124話目 カラスはカササギに嫉妬する(1) アインside
今日は午前に投稿できました(^。^)
「あれ、右子様ですよね!········ほらっ、アイン王子!」
「·············」
「ねえ、王子っ!やはり右子様はお美しいですね!
まるで白き薔薇の如くです!·······いや、ここは白百合か?」
「···········うるさいなあ·········!」
せっかく右子様を堪能していたのに、うるさいったらない。
大体、ふすまの隙間から覗き見してるのに、ここで声出したらまずいだろ?
時々思う、この侍従は侍従らしからぬ口の煩さだ。
右子様は部屋の中央で、一生懸命に勉強?····じゃない、木片、?を削っていた。
右子様も侍女達と同じような白装束を身に纏っている。
そのご様子は、まるで和室の床の間にひっそりと生けられた生け花、大輪の白百合のごとく咲き誇っている。
部屋中が光りと輝きで満ち満ちている。
「堪能しました?では戻りましょうか···········アイン王子?」
「立ち去り難い」
「!!? 早まらないでください!私達はゴールまで来たんです!ここで満足して帰ればいいじゃないですか?」
「だって········このまま言葉も交わさず、あの美しい瞳に僕の姿を映すこともなく、帰ってしまったら········
何のためにここまで来たか分からない。
ふすまの隙間からこそこそ眺める為だけに来たのか?
それってただのストーカーだよね?」
「·············ストーカーの、定義は難しいです」
いや、でも違うか?
ちょっと冷静になる。
僕は右子様の帝居での様子が知りたかっただけで、まぁ、木片を削ってるとは思わなかったけど、こんな侵入者っぽいのじゃなくてちゃんと正常に出会った方がいい。
これからチェアを連れて来て、一緒に右子様の所へ挨拶に来た体にすればいいな。
ここはスルーするのが最適か。
「誰だ!?ボソボソと······!」
大人しく立ち去ろうとした矢先、
ふすまが勢いよく開いた。
話し声が近衛騎士に届いてしまったようだ。
僕たちは喋り過ぎた。
「んんっ!?いない········? 覗きが二人はいると思ったが、面妖な·········」
熱心に木片を削っていた右子様は顔を上げた。
「えっ······今の、アイン王子の声?」
右子様は、見えないはずなのに
僕を真正面に見据えていた。
シュッシュッシュッシュッシュッシュッ
僕は木片を削っていた。
近衛騎士達は部屋の四方に分かれ武神のごとく鎮座している。睨みは凄いのに不思議と僕たちに手出ししてこない。
先ほど、右子様に声を言い当てられて、驚いた僕は思わず幻術を解いてしまった。
チェアに会いに帝居に来たものの道に迷ってしまった、という見え透いたウソを右子様は完全に信じた。
聞けば、午後にチェアが来ると言っていたというので、ここで待たせてもらうことですんなり話をつけた。
右子様ってチョロいよな·········?
いやいやそこがすごーく可愛いんだけど!
邪魔かと思ったけど、何か手伝えることがないかな。
シュッシュッシュッシュッシュッシュッ
と木片を僕も削りつつ考えていたら、隣でジフも道具を借りて木片を削っている。
「おいっっ邪魔になることは········」
しかし、みるみる木片はトリの形を形成していった。
ジフ、めちゃめちゃ上手だ。
「···········かわいい!これって、カラスなんですか?
あれ?羽が白い?」
着色まで器用に終わらせたジフは得意げに言う。
「これはカササギという鳥です。コーリア国にはカラスはいませんが、代わりにこの鳥がいます。
『いい便りを呼んでくる』と言われ、昔から吉鳥と呼ばれる鳥です」
「そうなんですか!カラスに似てるけど、ちょっとカラスより小ぶりで可愛いですね!」
そうそう、ニホンのカラス、あっちにはいないんだよな。ニホンに来たときはカラスの凶暴さに驚いたもんだけど。僕は動物好きな方だけど、奴らには餌付けしたいとは思わない。
右子様、わざわざカラスなんかの彫刻してるんだ? しかもこんなに大量に。
右子様も動物とか好きそうだな。
「よし!これからはこの『カササギ』のデザインを取り入れます!」
右子様はスケッチブックにサラサラ〜っとカササギのデザイン画を描いて、うんうん頷いている。
それ以降の彫刻はカササギの形に変更された。確かに少し丸みを帯び可愛くなったような。そして羽は白い。
「あの〜っ失礼ですが、カラスもカササギも足は二本だと思うのですが、三本足でいいのですか?」
ジフが遠慮がちに言う。
「このマークが元になっているのでいいのです」
見れば、円形の中に三本足の黒いトリを中央に配したマークだった。
もしかして、このロゴマークを使っている会社かなんかのキャラクター商品を受注生産しているのだろうか?
この量生産体制は仕事でやってる感がプンプン臭う。
「なるほど」
「このマーク、羽も白く変えてもいいかもしれませんね。その方がかわいいから」
右子様はまたスケッチブックに変更したマークのデザインをサラサラ〜としている。
可愛いからって、そんなに簡単に受注先のロゴマークのデザイン変えていいのかな?
一番イケメンな近衛騎士が驚いたように眉を上げているが、何も言わない。
ジフも手伝っているし、僕も頑張ろうと引き続き木片を削りつづける。
コーリア国でよく見るカササギを懐かしく思い出す。城で餌付けしたこともあった。
かわいいよなカササギ。
シュッシュッシュッシュッシュッシュッ
「ははっ、難しいねこれ。刀の扱いが慣れないや····」
「ええ!?」
「はあ!?」
「ん?」
みんなが驚愕の表情を浮かべて僕を見ている。
僕は自分の手元を見た。
「カササギって······こんなんじゃない?」
照れ笑いをしながら差し出したカササギの木像はかなりリアルだけど、懐かしい可愛い容貌をしていた。
「王子、天才だ」
ジフが呟いた。
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