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113話目 新婚は巨大ケーキの甘い罠 アインside

船上の、嫁対小姑対決は始まっていた。


「ううっ」


「にがい」


「ど、どう!?アイン王子!勝敗は!?」


そう尋ねられて困る、正直、どちらも苦い········


「うーん、ぎりぎり右子様の勝ち!!」


「やた!」

「くっ悔しい··········贔屓よ。卑怯よ」


「なっ」

僕は憤慨して立ち上がる。心外だ。


「右子様の淹れた紅茶はかろうじて飲める!

なのにチェアが淹れたのはどうだい?茶葉の粉が茶漉しから漏れ出してザラザラとした舌触りがいつまでも消えない。苦くてドロドロで一口も飲み下せない!」


「くっ」


「ほほほほ!ほーら、敦人の嫁になるのなら、普通に飲めるぐらいのお茶は淹れられないと!」


右子様は勝ち誇る。チェアは悔しそうだ。

普通に、ね、右子様のももうちょっと薄いほうが助かるけどね。


「飲める」


「「「えっ」」」


見ると敦人(シウ)がカップを全て空にしていた。


「どっちも、飲める。くだらない遊びは止めるんだな」


そう言って敦人(シウ)は食堂を出て行ってしまった。

何あれ、カッコいい。


「敦人様·······」

チェアの瞳がキラキラ潤んでいる。


「ふっポイント稼ぎやがって·······」

僕が感心していると、

「勝負に勝ったけど負けた気分ってやつよ·········」

右子様はがっくりとしていた。


「敦人って中身イケメンだよね。外見は美少年だけど」

「確かに。あれ素でやってるもんね」


右子様と話していると、チェアは余裕綽々で新しい紅茶を食堂の人に頼んでいる。

チェアの方は中身かなり気が強いタイプかもね。外見は小鳥のような美少女だけど。


右子様は気を取り直したようで、キッとチェアを睨む。


「敦人はああ言ってるけど、まだまだ私は認めませんからね!次はお菓子対決よ!」


「ええええ〜!イヤで〜す!」

「まあっ何その物言いは!立ち振舞い減点です!」

「げっ」


右子様は徐ろに点数表を出して、点を書きこむ。

それどこかに提出するの?


「でもさあ、なんでそんなことしてるの?

婚約者いびりなんて右子様らしくないよ」


「そ、それは········私は、敦人の為を思って」


僕は、敦人敦人言い続ける右子様にちょっと苛立つ。


「敦人は望んでないよ?それどころかどうでもいいって感じ?」


「ううう······あっチェアさんどこ行くの!?お菓子!作るわよ!」


右子様はしつこかった。

でも、そんな彼女もどうしたって可愛いのだ。




「「で、出来たあ〜!!」」


右子様はお菓子に関しては造詣が深いようで、すぐに綺麗なクッキーを焼き上げて調理師を唸らせていた。

その後はチェアに配慮して、調理師も混じえて一緒に大きなケーキを焼いたのだ。


「わ、私こんな大きなケーキを自分が焼くなんて到底考えたことありませんでした!感動です!」

チェアが珍しく素直に喜んでいた。


「ふっ甘いものには素直だこと·········

まだまだお子様ね」


チェアがムッとして右子様を睨む。

これはいただけない。お子様、という点では二人は同点なのに。


「では、()()()の私が!この感動を切り分けて敦人様にお運びしますわね!」


「!ま、待ちなさい!それは元姉の私が!」


「元姉?それが、敦人様にとってどれほどのものだっていうんですか?」


完全に優位だとチェアが勝ち誇る。

確かに、元姉ってのは普通なら大した立ち位置じゃない。

けど、敦人にとっては尋常じゃない立ち位置なのは、チェアは知りようもない。


「ぐぬぬぬ········」

僕は右子様の肩にポンッと手を置いた。

こんなスキンシップも実は照れてしまうけど、おくびにも出さないよう気をつける。


「チェアは新入りだし、敦人と仲良くなりたいんだよ。ここは譲ってあげたら?」


「むむっ··········」

僕がそう言うと、右子様は頷いた。

素直、可愛いい。


チェアは喜々としてケーキとお茶をお盆に乗せて部屋を出て行く。

ところで·······だんだん婚約者を主張してくる辺り、チェアも煽られてるのが分かる。

右子様、結果的に敦人とチェアの仲を推し進めているんだけど、··········わざとなのかな?

右子様の言う、元姉の立ち位置って、微妙。

僕には········軽く嫉妬しているようにしか見えないよ。


「キャッ」

すぐ外の廊下でチェアの声がする。

「あ、敦人様!」

「···········そろそろお茶の時間かと思って」


「ちょうど良かったですわ!今ケーキをお運びしようとしていたところですの。皆さんでご一緒しましょう」


廊下のやり取りが室内にも聞こえててきた。

お茶の時間って、お茶ならさっき苦いのをやったばかりなんだけどな。

敦人、実は気になって廊下で聞き耳立ててたとか?

そんなわけ無いか。


入って来た敦人は微かに顔が赤かった。


「敦人!お仕事はもういいの?」

嬉しそうに右子様が話しかける。


「うん」

敦人は言葉少なく頷く。

敦人は仕事が嫌いな権野公爵に仕事を分担させられていて、船に仕事を持ち込んで時間をやり繰りしているらしい。


「お仕事大変ね。忙しいのは私のせいでもあるし、私で良ければ手伝うから言ってね?」


「うん」


「わ、私も手伝いますわ!私、母国では成績は5位の順位をキープしていた才女なんですの!」


「うん、ありがとう」


コーリア国のあの学校で5位は本当にすごい。ニホン語も上手だもんな。けど才女って自分で言っちゃうと薄れるの不思議だよな。


「そうだわ!敦人の部屋の掃除をしてあげましょう!

チェアさん、行きましょう!」


「えええー!?掃除ぃ!?なんでですか!?」


自分で掃除って、発想がすごい。

庶民的?っていうのかな。右子様、帝女なのに一体どんなお育ち方をしたんだろう。

コーリア国では普通、掃除は一番身分が下の階層がする仕事だ。

そりゃあ、前世の一般人は自分でやってたけどさ。

チェアもめちゃめちゃ引いている。



「···········右子の、新婚みたい」


ボソッと敦人の独り言が聞こえた。

えっ、敦人?


しっかり今の状況楽しんでたんだね?


「敦人、さっきから顔赤いよ」


言ってやると、敦人は無自覚だったのか慌てている。



「まぁ········とにかく、せっかくだからこの巨大なケーキを平らげてからにしようか?」


僕がそう言うと、皆それぞれに頷いた。


読んでいただきありがとうございます!


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