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126話目 俺達は帝を探している(1) 敦人side

「帝がいなくなった?病気と聞いていたが」


俺は帝の弟である俺の父権野公爵に帝の消息について尋ねていた。


「ふん、いい大人なんだ、そのうちに出てくるだろう」


本当にこの人帝嫌いだよな。実は帝がいなくなって煽りを食っているのは自分なのに。


帝がいなくなって帝妃が実権を握ると、帝妃の八咫烏派(やたがらすは)は急激に勢力を伸ばし、今は国のあらゆる宗教を支配下に置き始めている。

それも昔からニホン国にある神社仏閣を優遇し、近頃出てきた新興宗教は排除する動きだ。

もちろんサンタ聖教会もその新興宗教に入るらしく風当たりが一段と厳しくなっている。

父はサンタ聖教会と貿易をしているからサンタ聖教会が縮小するのは望まないし、そもそも彼も信者なのだ。



帝は帝居では見つからなかったらしい。


昨日、突然李鳥宮が俺に連絡を取ってきた。

帝弟に帝の居場所の心当たりを聞き、俺にそこを当たって欲しいとのことだ。

近衛師団を使い帝居をくまなく調べたが帝が隠れられるような場所は全て調べ尽くしたとのことだ。

帝妃からも帝の捜査の命が下っていると言うから、帝が帝居に居ないのは確定だろう。

李鳥公爵家も近衛師団も帝妃派で、権野公爵家は新興宗教派という反目する間柄だが、今は帝を見つけるのが先決だ。互いに協力し合うことで合意した。


「帝が行きそうな所?そうだな·········」


何だかんだ父は帝の行きそうな場所を幾つか知っていてリストを書いてくれた。

なんでも少年時代に二人で回った場所を帝は気に入っていて、今だにお忍びで度々訪れているという。

父上は過去の横恋慕の因縁をきれいサッパリ洗い流し、帝と和解するべきだと思う。

まさか昔は仲が良かったなんてな。


『帝が行きそうな所リスト』はほとんどが神社仏閣だった。

帝と帝弟の少年時代の趣味はパワースポット巡りだったらしい。

俺は、帝は自分の意志で帝居から逃れていると予想をつけている。

しらみつぶしに調べたが、現在はリスト全ての寺院と神社が八咫烏派に所属しているようだ。八咫烏派は看板に大きく八咫烏認証マークがあるからすごく分かりやすい。

帝が帝妃から逃げ隠れしていると仮定すれば、このマークの場所を帝は避けているはずだ。


最後の一つは、四谷にあるサンタ聖教会の教会だった。

これだけが新興宗教関連なのは、違和感がある。

そして、帝妃は新興宗教を嫌って寄り付かないから、帝の隠れ場所としては、適している気がする。

俺はまずここに潜入調査することを決めた。




日曜日はミサがあるので部外者も侵入しやすい。


この四谷の教会が怪しいので、折よく明日の日曜日に潜入して帝を探す旨を連絡係の近衛兵に伝えると、すぐさま李鳥宮も同行するという返事が返ってきた。

俺は時々、父である権野公爵の代理で東京中のサンタ聖教会の教会を巡り、御用聞きをやらされている。

どの教会も近頃の国の待遇の悪さを嘆いていた。

そういった流れで、ミサが終わったらまず神父に困り事を糸口に話を聞いてみるところから始めよう。


そう思っていた。



「突然ですが、ミサを中止してください」


李鳥宮の冷たい声が響き渡り、

荘厳に執り行われていたミサが中断する。

皆、急速に静まり返る。


李鳥宮奏史は合図で近衛師団をまるごと招き入れ、教会を近衛兵で囲んだ。入口も閉じられた。


バタバタバタバタ·········

忙しなく走り回る近衛兵達。


信者達は拘束され、会場は騒然となる。


神父が青ざめる。


「権野宮様!?これはどういうことですか!?」


「い、いや、俺もこんなのは、聞いていない」

俺は哀れな神父に自分の動揺をそのままに伝えるしかなかった。


「これから信者の顔を改める!(かれ)と背格好の似ている者はこちらへ固めろ」


李鳥宮は信者に帝が紛れている可能性を疑っているようだ。まるで犯罪組織を改めるように信者達を扱っている。いや、帝がいたとしたらますますこの扱いはマズいと思うんだが。


俺は、教会のどこか一室に帝が匿われているのではないかと思っていた。

大体、帝はおそらくサンタ聖教会の信者ではない。

もし信者ならさすがに俺も父から聞いていると思う。

こんな場に参加しているとは思えない。


俺は急いで李鳥宮にこの事実を伝える。


「帝がサンタ聖教会の信者ではない······?」

「サンタ聖教会の信者と知られているのは帝の弟の方だ。俺の父だ」


「そうか、俺はてっきり兄弟で······では屋敷の内部の方だな」


李鳥宮はあっさり頷きつつも、一応信者の顔を改めるのは止めず、疑いが晴れた者を順に開放していく。


開放された信者は、何が何だか分からず、国の宗教弾圧だと一様に腹を立てている。


俺は深く溜め息をついた。

李鳥宮が今まで対峙してきた相手(はんにん)にはこれで普通の対応なのだろう。


だけど、

「一般国民にこれは横暴だぞ·······?」

そう伝えると、


「君にだけは言われたくないが、大丈夫だ。

宗教弾圧も兼ねている。

ただ、サンタ聖教会の『全知全能の唯一神』という謳い文句が大嫌いでね。個人的に」

とのたまった。


宗教弾圧兼ねてる?

·········俺はやはりこいつは帝妃の犬だと認識を新たにする。


「そもそも、犯罪組織を改めるなんてことはしない。疑わしきはすぐに殲滅。

悠長に構えていればこちらが殺られるぞ?

今回は帝が紛れているかもしれないということで平和的に一人ずつ改めたまでだ」


未然に手を打つ必要があるのは、理解する。


だけど人がやってると気になるもんだな。

こういうイカれたやつを右子の側に置くのはいかがなものか。

俺は舌打ちした。


「今、舌打ちを?

さて、教会内部へ入るぞ。神父もついて来い」


「ひっひいいい〜っ」


李鳥宮は悠然と切り替える。

引っ張られて神父は泡を吹いている。


護衛ならともかく、

結婚には向かない男だ。

右子、俺は婚約には反対だぞ。


読んでいただきありがとうございます!

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