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150話目 やっぱり私は悪女らしい 右子side

「これは、復讐幇助(ほうじょ)罪だな」


そんな罪名ってある?

授業後、私は魔法資料準備室をかりて、嫌がらせプレゼントを机にズラリと広げて敦人に相談している。


「ていうか、右子、今日はその丹下くんを使って不幸の手紙をアインに届けさせてたよ?

その後、『ありがとう。ふふっ、次は何の嫌がらせをしようかしら?』って丹下くんにアイデアをねだってたし」


「はああああ〜!?ウソッッ!!」


「やっぱり覚えてないんだ?

もう公然だよ、右子の復讐は。

俺、止めたけど止まらなかったぞ?

とんだ悪女っぷりだよ。

なんせ前回の和珠奈さんの右子が熾烈で苛烈なアレだったから、みんな受け入れるのが早いみたいだ。


そうそう、はい、コレ。

···········恥ずかしいから俺から渡してくれって」


「?」


「不幸の手紙の、返事」


は、恥ずかしいって??

私は緊張して震える手を抑えながら手紙を開いた。



「··················どうしよう」

「何て?」


私は私的な手紙だしと躊躇っていたら、敦人にあっさり奪われた。


「『お手紙ありがとう。

初めてなので嬉しいです。

色々助言をありがとう。

でも、ご心配には及びません。

君は 呪われろ、不幸になる、不幸になれ、と言うけれど、僕は君の隣にいるだけで幸せなので、不幸にはなりようが無いですからね!

最近はいっぱい構ってくれてすごく嬉しいです。

失敗して気まずい時もあるけれど、その度に僕たちの距離も縮んだように感じています。


来年度は、君は中学年に進学しないのですか?

寂しいですが、また手土産を持って帝居へ遊びに行きますね。今度僕の家にも遊びに来てください。素敵な物をいっぱい用意して待っています。


君から初めて貰った手紙は宝物にします。

明日は一緒に答辞がんばろうね。


そうそう、これから僕のことはアインと呼んでください。

あなたのアインより』··········へえ?」


私はもう顔色が真っ青だっただろう。


「··············鈍感力が、神がかってきているな···········」

敦人が呆れて、項垂れた。


「『あなたの』············?

もう、まな板の鯉的な?好きにしろってこと?

私の嫌がらせを甘んじて受け入れる的な?

ああっ、そんな·········!神目線!

彼は神!?神なの!?」


「鯉というより、恋な。目線は、······盲目だな」


彼の心は何という天上の神ごとき慈愛で溢れているんだろう。



「それに比べて私は地の底を這う虫よ!いいえ!虫以下だわ!!」


私は立ち上がり、背伸びする勢いで叫んだ。


敦人がその悲劇のヒロインって本当に楽しいの?

って胡乱な目をしている。


ちょっとスッキリしたわよ?



「はあ、もうストレスで押し潰されそう··········」


「アインがこの調子じゃなあ······

もしかして、アインが嫌がらせに気づかないと、右子の復讐心は収まらないんじゃないか?」


「はっ!···········そうかも?」


「だよなぁ。普通、復讐って相手が嫌がることをするもんなのに、アインがあれだから、右子の中の復讐心が満足してないんだよ」


「うん、そう·········!」


私の中で何かが大きく頷いた。


「アインが嫌がること、アインが嫌がること·········」


「あ、敦人?手伝っていいの?止めてくれるんじゃなかったの?」


「初めはそう思ったけど········違うんだ」


「ん?」


「ずっと俺も満たされない気がするんだ。俺も辛い。

復讐を望む、悪女の右子が可哀想で」


敦人が、そう思っていてくれたなんて············


「死なばもろとも、だ。

実は俺ももう狂っているのかもしれない。

行けるところまで行こう」


そう言って、敦人は教室の棚という棚を開けた。



魔法資料準備室には、


敦人のお手製の武器が、所狭しと並べられていた···········





「金原宮先生の助力を得て、ここ数日で運んだんだ。」


「フッ、馬鹿ですね」


「「!?」」


ドア辺りで声がした。

根津生先生かと思えば、それは············


学長の李鳥宮 奏史様だった。

奏史様は不敵に笑った。


「彼には身体的攻撃が通じないようですね。

ここは精神攻撃に徹するのがよろしいかと」


驚くことに、奏史様はまるで自然の流れのように協力してくれるようで。


「たっ確かに!!

だけど···········あいつは『恋は盲目』状態だ。

精神面でも攻撃が届くかどうか分からない······!」


敦人は悔しそうに顔を(しか)めた。


「私は知っています。彼に最大の精神的ダメージを与える方法を。

それには右子様の協力が必要なのですが

··········どうしますか?」


ふいに私の頬を撫ぜて、奏史様は尋ねるように頭を横に傾げた。

私の回答を待っている。



「右子、怪しい、止めよう」

敦人が私の身体を引いて、引き留めようとする。


「やります」


私は一歩前に踏み出した。




『彼に、············絶望してほしいの』



彼らが息を呑む様子が伝わった。


私は知らずのうちに、

悪女のセリフを吐き出していたのだった。


読んでいただきありがとうございます!

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