。補償内容の希望が、無尽蔵に」


アインのおでこに自分のおでこをごっつんこしていたカオン王太子が大声で言った。


「な、何だ?」


「右子様と一緒にフランス料理を食べたい、右子様と一緒にバーベキューをしたい、右子様と一緒に回転寿司を食べたい、右子様と一緒に居酒屋を体験したい、校舎の屋上で右子様と一緒にお弁当を食べたい、屋上で右子様と一緒に授業をエスケープしたい、階段の踊り場で右子様とすれ違いたい、廊下で右子様と出会い頭にごっつんこしたい、授業中に自分が落とした消しゴムを右子様に拾って欲しい、掃除の時間に右子様の雑巾で自分の机を拭いて欲しい、右子様と一緒にテスト勉強をしたい、右子様のリコーダーをーーー、色々ありましたが············」


「ほう、いっぱいあるな··········」

李鳥宮は難しい顔をしている。

近衛騎士が全てを書き出してリスト化している。


アインの希望は、いや、ぜんぶ叶えてやれば!?

と正直思わなくもない素朴な願いばかりだった。



「良いじゃないの。全部叶えてあげれば?」


帝妃が俺と同じ内容の事を言った。


「カテゴリーとしては、

右子様と一緒に食事関係と

右子様との学校での思い出関係

のニ種類に分けられるのね」


帝妃は自分の娘も様づけするおかしな母親だ。


「しかし、それでは右子様の負担が·········」


「そうねぇ、セッティングも大変でしょうしね········

学校も卒業したばかりだというのに何なのこの内容は」


確かに学校関係の要求が多い。

アインの、卒業までに叶わなかった未消化な願いがこんなにあるなんて。


右子は黙っている。

アインの願いで補償することに特に異論はないようだ。


「そうだわ! 敦人くん。あなたずいぶんと右子様と仲が良いでしょう?

頼めるかしら?」


「はい?」


「右子様だけだと大変でしょうから、あなたが右子様と一緒に付き合って、これらのアイン王子の要求を叶えてあげて欲しいの。費用はもちろんこちらで出しますからね」


え?それって·········俺も一緒に········


「それならいいな。権野宮、お願いする。護衛も兼ねてイベントは全て一緒にこなして欲しい」


李鳥宮も賛成した。

今、イベントって言った?


········俺も一緒·······にフランス料理食べに行ったりするの?

アイン、右子と二人でやりたいと思ってるよ絶対!!?

願い事を消化しても満足度は半減だよ!?


それにこれ、あのゲーム、

『日本滅亡〜亡国の帝女と王国の聖王子〜』のイベントそのものなんですけど!!


主人公とヒロインのイベント、3人でやってどうするの!?


「だ、だけど、学校関係の願い事はどうするんですか?」


「今からあなたと右子様の中学年の入学の手続きを取ります。願い事を消化できればいつでも退学してもいいわよ」


「はあ··········」


とんでもないことになったな········

俺、権野公爵家の仕事で忙しいんだけど。

5月には公爵家のパーティも予定している。


「カオン王太子?これで、補償は足りるわね?」


「足りません」


「「「!?」」」


「今のはアインが死にかけてる状態にまで傷つけられた事に関しての補償です。

················婚約に関しての補償がまだです。

こちらの持つ婚約の(結婚)誓約書をどうにかしたいのなら、それ相応の補償をしていただかないと」


「·················」


こんなにも欲深い王太子がいるだろうか?

婚約(結婚)誓約書を反故にする為の補償なんて、随分高くつきそうだな。


「要求を飲めるかは分からないけど、言って?」

帝妃はあくまで居丈高な態度を崩さない。


「右子様を人質として要求します」


「!」


「期間はこれから右子様が18歳になるまでの6年間です。

それ以降は彼女はお返しします。


正直、この国での私の立場は不安定なものです。『臨時政府』はあなた方ニホン国の協力が無しでは、成り立ちません」


「そうよね。············なのにこれはどういうこと?

戦争をふっかけてるとしか思えないわよ?」


帝妃は落ち着いてるけれど、怒りで震えてるのが伝わってくる。


「いいえ、滅相もない。

だからこその人質なのです。

この国の帝女を預かる私達には、皆さん惜しみなく協力して頂けますでしょうから」


「············人質の件はお断りするわね。他の補償を考えましょう」




「·············そんな事言って、もしアイン王子がこのまま目を覚まさなかったら?」


「右子様?」


ずっと黙っていた右子が口を開いた。


「············そして、何にも補償ができなくなってしまったら?」


右子は保健医が言った、『もう目を覚まさないかも』『危篤』『今夜が峠』という説明をとても気にしているようだった。


カオン王太子は少し考えて言った


「戦争になるでしょうね。間違いなく。弟を殺された私はこの国に戦争を仕掛けるしかない。


一国の王子を死に追いやった罪は、右子様であってもこんな補償では済まないでしょう。

一生独身でアインの菩提を弔って貰うぐらいのことは要求しますよ?」


この場が静まり返る。


でもアイン死なないと思うけど········

と俺は思った。


アインの不条理な力を見ているせいか、心配はしていなかった。


死んだってどうせ幻術で誤魔化すんでしょう?

たぶん、ここにいる皆が思っていた。




だけど右子は姿勢を整えまっすぐ立って言った。


「私、人質になります!」


「右子様!何を言うんですか!!?」


「しかも、ただの人質じゃないわ!

アイン王子の侍女になって仕えながらの人質よ!」


「「「じ、侍女!?」」」


何でハードル上げた?

今の右子は補償なんてしたくて堪らないみたいだった。


右子は、もはや償いの塊だった。



「·········では、補償の内容はアインの容体次第と言う事にしましょうか」


カオン王太子は大きく溜息をつき、

その場にいる皆が頷いた。


読んでいただきありがとうございます!

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(イラストは活動報告欄の過去ログでもご覧いただけます)

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