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121話目 私はいつも守られている 右子side

バタバタバタバタ!


体育館裏のジメッとした土が足跡で荒らされる。

この狭い場所に幾人もの男がなだれ込んで来た。


私と敦人はぐるりと周りを囲まれる。

捕まる!?私達は身構える。

その中の一人が口を開いた。


「探しましたよ····!」


「あっ、!?すみません」


よく見たら近衛騎士の8人だ。

動きが素早すぎて姿格好の判断がつかなかった。

スラリとした8人が立ち並ぶ。

リーダーの槙田くんは青筋を立てているようで、顔は笑顔だけど怒っているのかも知れない。


「こんな風に姿を眩ませられるようでしたら、我々もお守りするのに限界があります」


「うっ··········すみません」


槙田くんはチラリと敦人を見て、そして私を見た。


「大体、なぜ、私達を()かれたのですか?

我々のことは········その、その辺の枯れ木とでも思っていただいて、自由に過ごして頂きたいのです」


「えっ!?聞かれたくない話でも、貴方方を枯れ木に思い、目の前で自由に話せと?」


「その通りです」

「すみません、········無理です」


すみませんを言うのはもう3回目だった。


ゴホンッ、槙田くんはきまり悪そうに咳払いをする。


「その、聞かれたくない話を彼となさっていたと言うことですか?」


「まっまあそうです」


「············この事は、報告させていただきます」


「誰に」

敦人が私の前に立ちはだかる。一言言ってくれるようだ。


「そうやって束縛するのは感心しない。

こいつは目眩ましの術を何通りももってるぞ?

護衛対象に嫌われて困るのはあんた方じゃないか?」


「嫌われる」


槙田くんは真っ青になった。


「報告はしません。

右子様が無事なら問題ありません。

そもそも我々は護衛が本業なのでプライベートは干渉しません。ですので、あのように我々を撒かれては困るのです。

右子様が不利になるような報告は一切しません。

今後は、どのような後ろめたい場所であろうとも我々をお連れ下さい」


後ろめたい場所とは、

こういった体育館裏のことかしら。




「·········報告は受けていませんが、ちょうと来たので知ってしまいました」


槙田くんが息を呑む気配がする。

声の方へ振り返ると、奏史様が立っていた。


こうして背後に立たれると長身の彼は聳え立つ壁のようだ。

もうこの場所は定員オーバーだと思うけれど、みんな話に夢中で気にならないようだ。

靴底がジメジメした地面にめり込む。


「彼の言う通りです。彼らを身近に置かずに、誰かと二人きりになるのは避けてください。

···········例えよく見知った者とでもです」


奏史様は私の横に立ち、敦人を見ながら言う。

狭い場所なので、肩と肘が触れ合う身長差。


「こんな所で彼と何をしていたのですか?」


やはりここは後ろめたい場所のようだ。

後ろめたい場所だからといって後ろめたいことをしていたわけではない。

けど、奏史様の悪口も言っていたかしら?

少し心当たりがある私は明後日の方を見て言う。


「別に········話していただけです」


「そうですか」


奏史様はもはや激しく敦人を睨んでいた。


「お気をつけください·······犯行を未然に防ぐには、怪しき動きをする者を先に罰する必要が出てきてしまいます。

それを避けるには、右子様には日頃から慎重な行動をお願いしたく」


いやいや、それ怪しい者違う!

歴とした公爵令息!!

事前に罰したらだめだから〜!!


奏史様はさっきから

誰に話してるつもり?

私には横向きで、こっち見て話してよ!?


「その考え方は嫌いじゃない」


「「?」」


「犯罪は起きてからでは遅い。未然に手を打つのは最善の方法だ。例え罪のない者を陥れることになってもな。守りたいものがあれば何を犠牲にしても構わない」


いきなりの譲歩、かと思いきやよくよく聞けばかなりの自分勝手な危険思想だった。


「この世界はそれが許されるからいいな」


こっちを見てニッと笑う。

敦人、いい顔でこっち見て同意求めないでよ!?

私一味じゃないからね。

それって、前世のような警察がいないってだけでしょ。犠牲にされた人はこっちの世界だって黙っていないわよ?


奏史様はかなり驚いたように敦人を見つめていた。

そして、ようやく私の方を見る。


「本当に、あなた達は仲がいいんですか?

········かなり、タイプが違うように思いますが」


私は項垂れた。そうよ、この発想は私はナイよ。

「家族でしたから·········」


どうせ分からないと思って言ってしまった。

でも帝子だったし間違いじゃない。

奏史様は暫く考え込んでいたが、神妙に頷いた。


「とてもよく分かりました。

権野公爵はコーリア国やサンタ聖教会に(おもね)(へつら)っているという噂のあるお方なので警戒しておりましたが、君はまともなようですね。

········右子様のこと、節度ある範囲内で、これからもどうぞよろしくお願いします。

近衛騎士は会話などは一切報告させませんから、必ず同行させてくださいね」


奏史様の公認が出てしまった。


ねえ、どうしてまともだと思ったの??

警戒を解く理由が今の発言のどこにあった??


これって彼氏に娘をどうぞよろしくって流れ?

奏史様って、私の父?


「色々違うだろ······」


敦人は悔しそうに唇を噛んでいる。


「右子様、そろそろ帰りましょう。

中学年説明会が終わる頃なので、体育館にいるチェアさんと合流したら、学長室へ来てくださいね」


奏史様は私に愛想よく笑って立ち去った。

近衛騎士はもちろん8名とも精悍な佇まいで居残っている。


「なんであいつが家族枠に納まってるんだよ·······」


そう敦人が呟くのを聞きながら、


私は


うーん、

奏史様は誰かにそっくりね········と考えていた。


読んでいただきありがとうございます!


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