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115話目 わたくしは神座にたたずんで 右子side

おかしい

私の扱いがおかしすぎる。


私は帝居につくなり御所に連行されて、上がれ上がれと上座に押しやられ、気づけばフッカフカの椅子に座わらされて眼前にひれ伏す人々を見下ろしていた。


「て、帝妃様··········?

頭を上げて下さいませんか?」


私は顔を引き攣らせて、最前列の床にへばりつく帝妃(母)様を見下ろす。

ここは本来なら帝が座る帝座だ。

隣には帝妃の席もある。

おーい!帝ーー!

どこいった〜?

私は必死でキョロキョロするも、帝は見当たらない。


「·········姫神様!滅相もございません!お姿を直接拝見するなんて畏れ多いことでございますから!」


··············姫神って私のことなのよね。

私のことを神の子だと信じて疑わない母親。

相変わらずブレない帝妃(母)様。もちろんお元気そうですね。


えっと、気を取り直して、


「そんなこと言わないで下さいまし。

こっちとそっち、まずは席を交換しませんか?」


「そんな!そのような粗末なお席では気に入りませんか!?

神殿を建てるにはもう少しお時間を頂きたく·········!」


「建てないで下さいね」


マジで建てないでね。

既に旧阿良々木邸の一軒、着工してるらしいしね?

さすがに予算オーバーだろうしね。


「帝はどちらへ?」


「ああ、あの人···························」


王妃(母)様の声のトーンがいきなり急行直下のブリザードだった。

夫婦喧嘩ですかね!?

どうしよう。事情を簡潔に説明してくれる人はいないかしら···········

見渡せばかつて帝の周りにいた人々はここにはいないみたいだった。

帝妃(母)様の周りには、みんな私の知らない人がかしづいている。


あれ?


麻亜沙(まーしゃ)さん!」


ずいぶん会っていなかった彼女が、平然と端っこに並んでいた。


「右子様·········ではなく、姫神様」


お久しぶりの麻亜沙さんは微笑んだ。相変わらず可憐で美しい。

貴女まで姫神って言い直さないで欲しい。


「彼女は姫神様つきの八咫烏(やたがらす)として使えていたのですが、帝に配置換えされて冷遇されていたので私が引き抜いたのです。よろしければ姫神様つきに戻しましょう」


帝妃(母)様が自信満々に言う。


「え?八咫烏(やたがらす)!?」


「はい。なので姫神様をお助けしていたのですが、·····その、(まなぶ)に仕事を奪われてしまいまして」


「!?」


「口惜しい思いをしていたところ、帝妃様に拾って頂きました」


最近麻亜沙さんを見かけなかったのは、帝の配置換えのせいだとは。そういえば、麻亜沙さんは帝と私の夢に出てきたのを思い出す。八咫烏だから夢に入れたのね。


「そういえば、八咫烏っぽい忍びなムードあるわね、何で気づかなかったんだろ·······」


「帝はアイン王子と私の間に何かあると懐疑を持たれ、アイン王子と姫神様の婚約の障害になり得ると判断し遠ざけたようなのです」


「はっはぁ!??··········そ、そうなの?」


麻亜沙さんは悔しそうに頷いて続けた。


「私は全く潔白です!アイン王子は右子様ただお一人に惹かれていらっしゃると申し上げましたのに!

『お前は邪魔なのだ、すまない』と仰られて」


「·············なんか(ちち)がスミマセン!」


帝、娘の恋敵だと思って麻亜沙さんを排除するなんて、なりふり構わなさすぎだ。

そ、そんなに帝が私とアイン王子を結婚させたがっていたとは知らなかった。確かに筆頭婚約候補者と言われていたから、国益の為には一番良い相手とは分かるけど。


「ほほほ、いいのですよ。寧ろ上出来です。

私は最初から気に食いませんでしたの。姫神様がよもや異国の王子と結婚し海の向こうへ渡るなどと、忌避すべきことですわ。

これからもこの調子で姫神様の隣でアイン王子を誘惑してもらいたいわ」


「へ」


どうやら、帝妃(母)様と帝は意見が対立していたらしい。


「なのにあの人はしつっこく婚約を進めようとして、あの人の弟もです!あの方々はコーリア国に(おもね)(へつら)い過ぎなのです。

············帝は、今更ながらこんな形でかつての失敗を悔いて償おうとは浅慮な··········」


「???」


償う? 思っていた政略結婚の理由とは違うような?

弟って権野公爵のことかしら?

昔に何かあったのだろうけれど、触れるべきか触れざるべきか。

知りたいけど、確実に地雷が埋まってそうなので避ける事にする。


「私には分かっております。姫神様の心に決めたのは唯一人。そう、姫神様のお相手は国内で一番に優秀な男であるべきです」


帝妃(母)様はチラリと、美しく整った姿で整列する近衛師団長の方を見やった。

すごく嫌な予感がする·········


「私は、姫神様がどこかに攫われる度に心配で心配で心を痛めておりました。そしてその度に御所に出て帝を追いやり采配を振るいました。

神のお子である姫神様に万が一にも何かあったら私は、この国は、どうしたらよいのでしょう?

神のお怒りを買い滅びてしまうかもしれません。

それもこれも、···········帝が争いの種を摘んでしまわないことに原因があるのです。帝にはもう任せてられません!

本当は神の子であらせられる姫神様は、帝のお血を引いてるか不明なので、私も躊躇いがあったのですが···········古より血を繋いできた公爵家令息と結婚すれば余裕で大丈夫でしょう!」


はい!爆弾発言〜!

夫婦喧嘩の原因、分かっちゃった〜!!


衝撃的な発言に私は青ざめる。

帝妃(母)様は帝が私の父だと、思っていない?



かつ!かつ!かつ!


帝妃(母)様は立ち上がり、私のいる上段へと上ってきた。お姿が直接見れないとか何とか言っていたのに、やっぱりあれは嘘で、私をガン見してくる。

こわいよう。

再び皆が急いでひれ伏す。


「帝はご病気になられました!不在の間は国母として私が帝居の全てを取り仕切ります!

帝太女には姫神様を、その婚約者には李鳥宮奏史殿を。

これを正式に決定したと、ここに宣言いたします!」


夫である帝の病気をこんなに嬉々として語る妃は、

世界広しといえここにしかいないだろう。


これって帝妃の、

ククク········クーデターじゃないのぉぉぉ!?


読んでいただきありがとうございます!


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