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128話目 九官鳥はギャッと鳴く チェアside

「師匠ーー!籠に!カラスが入ってきました!」


「はあ!?入ってきたの!?自分から??」



何騒いでるのかしら·······

右子様の住居兼工房(?)のニホン風建築に近づくと、その前の庭園で右子様とアイン王子が立って何か騒いでいる。


確かに籠の中には黒い鳥が入っている。


「ちょっと待って!これは九官鳥だ」


「九官鳥!?」


「顔の横が黄色いでしょ?嘴もオレンジ色だし、これは九官鳥という鳥だよ」


「コンニチハ〜〜コンニチハ〜〜」


「しっ師匠!この九官鳥、しゃ、しゃべります!」


「九官鳥はモノマネが上手いんだよ。ペットとしてはカラスより断然可愛くて向いてるかもね。

自分から籠に入ってくるなんてどこかで飼われていたのかもしれない。ほら、もう右子様に懐いてるよ。人にすごく慣れてるみたいだね」


右子様は無防備にも指を籠の中に入れツンツンしているけれど、九官鳥とやらはギャッギャッと嬉しそうに目を細めている。


「はい!飼ってみます!

師匠は動物にすごく詳しいんですね。

そんなところも、あの、ステキです···········!」


右子様は、はにかんでニコッと笑った。

え?誰なのこれ。

こんな風に笑うの初めてみたわよ!?

アイン王子卒倒しそうよ!?

っていうか、なぜに敬語?


「あっ、チェアさん!来てくれたの?」


ようやく二人は私に気がついた。


「夕方に行くって言ったでしょ」


とりあえず屋敷の中にと誘われて、三人で右子様の部屋へと向かう。

九官鳥という黒い鳥は右子様の近衛騎士達に、足を掴まれ逆さにぶら下げられ、羽を引っ張られたり羽根の一枚一枚までめくられて隅々まで改められている。

ギャーギャー騒いでいる。


部屋に来てみると、午前中の様子と変わっていないような。


「······で、ノルマは達成したの?」


「ううっ」


「ええ!?出来なかったの?」


確かに木片は山と積んであるけど、あのスピードだったし、内心には、余裕だと思っていたのに。


「大丈夫だよ。これから僕がやるから」


と、アイン王子が言った。


「へ!?

へえ〜?アイン王子が?

······っていうか、アイン王子!私の侍女を誑かしてアポ無しで帝居に入ったでしょ!?

今後一切止めてよね!私達消されるわよ!?」


「ううっ」


呻きつつも、アイン王子は彫刻刀を握った。

心なしか手つきが手慣れているような·······

何言ってるのよ、王子よ?腐っても王子よ?

彫刻刀すら握った事ないでしょーよ!


「アイン王子·········」


右子様はキラキラの目でうっとりとアイン王子を見つめている···············ほんと、何だっていうの···············??


「えっ、あれっ!!?」


気がついたら、アイン王子の手の上には可愛らしいカラスの彫刻が乗っていた。


「ス•テ•キ···········!」


「「「!?」」」


「アイン王子が、作ったの!?これ!?」

「や、やだなあ、素敵なんて······ははっ」

「あら?ス•テ•キって私が言ったのかしら?」


それぞれ驚いたり照れたり疑問に思ったりしている。


我が国の王子は彫刻の天才だったらしい。


おまけに午前中に見た右子様の彫ったカラスより、丸っこくて小ぶりで羽が白くてお目々がくりくりで可愛さがバージョンアップしたかもしれない!セットで欲しい!


この歳になって新たな才能が開花するなんてことがあるのねぇ·······

アイン王子はもう、何個目かに取り掛かっている。

かなり、調子にのっているようだ。


程よい頃合いで

「ス•テ•キ···········!」

という右子様の合いの手が功を奏している。

って、この九官鳥ぉ!?


「この子、ステキって言ってる! もう言葉覚えたの!?」

しかも声色までそっくり真似てるから大したものだ。

右子様も興味津々で目を輝かせ見つめている。

二人であれこれ九官鳥に質問したり言葉を教えたりして遊んでいると、


「ス•テ•キ···········!」

「また言った!なにこのベストタイミング!賢すぎ!」


アイン王子はカラス彫刻マシーンと化している。

王子の才能を見出して、有効活用されるのは国民としても誇らしいかもしれない。


それにしても、『師匠』ってそういうことね。

右子様みたいな技術系女子は、こういう上下関係を重んじるものなのかもね。

これは··········今後の二人の展開から目が離せないわ。


と言いつつも、師匠と敬語にどれほどの分配が上がるとも思えない。


「師匠!お茶です!」

「ううっ、ありがとう! 右子様は座っていてね?」


さっきもドアを先に開けて師匠を通していたし、レディファーストしたい尽くしたい系男子のアイン王子と絶妙に噛み合っていない。

アイン王子は、まあ嬉しそうだけどね。


「うん、難しいかもね·········」

私は遠い目をした。


「はっ!」

私はこの隙に李鳥宮奏史様に急接近する野望を抱く。

浅はかさを自嘲しつつも、

でもでもでも·······頭がぐるぐるする。



「ス•テ•キ〜〜♪大好き〜〜♪」


えっ、さっき右子様と遊びで教えた言葉をもう覚えている!


「うふふっ考え事してるのよ?無神経な鳥ね·······」


本当にうるさいわよっ

私は九官鳥とやらをツンツンした。


九官鳥はギャッと鳴いた。


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